37 / 52
2.消えた平穏
生徒会長はキザ
しおりを挟む
「なんだ、俺のことを知りたいか? なら俺の恋人になれ。なんでも教えてやろう」
「結構です」
なっ……と梓種先輩が怒鳴りそうだったが、俺が間髪入れずに断ったせいか、そのまま声を引っ込めてくれた。
「それにしても、本当に美しい髪だな。地毛か?」
「あー、はい。隔世遺伝らしくて。両親は真っ黒なんですけど俺だけ」
「滑らかで、金糸のようだ」
言い終わるか否か、背後からチュ、とリップ音がした。と思ったら顔面脇スレスレにヒュッと風が通り抜け、パンッと破裂音のような音が聞こえた。
「へ?」
「野蛮だな、風紀副院長。風紀が暴力か?」
「テメェが気色悪ぃことすっからだろうが、ア゛?」
顎を引いてちらと後方に目を向ければ、会長が梓種先輩の拳を掌で止めていた。わーお。ちなみに、梓種先輩は超短気だ。アルビノのせいで体が弱いと思われるのが業腹らしく、すぐに手が出る。あまりに喧嘩っ早いので、手綱を握れと元風紀委員長から現風紀委員長に託され、風紀委員に入ったらしい。これは本人に聞いた話ではなく腐男子情報だが、あの拳の速さを見たら真実味が増した。
ポン、と頭に手を置かれ「終わったぞ」と言われる。すると梓種先輩が鬘を俺に被せ、ちょいちょいと髪を整えてくれた。
「コイツにバレたのは気に喰わねぇが、久々に岬の素顔見れたな」
そう言って、梓種先輩が微笑む。穏やかに笑むと、完全な儚げ美人だ。短期で喧嘩っ早いようにはとても見えない。ある意味詐欺だろう。そして俺は、この顔に弱いから困る。
「ま、まぁ……素顔になることないです滅多にないですもんね」
「なんだよ、照れてんのか? お前、本当俺の顔好きな? いくらでも見ていいんだぞ? ほら」
「やめろ。俺の壱瀬に気安く触るんじゃない」
「ア゛? 誰が誰のモンだって? 俺のモンに決まってんだろうが」
「もう帰っていいすかね?」
なんかこの2人コントみたいだな……なんてことを考えながら、応接室の扉を開く。どうやらもう引き止められはしないようで、ホッと息を吐こうかとしたところで、突き刺さる視線に逆に息が詰まった。
応接室の対面になっている机に座って作業をしていたであろう書記の双子と、確か会計の無口巨人がこちらに視線を向けるのは急に扉が開いたのだから理解できるが、扉に背を向けて座っている副会長とチャラ男会計までもが体をひねってまでこちらを見ているので、なんとも視線が痛い。ちなみに、生徒会は役職で覚えているので、名前はほとんど覚えていない。
「し、失礼しました……」
「結構です」
なっ……と梓種先輩が怒鳴りそうだったが、俺が間髪入れずに断ったせいか、そのまま声を引っ込めてくれた。
「それにしても、本当に美しい髪だな。地毛か?」
「あー、はい。隔世遺伝らしくて。両親は真っ黒なんですけど俺だけ」
「滑らかで、金糸のようだ」
言い終わるか否か、背後からチュ、とリップ音がした。と思ったら顔面脇スレスレにヒュッと風が通り抜け、パンッと破裂音のような音が聞こえた。
「へ?」
「野蛮だな、風紀副院長。風紀が暴力か?」
「テメェが気色悪ぃことすっからだろうが、ア゛?」
顎を引いてちらと後方に目を向ければ、会長が梓種先輩の拳を掌で止めていた。わーお。ちなみに、梓種先輩は超短気だ。アルビノのせいで体が弱いと思われるのが業腹らしく、すぐに手が出る。あまりに喧嘩っ早いので、手綱を握れと元風紀委員長から現風紀委員長に託され、風紀委員に入ったらしい。これは本人に聞いた話ではなく腐男子情報だが、あの拳の速さを見たら真実味が増した。
ポン、と頭に手を置かれ「終わったぞ」と言われる。すると梓種先輩が鬘を俺に被せ、ちょいちょいと髪を整えてくれた。
「コイツにバレたのは気に喰わねぇが、久々に岬の素顔見れたな」
そう言って、梓種先輩が微笑む。穏やかに笑むと、完全な儚げ美人だ。短期で喧嘩っ早いようにはとても見えない。ある意味詐欺だろう。そして俺は、この顔に弱いから困る。
「ま、まぁ……素顔になることないです滅多にないですもんね」
「なんだよ、照れてんのか? お前、本当俺の顔好きな? いくらでも見ていいんだぞ? ほら」
「やめろ。俺の壱瀬に気安く触るんじゃない」
「ア゛? 誰が誰のモンだって? 俺のモンに決まってんだろうが」
「もう帰っていいすかね?」
なんかこの2人コントみたいだな……なんてことを考えながら、応接室の扉を開く。どうやらもう引き止められはしないようで、ホッと息を吐こうかとしたところで、突き刺さる視線に逆に息が詰まった。
応接室の対面になっている机に座って作業をしていたであろう書記の双子と、確か会計の無口巨人がこちらに視線を向けるのは急に扉が開いたのだから理解できるが、扉に背を向けて座っている副会長とチャラ男会計までもが体をひねってまでこちらを見ているので、なんとも視線が痛い。ちなみに、生徒会は役職で覚えているので、名前はほとんど覚えていない。
「し、失礼しました……」
1
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
犯されないよう逃げるけど結局はヤラれる可哀想な受けの話
ダルるる
BL
ある日目が覚めると前世の記憶が戻っていた。
これは所謂異世界転生!?(ちょっと違うね)
いやっほーい、となるはずだったのに……
周りに男しかいないししかも色んなイケメンに狙われる!!
なんで俺なんだぁぁぁ……
ーーーーーーー
うまくにげても結局はヤられてしまう可哀想な受けの話
題名についた※ はR18です
ストーリーが上手くまとまらず、ずっと続きが書けてません。すみません。
【注】アホエロ
考えたら負けです。
設定?ストーリー?ナニソレオイシイノ?状態です。
ただただ作者の欲望を描いてるだけ。
文才ないので読みにくかったらすみません┏○┓
作者は単純なので感想くれたらめちゃくちゃやる気でます。(感想くださいお願いしやす“〇| ̄|_)
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる