23 / 52
2.消えた平穏
息抜きも大事
しおりを挟む
静かな空間が好きだ。耳を澄まさずとも、自身の呼吸音が聞こえてくるような静音。他に聞こえてくるものといえば、柔らかな風に擦れる葉の音くらいなもので。入学して以来、過去一番と言っていいほどハプニングが続いた昼間の出来事が、遠のいていく感覚に、ほぅと一息を吐いた。
ここは、学園の中庭にあるガゼボ。昼間は生徒たちがここで昼食を食べるべく、我先にと場所取りに走るような人気スポットだ。そして、俺のお気に入りの場所でもある。
ここにあるガゼボは、欧州チックな校舎に倣って真っ白のドーム型になった屋根のついたタイプで、ロココ調の模様が入った白石柱4本、その3本の柱にかけて2面に腰高の柵があり、柵に沿うようにクッション付きのソファ、中央にこちらもロココ調の白いガーデンデスクが備えられている。ソファには4人くらい座れる広さがあって、生徒に人気といえど親衛隊持ちの生徒が使っているところしか見たことはない。
そんな陰キャには不釣り合いな場所になぜ俺がいるのかといえば、今が夜だから、である。
21時以降は室内から出入り禁止という寮の規則があるものの、バレなきゃいい精神で俺はちょいちょい寮を抜け出しては息抜きにこの場所に来ていた。ずっと素性、素顔、性格を隠し続けていると、どうしたってストレスは溜まっていく。毎日鬘を被っているのも地味にストレスだし、マスクも慣れたとはいえ毎日続けば嫌にもなってくる訳で。
秀にも完全な素顔は知られないようにしているため、完全に変装を解いてリラックスするために、ここではいつも変装を完全に解いていた。
ちなみに寮は寮監が出入り口に常駐していて21時以降の外出は出来ない。俺の部屋は2階なので、自室の部屋から飛び降り、戻るときはよじ登って部屋に入っている。自分の運動神経の良さをフル活用し、この自由空間を得たのだ。3階とかじゃなくて良かった。
「あ、もしもし? 有香?」
落ちてきた金色の髪を耳にかけつつ、脚までソファに乗せながら完全リラックス状態で電話の向こうの愛しの妹に話しかける。ここで本来の姿で妹に電話している時が、至高の時間だ。
「お兄ちゃん? どうしたの?」
「いや、ただどうしてるかなってさ。最近の体調はどうだ?」
「全然平気! 今日も昼間は外に出たりしてたよ」
「院内だよな?」
「もちろん。ちゃんと看護士さんも一緒」
「なら安心だな」
元気そうな声にほっとする。調子がいいのも続いているようで、楽しげに話す様子に心がぽかぽかと温まっていく。
「お兄ちゃんは? 学校はどう?」
「んー、いつもと変わらずかな。気楽な平凡ライフを楽しんでるよ」
流石に本当のことは言えないので、誤魔化しながら笑う。俺が色々と変な奴に絡まれていた過去も、妹はほとんど知らない。それでも、俺がここに編入するきっかけになった事件は軽くニュースになったしで、流石にバレてしまい時折心配させてしまっているようだ。
ここは、学園の中庭にあるガゼボ。昼間は生徒たちがここで昼食を食べるべく、我先にと場所取りに走るような人気スポットだ。そして、俺のお気に入りの場所でもある。
ここにあるガゼボは、欧州チックな校舎に倣って真っ白のドーム型になった屋根のついたタイプで、ロココ調の模様が入った白石柱4本、その3本の柱にかけて2面に腰高の柵があり、柵に沿うようにクッション付きのソファ、中央にこちらもロココ調の白いガーデンデスクが備えられている。ソファには4人くらい座れる広さがあって、生徒に人気といえど親衛隊持ちの生徒が使っているところしか見たことはない。
そんな陰キャには不釣り合いな場所になぜ俺がいるのかといえば、今が夜だから、である。
21時以降は室内から出入り禁止という寮の規則があるものの、バレなきゃいい精神で俺はちょいちょい寮を抜け出しては息抜きにこの場所に来ていた。ずっと素性、素顔、性格を隠し続けていると、どうしたってストレスは溜まっていく。毎日鬘を被っているのも地味にストレスだし、マスクも慣れたとはいえ毎日続けば嫌にもなってくる訳で。
秀にも完全な素顔は知られないようにしているため、完全に変装を解いてリラックスするために、ここではいつも変装を完全に解いていた。
ちなみに寮は寮監が出入り口に常駐していて21時以降の外出は出来ない。俺の部屋は2階なので、自室の部屋から飛び降り、戻るときはよじ登って部屋に入っている。自分の運動神経の良さをフル活用し、この自由空間を得たのだ。3階とかじゃなくて良かった。
「あ、もしもし? 有香?」
落ちてきた金色の髪を耳にかけつつ、脚までソファに乗せながら完全リラックス状態で電話の向こうの愛しの妹に話しかける。ここで本来の姿で妹に電話している時が、至高の時間だ。
「お兄ちゃん? どうしたの?」
「いや、ただどうしてるかなってさ。最近の体調はどうだ?」
「全然平気! 今日も昼間は外に出たりしてたよ」
「院内だよな?」
「もちろん。ちゃんと看護士さんも一緒」
「なら安心だな」
元気そうな声にほっとする。調子がいいのも続いているようで、楽しげに話す様子に心がぽかぽかと温まっていく。
「お兄ちゃんは? 学校はどう?」
「んー、いつもと変わらずかな。気楽な平凡ライフを楽しんでるよ」
流石に本当のことは言えないので、誤魔化しながら笑う。俺が色々と変な奴に絡まれていた過去も、妹はほとんど知らない。それでも、俺がここに編入するきっかけになった事件は軽くニュースになったしで、流石にバレてしまい時折心配させてしまっているようだ。
1
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説

学園生活は意外と大変
白鳩 唯斗
BL
毎年恒例の親族達の日帰り旅行で、事故が起きた。家族を全員失った魁星は、葬式に参加する。
そこで、唯一生き残った親族、はとこの雪人の存在を知ることになる。
権利争いが起きないようにと、魁星が雪人を養子に迎えることになり、父親になってしまう。
15歳の魁星は高校に通いながら、6歳のはことの面倒を見ることになる。
面倒見の良い優しい主人公です。
シリアスは少なめかもしれません。


BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。

かつらぽーん
うりぼう
BL
かつらがぽーんと吹き飛ぶ。
王道学園物と見せかけた普通の学園もの。
一人の生徒を生徒会の連中その他が気に入り、親衛隊連中が色々と嫌がらせをしている。
そんな騒動の最中の話。
※王道とみせかけた普通学園
※親衛隊あり


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる