魔性男子はモテたくない

月華

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2.消えた平穏

喧嘩するほど仲が良い……訳ではない

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「バレちまったもんは仕方がねぇ。だが、もう夜は出歩くな。どうしても出歩きたくなったら俺に言え。見張っててやっから」
「梓種先輩……!」
「いや、俺に言え。風紀副委員よりも俺の方がなんでも融通が効くからな」
「そこは岬の判断だろう。な、岬?」
「え、はぁ」
「というか西園寺。お前、この事誰にもバラすんじゃねぇぞ?」
「誰がバラすか。余計な害虫が湧いては敵わん」
「チッ、意見が合うのも合うで腹立たしいな。つーか、こんな個室に堂々と呼び出しやがって。役員共に目ぇ付けられたらどうすんだテメェ」
「問題ない。説明はしておく」
「本当だろうなぁ?」
「そもそも、お前が来なければこんなややこしい事にはならなかったんだ。9割方お前の責任だろう」
「はァ? テメェが放送で呼び出してっから悪いんだろ? 呼び出さなきゃ話もできねぇような野郎に、岬はやらないからな」
「なんだお前は、母親か? 俺の行動をたかが副委員長・・・・に指図される謂れはない」
「ア゛ァ? んだと?」


 生徒会と風紀委員は犬猿の仲。それはこの学園生の誰もが知る事だ。まさか、こんな状況でこんなところで喧嘩をされだすと、ただの一般生徒の俺は完全に蚊帳の外である。口を挟める雰囲気じゃない。
 仕方がないので、いそいそと鬘を被り直し、マスクを装着し、こっそりと抜け出……


「「まだ話は終わってない/ねぇ」」


 せなかった。どいつもこいつも、視界が広いことで。



「ってか岬。お前そんな頭で出て行くんじゃねぇよ。モロバレだぞ」
「え、マジすか。鏡ないとわかんねぇな」


 前髪が邪魔なので、向き的には合ってると思うんだけど。


「後ろの髪が解けてて、見えてんだよ。ほら、やってやるから貸してみろ」


 ひょいと鬘を取られ座らせられると、梓種先輩が後ろ髪を留めていたピンを一つずつ外していく。手櫛で整えて、髪を結って、またピンで留められているのが分かる。


「うーん、こんなもんか」
「阿呆か。そんなグチャグチャでは意味がないだろう。お前さては不器用だな? 代われ」
「え、梓種先輩、どんなセットしたんですか。めっちゃ見たいんですけど」
「うるせぇ、髪なんてやったことねぇんだから仕方ねぇだろ」


 そう俺と梓種先輩が話している間に、会長がテキパキと作業してくれている。明らかに手際がいい。ように思う。


「んでテメェがそんな出来るんだよ。気色悪」
「黙れ。何度か妹にやってやったことがあるだけだ。こんなの、一度か二度やれば簡単に出来るだろう」
「へぇ、会長って妹さんがいるんですね」


 意外な共通点。梓種先輩は確か末っ子だった筈。
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