魔性男子はモテたくない

月華

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2.消えた平穏

数II準備室

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「そ、ちょっと次の授業の準備でね~。岬クンになんか用だった? 悪いけど後にしてね」


 そう言うと、花菱の制止も聞かず俺の肩を抱き寄せて歩き出す。
 いや、肩抱かなくてよくね? と思っても、振り払って見放されても困るので仕方なくそのまま教室を出た。一応花菱は引いてくれたようで後を追ってくる気配はなくて安心した。


「あの、先生……ありがとうございます。もう、手ぇ離してください」


 肩に置かれた手を離そうとしたのに、やたらと力強くて退かせない。


「ん~? 駄目。ちゃーんと説明してくれるだろ? 岬」


 ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべる先生に、ため息しか出ない。明らかに顔が逃がさないと語っている。
 仕方なく、連れられるがままに数学準備室に向かった。学生数に比べてやたらとデカい学校なので、教師にはそれぞれ準備室が与えられている。授業に使う教材や道具やらは置かれているが、冷蔵庫なんかも置いてあって完全に私物化されている。
 数学準備室は教室のある本棟1と一番近い西棟にあるので、距離がないのはラッキーだった。中には本棟2や東棟、北棟などに準備室がある先生もいるので、そっちだと肩を抱かれたまま長距離移動しなきゃならなかった。
 ちなみに、この学校は昇降口と繋がっている本棟1と、中庭を挟んで本棟2がある。1と2じゃ分かりにくいってんで、生徒たちは本棟2のことをサブ棟と呼んでいたりする。それぞれの棟は渡り廊下で繋がっていて、西棟は本棟1の北側に、東棟はサブ棟の北側に、北棟は東棟の北側にある。何ともややこしいし何でそんな棟が必要なんだってくらい分けられているので、新入生はよく迷うらしい。
 俺も慣れるのに1年かかった。棟がゲシュタルト崩壊する。


 閑話休題。
 数II準備室に着いて、ソファに案内された。近いとはいえ、刺さりに刺さっていた視線が痛かったので、ようやく落ち着いた心地になる。


「で? 何、あのデカくて黒い奴」


 言わずもがな、花菱のことだろう。


「あれは転校生で……って言うか、近いです、先生」


 テーブルを挟んで向かい側にもソファがあるのに、小日向は何故か隣に座ってきた。そんな圧かける必要ある?


「いいじゃん、誰もいないんだし」
「余計に離れて欲しいです……」
「イヤだ♡ たまには可愛い生徒を独り占めしたいじゃん?」
「生徒って独り占めするものではありませんよ」
「いいから、ほら、説明!」
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