魔性男子はモテたくない

月華

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2.消えた平穏

普通の男子校生みたいに

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「でも、親衛隊とかがさ……?」


 榛なら分かっているはずである。だからこそ、程よい距離感を保ってくれていたわけだし。


「大丈夫だよ、このくらい。ね?」


 キラキラとエフェクトを飛ばしながら、ね? いいでしょ? と距離を詰めてくる。バシバシ、ビシュビシュとキラキラが顔に刺さって痛い気がする。


「流、星?」


 諦めて名前を呼べば、パァッと花開くような笑顔を向けられて眩しい。名前呼びに拘るとか、ちょっと友達にも格好良さを求めたくなる年頃の中学生のようだ。


「うんうん。俺さ、もっと普通の友達みたいに岬とも話してみたかったんだよね。この学園じゃそんな普通なことも難しいんだけどさ。でももう岬がここにきて1年経ったし、少しくらいはいいよねって思ってさ」
「流星……」


 思わずじーんと来てしまった。考えてみたら確かにこの位のことは至って普通のことで、名前を呼んだり呼ばれたりするのに、いちいち周囲を気にするなんて事がおかしいのだ。
 榛は元から親衛隊のことを気にしつつ適度な距離で接してくれていた貴重なランキング上位者だ。クラス委員長から名前呼びに変えたところで、適度な距離感は意識してくれるだろう。花菱のこともあって、神経質になりすぎているのかもしれない。
 そんなことを考えていたら、予鈴が鳴った。


「あ、予鈴だ。そろそろ入ろうか」


 授業中に入って、無駄に注目を浴びるのを俺が嫌がると思ったのだろう。ニコッと笑顔を向けられて、肯首した。こういう気遣いもできるなんて、榛、できる男だ……。
 ざわざわと話し声が漏れ出してきたところで、教室に入っていく榛の後に続いて足を踏み入れる。視線はそれなりに集まったが、呼び出されたクラスメイトを迎えにいったという建前もあってか、思ったより普通に席につけた。
 一息ついたところでハッとして教室の入り口に目を向ける。花菱のことをすぐに思い出した俺、偉い。教室までやってくるかは分からないが、取り敢えずひっそりとベランダに出て窓側に腰掛けた。ここなら教室からは隠れるだろう。
 
——と、そんな警戒心マックスでいたのだが、結局花菱は姿を見せず拍子抜けしてしまった。少し自意識過剰になりすぎてた?
 まぁ、休み時間ごとにいちいち隠れずに済むのならありがたいけれど。
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