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2.消えた平穏
何様俺様会長様
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「あ、か、カラ、コン……?」
ようやく発したかと思えば、なぜかカタコトだ。
「はぁ、カラコンはちょっと、外したり付けたりが大変なので出来れば勘弁して欲しいのですが……」
完全に停止していた会長が、ゆっくりと動き出す。
「紫色の……アメシストのような……」
「ああ、そうですね。元の目は紫です」
「やはり、見間違いではなかったか……」
「すみません、一身上の都合で変装をしておりまして」
先程までの威圧感が完全になくなった会長に、少し拍子抜けする。もっと責められ、叱られるかと思っていた。これから叱られるのかもしれないが。この調子ならば、軽く事情さえ話せばお咎めなしになるかもしれない。そんな希望がホワンと胸に灯った。
「あの、かいちょ……わっ!」
「美しい」
いきなり手を取られたかと思えば、片膝をソファに乗り上げてきて思わず上体を引く。……急に近い。
「まさか、こんなにも早く見つけるとは。流石は俺だな」
「は? はぁ……あの、手……」
「あぁ、まるで白魚のような手だな。手触りが心地良い」
「いや、離して欲しいんですが」
「……良い」
「は?」
「俺の目に狂いはなかった。お前、岬と言ったな、いや、壱瀬。俺の恋人にしてやろう」
「はぇ?」
難聴かな。急に名前呼びしてくると思ったら、恋人? 恋人って言わなかった? しかも、してやろう? なんで上から目線なんだよ。えっ、何!? 難聴かな!?
「今日から、俺の部屋に来い」
「え、嫌ですけど」
「ん? なんと言った?」
こいつも難聴かな?
「嫌です。え、恋人って言いました? 無理です、俺ノーマルなんで」
清く正しい青少年なので。
「なんだと? 俺の恋人だぞ? 何人がその地位を欲しがっていると思っている」
「じゃあその地位を欲しがっている人にあげてください」
「お前が相応しい」
「相応しくありません。論外です」
「遠慮しているのか? 親衛隊のことは気にしなくていい」
「していません。言ってるじゃないですか。俺はノーマルなんですって。あと、いい加減手ぇ離してくれません?」
やんややんやと言い合っていると、突如扉の向こうが騒がしくなった。
なんだ? とつい意識が扉の方へ向くと、その瞬間扉がバァンッ! と勢いよく開かれた。
「岬ぃ!」
梓種先輩!? と思った瞬間、会長が急に覆い被さってきた。
「わっ」
「なんだ? 誰が無断で入っていいと言った?」
「テメェ! 何してやがる!」
「ちょ、なんなんですか!? 勝手に入られては困ります! 風紀副委員長ともあろうお方が、礼儀知らずも甚だしい!」
「るせぇ! なんで岬のこと呼び出した? つーか、何してんだよ!」
「おい、生原! お前も入ってくるな! 副委員長を連れて出て行け!」
「なっ、っていうか、貴方何してるんです?」
「いいからどっか行け! 見るな!」
「はぁ?」
あぁ、なるほどな。会長は、変装を解いている俺を隠そうとしているらしい。梓種先輩は別にいいけど、副会長がいるなら隠されているのはありがたい。と思うことにして、俺は口を噤んだ。あ、口を噤んだら駄目か。
ようやく発したかと思えば、なぜかカタコトだ。
「はぁ、カラコンはちょっと、外したり付けたりが大変なので出来れば勘弁して欲しいのですが……」
完全に停止していた会長が、ゆっくりと動き出す。
「紫色の……アメシストのような……」
「ああ、そうですね。元の目は紫です」
「やはり、見間違いではなかったか……」
「すみません、一身上の都合で変装をしておりまして」
先程までの威圧感が完全になくなった会長に、少し拍子抜けする。もっと責められ、叱られるかと思っていた。これから叱られるのかもしれないが。この調子ならば、軽く事情さえ話せばお咎めなしになるかもしれない。そんな希望がホワンと胸に灯った。
「あの、かいちょ……わっ!」
「美しい」
いきなり手を取られたかと思えば、片膝をソファに乗り上げてきて思わず上体を引く。……急に近い。
「まさか、こんなにも早く見つけるとは。流石は俺だな」
「は? はぁ……あの、手……」
「あぁ、まるで白魚のような手だな。手触りが心地良い」
「いや、離して欲しいんですが」
「……良い」
「は?」
「俺の目に狂いはなかった。お前、岬と言ったな、いや、壱瀬。俺の恋人にしてやろう」
「はぇ?」
難聴かな。急に名前呼びしてくると思ったら、恋人? 恋人って言わなかった? しかも、してやろう? なんで上から目線なんだよ。えっ、何!? 難聴かな!?
「今日から、俺の部屋に来い」
「え、嫌ですけど」
「ん? なんと言った?」
こいつも難聴かな?
「嫌です。え、恋人って言いました? 無理です、俺ノーマルなんで」
清く正しい青少年なので。
「なんだと? 俺の恋人だぞ? 何人がその地位を欲しがっていると思っている」
「じゃあその地位を欲しがっている人にあげてください」
「お前が相応しい」
「相応しくありません。論外です」
「遠慮しているのか? 親衛隊のことは気にしなくていい」
「していません。言ってるじゃないですか。俺はノーマルなんですって。あと、いい加減手ぇ離してくれません?」
やんややんやと言い合っていると、突如扉の向こうが騒がしくなった。
なんだ? とつい意識が扉の方へ向くと、その瞬間扉がバァンッ! と勢いよく開かれた。
「岬ぃ!」
梓種先輩!? と思った瞬間、会長が急に覆い被さってきた。
「わっ」
「なんだ? 誰が無断で入っていいと言った?」
「テメェ! 何してやがる!」
「ちょ、なんなんですか!? 勝手に入られては困ります! 風紀副委員長ともあろうお方が、礼儀知らずも甚だしい!」
「るせぇ! なんで岬のこと呼び出した? つーか、何してんだよ!」
「おい、生原! お前も入ってくるな! 副委員長を連れて出て行け!」
「なっ、っていうか、貴方何してるんです?」
「いいからどっか行け! 見るな!」
「はぁ?」
あぁ、なるほどな。会長は、変装を解いている俺を隠そうとしているらしい。梓種先輩は別にいいけど、副会長がいるなら隠されているのはありがたい。と思うことにして、俺は口を噤んだ。あ、口を噤んだら駄目か。
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