魔性男子はモテたくない

月華

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2.消えた平穏

生徒会室でアウェイすぎる俺

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 生徒会長はちらと腕時計を見やると、一言だけ発した。どうやら時間は間に合ったらしい。室内は風紀委員室よりはデスクも少なく、事務的なデザインではなく猫脚のアンティークなデスクが6つ、対照的に内向きに並んでいる。その奥に、大きな窓を背にどこぞの社長室にあるような高級感のあるデスクが置かれ、ボタン留めが施されたお高そうな革張りの椅子に生徒会長が座っていた。


「あ、あの……ご、ご用件は……」


 背中に冷や汗を感じながら、いつものような作り口調で話す。お願いだから、この場で変なことを言わないでほしい。
 生徒会長は俺を一瞥すると静かに立ち上がり、数歩歩く。その様を、他の委員たちがただ見ていた。


「こちらに来い」


 こちらに向かってそう言うと、会長のデスクから一番近い扉を開いた。しんと静まり返った室内が重苦しくて、双子のおかげで紛れていた緊張が一気に押し寄せてくる。


「えー、ここで話さないの? 意味深~」


 金髪のチャラ男風会計が、背もたれにだらんと凭れながら俺と会長を見た。


「ここでは出来ない話だとでも?」


 次いで副会長が口を開くと、明らかな敵意を交えた目でこちらを見てくる。値踏みするかのように、頭から足先まで見ていることが視線の流れで分かった。不躾だ。


「煩いぞ。いいから早く来い」


 会長はテノールの声で改めて俺を呼ぶ。仕方なく一歩踏み出せば、あとはもう進むだけだ。なんとも言えない視線を浴びながら会長の前まで行くと、背中を押されて室内に誘導された。
 なんの部屋かと思ったが、生徒会室に入ってすぐ左側にある応接間と同じような作りになっており、こちらもアンティーク調のデスクとソファが2脚置かれていた。絨毯も豪奢なものが敷かれていて、入り口近くの応接間より上品な造り。来る客によって使い分けているのだろう。
 俺がわざわざ招かれるような応接室ではないことは間違いない。ただ単に、他の役員が邪魔なのかなんなのか。理由は会長にしか分かるまい。

 室内に入り、そう言えば上履きを履いていないことに気付く。急ぎすぎて、昇降口に寄る余裕がなかったのだ。見てはいないが確実に汚れているだろう靴下のまま、この明らかに高級そうな絨毯に踏み入っていいのだろうか。また違った緊張感が押し寄せる。


「何をしている。早く座れ」


 先にソファに座った会長にギロリと睨まれ、えーいままよ! と心の中で気合を入れてふわっとした感触の絨毯に踏み入り、気持ちつま先歩きでソファに座った。
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