魔性男子はモテたくない

月華

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2.消えた平穏

_| ̄|○

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 何故だ? こっちが何故だ、だ。どうしてマスクを外さにゃならんのだ。頭の片隅には、もちろん昨日のガゼボでの出来事が甦っている。けれど、あの時の俺と今の俺が、そんなに簡単に結び付くとは思えない。もしかして、何か勘付いているのだろうか。何か、ヘマをしたのだろうか。


「髪の毛も……どうにも作り物臭いな。鬘か?」


 ドクン、と心臓が叩かれたように跳ねる。そして、考えたくもない一つの可能性に行き着いた。生徒会長は、昨日の人物が生徒ならば、変装して生活していると読んでいるのだ。自慢じゃないが、俺は目立つ。すでに金髪が目立つ。だからこそ目立たないように変装しているわけで。素顔を晒していたら、流石に生徒会軍団と同等とは言えないが、親衛隊だってできているかもしれない。生徒会は親衛隊の総括的な管理も任されているようだから、そうなれば直ぐにバレていただろう。
 だから、前髪とマスクで顔を隠している俺を、不審に思ったのだ。
 慌てて否定の意味を込めて首を振るも、生徒会長の手は俺の頭に手を伸ばしていた。
 絶体絶命!? と思った瞬間——


「おいおい、カイチョーさん、俺の獲物横取りする気か?」

 
 く……じゃない、花菱が会長の手を掴んで制止した。


「……離せ」
「悪いけどコイツ、俺のなんだわ」


 オメェのじゃねぇから!!! と叫びたいところだったが、その隙を見て俺はダッシュした。マスクは紐を外されてしまっていたので、手で押さえながら無我夢中でダッシュする。鞄を持っていなかったのが幸いだ。
 とにかく走り、昇降口も通り抜けて北棟へと向かった。あそこは文化系統の部室が中心なので、日中はほとんど人がいない。生徒会長に名前がバレていたので、教室に行っても後から来られたらたまらない。

 周囲からひと気がなくなったのを確認しつつ、靴を持ってそのまま北棟内に入る。靴下で廊下は歩きたくないが、仕方がないだろう。
 上がった息を整えつつ、とりあえず一番奥の教室まで歩き、中に入った。
 そこで、ようやく落ち着く事が出来た。

 と、思ったのも束の間。


『2-S、岬 壱瀬。2-S、岬 壱瀬。直ちに生徒会室に来るように』


 突如鳴り響いた放送に、思わず _| ̄|○の形で打ちひしがれた。ですよね、生徒会だもん。放送で呼び出しという最終手段がありますよねぇ。
 これで、俺になんの後ろめたさもない本当の冴えない陰キャだったのなら、ビビりつつも普通に生徒会室に向かうのだろう。
 けれど、変装を疑われ、且つ昨晩生徒会長には素顔が見られている状況だ。行くわけなくない? 無視するに決まってるよね? ずっと無視し続けてれば、そのうち諦めるっしょ。
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