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2.消えた平穏
呼び出しの理由は内緒で
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「こいつとは同室だ」
「それはもちろん知ってたけど、一緒にいるなんてなかったじゃない」
「別にお前には関係ねぇだろ」
「ま、仲良いに越したことはないしね。さ、教室に戻ろう。岬君は大丈夫だった?」
「あ、うん……」
「要件はなんだったの? なんか凄い勢いで風紀副委員長も来てたでしょ?」
「え……いや、うーん……」
梓種先輩……やっぱりこの2人にも見られてたんだ……。そんなことを思いつつ、まさか正直に変装を疑われて云々などと話すこともできないので、苦笑いで誤魔化そうとする。まぁ、多分表情なんて見えてないんだろうけど。
こういう時、もう聞いてくれるな、という意味合いを含む苦笑いだったり愛想笑いが通用しない現在の変装を、煩わしいなと思ったりしてしまう。
一体、生徒会長はどうやって誤魔化そうというのか。少し心配ではあるけれど、梓種先輩もいるのだしなんとかなるだろう。うん、多分。後で先輩に聞いてみよう。
「変な転校生に絡まれてたからだろ」
俺がうーん、と唸りながら歩いていると、秀がヘルプを出してくれる。
「じゃあ、なんで転校生は呼び出されなかったんだろう」
「知るか」
シュッとした顎に指を当てて考える素振りを見せる榛を横目で見やる。そんなに気になる事だろうか。まぁ、クラスでも滅多に目立つ事のない俺がいきなり生徒会長に退学まで引き合いに出されて呼び出されるなんて、驚きはするだろうが。
「岬」
秀の声に、右上に視線を向ける。
「あのクソ毬藻、思ったより厄介そうだぞ」
「……わかってる」
俺も、まさか昨日の今日で朝っぱらから絡まれるとは流石に思っていなかった。そして予想以上に興味を持たれていて、朝のことを思い出すだけでズシンと肩が重たくなる気がした。
「どうすんだよ」
「……逃げる」
「どうやって」
「物理で。来る前に、逃げる」
幸い、隣とはいえクラスは別だ。授業が終わったら速攻で消えれば、どうにかなるだろう。
「そんなに厄介な感じなの? その転校生君」
ボソボソと小さめに秀と喋っていたつもりだが、榛にも聞こえていたらしい。秀がギロリと睨んでいるが、榛はやはりアルカイックスマイルで首を傾げていた。あはは、と指で頰を掻くようにしてなんとなく誤魔化す。あまり関わって欲しくはないのだ。今でこそ授業中だからいいが、こうして秀と榛と3人で歩いていること自体、あり得ないことだ。
心配して迎えに来てくれたのであろうことは分かるので何も言わずに普通に歩いているが、榛は秀とは違って公式に親衛隊を持っている。中規模だが、公式なだけに秀の親衛隊よりも規模は大きい上にそこそこ過激派なのだとか。そうなれば見られたが最後、平穏無事では済まないだろう。単なる親切心さえ素直に受け取りにくいのだから、この学園も心底厄介なものである。
「それはもちろん知ってたけど、一緒にいるなんてなかったじゃない」
「別にお前には関係ねぇだろ」
「ま、仲良いに越したことはないしね。さ、教室に戻ろう。岬君は大丈夫だった?」
「あ、うん……」
「要件はなんだったの? なんか凄い勢いで風紀副委員長も来てたでしょ?」
「え……いや、うーん……」
梓種先輩……やっぱりこの2人にも見られてたんだ……。そんなことを思いつつ、まさか正直に変装を疑われて云々などと話すこともできないので、苦笑いで誤魔化そうとする。まぁ、多分表情なんて見えてないんだろうけど。
こういう時、もう聞いてくれるな、という意味合いを含む苦笑いだったり愛想笑いが通用しない現在の変装を、煩わしいなと思ったりしてしまう。
一体、生徒会長はどうやって誤魔化そうというのか。少し心配ではあるけれど、梓種先輩もいるのだしなんとかなるだろう。うん、多分。後で先輩に聞いてみよう。
「変な転校生に絡まれてたからだろ」
俺がうーん、と唸りながら歩いていると、秀がヘルプを出してくれる。
「じゃあ、なんで転校生は呼び出されなかったんだろう」
「知るか」
シュッとした顎に指を当てて考える素振りを見せる榛を横目で見やる。そんなに気になる事だろうか。まぁ、クラスでも滅多に目立つ事のない俺がいきなり生徒会長に退学まで引き合いに出されて呼び出されるなんて、驚きはするだろうが。
「岬」
秀の声に、右上に視線を向ける。
「あのクソ毬藻、思ったより厄介そうだぞ」
「……わかってる」
俺も、まさか昨日の今日で朝っぱらから絡まれるとは流石に思っていなかった。そして予想以上に興味を持たれていて、朝のことを思い出すだけでズシンと肩が重たくなる気がした。
「どうすんだよ」
「……逃げる」
「どうやって」
「物理で。来る前に、逃げる」
幸い、隣とはいえクラスは別だ。授業が終わったら速攻で消えれば、どうにかなるだろう。
「そんなに厄介な感じなの? その転校生君」
ボソボソと小さめに秀と喋っていたつもりだが、榛にも聞こえていたらしい。秀がギロリと睨んでいるが、榛はやはりアルカイックスマイルで首を傾げていた。あはは、と指で頰を掻くようにしてなんとなく誤魔化す。あまり関わって欲しくはないのだ。今でこそ授業中だからいいが、こうして秀と榛と3人で歩いていること自体、あり得ないことだ。
心配して迎えに来てくれたのであろうことは分かるので何も言わずに普通に歩いているが、榛は秀とは違って公式に親衛隊を持っている。中規模だが、公式なだけに秀の親衛隊よりも規模は大きい上にそこそこ過激派なのだとか。そうなれば見られたが最後、平穏無事では済まないだろう。単なる親切心さえ素直に受け取りにくいのだから、この学園も心底厄介なものである。
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