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2.消えた平穏
制裁は体育館裏、これ定番
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***
ドサッ。
最後の一人があっけなく地面に沈んだ。人気のない第二体育館の脇には、体格のいい男が3人ほど倒れて唸り声を上げている。腹部を抑え、立ち上がる様子はない。
その横では小柄な男が2人、顔を青くして立ち尽くしていた。
「どーする? あんたらもやる?」
そんな様子を瓶ぞこ眼鏡の奥で睥睨していた男――花菱佑は、小柄な男2人に向かって小首を傾げる。
「あ……その……」
明るい茶髪でゆるいパーマをかけた子犬顔の一人が、震えながらもようやく返事とも呼べない声を放った。もう一人のダークブラウンのストレートヘアの男は、完全に萎縮してしまっているようで一言も発さない。
ガタイの良い男が3人がかりで殴りかかったにもかかわらず、一瞬で3人とも倒れたとなれば萎縮してしまうのも仕方がないだろう。こんな経験は初めてだった。
「あんたらみたいなのを殴ったら、骨とか折れちゃいそうで怖いんだけど。逃げるなら逃げていいよ。その代わり、2度と俺の前に姿を見せないって約束してくれんなら」
「は? な、生意気……! 一応僕、先輩なんだけどっ」
「先輩とか、どーでもよくね? 俺は俺が価値あると思った奴以外は誰でも同じなんだわ。制裁だかなんだか知らねーけど、自分じゃ何もしねぇで人の力借りるとか論外すぎ」
花菱が一歩踏み出すと、辛うじて反論していた男も一歩後ずさり、その距離は変わらない。
その様子を見て完全に興味は失せたのか、花菱は方向を変えて歩き出す。
「どうせなら、次はもっと手応えある奴呼んだら? ま、次なんてねーけど」
そんな捨て台詞にも、2人の男は悔しそうに歯噛みするしかなかった。
「あーあ、フツーに休み時間消えたし。授業始まってっし。岬んとこ行きそびれたじゃん、最悪」
教室のある本棟の方へ歩きながら、大きなため息を漏らす。
第二体育館は、本棟の裏側にある校庭の端に位置している。校庭を挟んだ北側に第一体育館、南側に第二体育館があり、さらに南側には屋内プールのある建物があるため、2つの建物に挟まれた場所は薄暗く、呼び出しには持ってこいといった立地だ。
花菱はつい先程まで、その場所に呼び出されていた。もちろん、告白の呼び出しという可愛らしいものではなく、生徒会の親衛隊からの制裁目的の呼び出しだ。
「つーか、マジで制裁とかあんだな、王道学園」
ドサッ。
最後の一人があっけなく地面に沈んだ。人気のない第二体育館の脇には、体格のいい男が3人ほど倒れて唸り声を上げている。腹部を抑え、立ち上がる様子はない。
その横では小柄な男が2人、顔を青くして立ち尽くしていた。
「どーする? あんたらもやる?」
そんな様子を瓶ぞこ眼鏡の奥で睥睨していた男――花菱佑は、小柄な男2人に向かって小首を傾げる。
「あ……その……」
明るい茶髪でゆるいパーマをかけた子犬顔の一人が、震えながらもようやく返事とも呼べない声を放った。もう一人のダークブラウンのストレートヘアの男は、完全に萎縮してしまっているようで一言も発さない。
ガタイの良い男が3人がかりで殴りかかったにもかかわらず、一瞬で3人とも倒れたとなれば萎縮してしまうのも仕方がないだろう。こんな経験は初めてだった。
「あんたらみたいなのを殴ったら、骨とか折れちゃいそうで怖いんだけど。逃げるなら逃げていいよ。その代わり、2度と俺の前に姿を見せないって約束してくれんなら」
「は? な、生意気……! 一応僕、先輩なんだけどっ」
「先輩とか、どーでもよくね? 俺は俺が価値あると思った奴以外は誰でも同じなんだわ。制裁だかなんだか知らねーけど、自分じゃ何もしねぇで人の力借りるとか論外すぎ」
花菱が一歩踏み出すと、辛うじて反論していた男も一歩後ずさり、その距離は変わらない。
その様子を見て完全に興味は失せたのか、花菱は方向を変えて歩き出す。
「どうせなら、次はもっと手応えある奴呼んだら? ま、次なんてねーけど」
そんな捨て台詞にも、2人の男は悔しそうに歯噛みするしかなかった。
「あーあ、フツーに休み時間消えたし。授業始まってっし。岬んとこ行きそびれたじゃん、最悪」
教室のある本棟の方へ歩きながら、大きなため息を漏らす。
第二体育館は、本棟の裏側にある校庭の端に位置している。校庭を挟んだ北側に第一体育館、南側に第二体育館があり、さらに南側には屋内プールのある建物があるため、2つの建物に挟まれた場所は薄暗く、呼び出しには持ってこいといった立地だ。
花菱はつい先程まで、その場所に呼び出されていた。もちろん、告白の呼び出しという可愛らしいものではなく、生徒会の親衛隊からの制裁目的の呼び出しだ。
「つーか、マジで制裁とかあんだな、王道学園」
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