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1.開幕
取り調べってドキドキする
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「一人ずつ話を聞くからねー。まずは転校生君。名前は確か……花菱佑だったかな?」
呼ばれた黒毬藻が、チッと大きく舌を打ちながら取調室に入っていった。転校生の名前、初聞きだなぁ。たすくって名前、なんかカッコイイなおい。俺なんて女でも通用しそうな岬なんて名前なのに。今は壱瀬だけど。
そんなことを考えつつソファに腰掛けようとしたら、副委員長に呼ばれた。
「んじゃ、俺は君の話を聞こうかな」
こっち、ともう一つの取調室の扉の前で手招きされ、はいと返事をして小走りで向かった。俺を呼んでくれるあたり、さすが先輩。わかってるね。
副委員長と共に室内に入ると、取調室というより応接間のような作りでなんだか安心したような、残念なような気持ちになった。
「おうおう、岬ぃ。なに変なのに絡まれてんだよ」
ガチャ、と扉が閉まると、途端に砕けて梓種先輩が笑顔になる。
「いや、あれは不可抗力というか……何なんすか、あの黒毬藻」
「黒毬藻って! ブハッ確かに」
眉尻を下げて笑う梓種先輩につられ、俺も笑顔になる。笑ってても気付かれないだろうけど……と思っていたら、梓種先輩の手が伸びてきて、マスクを取られてしまった。
「俺と2人の時は、コレは無しな?」
言いながら、長い前髪を耳にかけられる。梓種先輩は俺の素顔を見せられる数少ない人物の一人だ。ちなみに、鬘とカラコンも知られている相手。
誰かがいきなり入ってきても困るから、マスクとかも付けたままでいたいのだけど、梓種先輩は2人になると必ず素顔にさせたがる。まぁ鍵は閉めたようだし、まずノックなしに入室されるということはないので、俺も抵抗せずに顔をちゃんと見せるようにしている。
「で、何があったんだ?」
席に座るように促され、着席すれば問いただされた。キスをされたところはボカしつつ、顔を見られてどこかに連れて行かれそうになったことだけを伝えた。
「あー、顔見られたんか」
「いきなりすぎて、抵抗もできず……」
梓種先輩が額に手をあてて項垂れた。大きな溜息を漏らされれば、なんだか居た堪れなくなる。俺は悪くない。絶対に悪くないはずなんだけど、ごめんなさいと言いたくなった。
「顔見られたんなら、もしかしたら……っつーか、今後も絶対に絡まれるぞ」
「えー……でもクラス違うですし」
「でも同じ学年だし同じフロアだろ? 確かアイツ2Aだったと思うから、2Sなんて隣だし、探そうと思えばすぐ見つかるし、来ようと思えばすぐ来られんぞ」
「ひえぇ……」
呼ばれた黒毬藻が、チッと大きく舌を打ちながら取調室に入っていった。転校生の名前、初聞きだなぁ。たすくって名前、なんかカッコイイなおい。俺なんて女でも通用しそうな岬なんて名前なのに。今は壱瀬だけど。
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「んじゃ、俺は君の話を聞こうかな」
こっち、ともう一つの取調室の扉の前で手招きされ、はいと返事をして小走りで向かった。俺を呼んでくれるあたり、さすが先輩。わかってるね。
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「おうおう、岬ぃ。なに変なのに絡まれてんだよ」
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誰かがいきなり入ってきても困るから、マスクとかも付けたままでいたいのだけど、梓種先輩は2人になると必ず素顔にさせたがる。まぁ鍵は閉めたようだし、まずノックなしに入室されるということはないので、俺も抵抗せずに顔をちゃんと見せるようにしている。
「で、何があったんだ?」
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「あー、顔見られたんか」
「いきなりすぎて、抵抗もできず……」
梓種先輩が額に手をあてて項垂れた。大きな溜息を漏らされれば、なんだか居た堪れなくなる。俺は悪くない。絶対に悪くないはずなんだけど、ごめんなさいと言いたくなった。
「顔見られたんなら、もしかしたら……っつーか、今後も絶対に絡まれるぞ」
「えー……でもクラス違うですし」
「でも同じ学年だし同じフロアだろ? 確かアイツ2Aだったと思うから、2Sなんて隣だし、探そうと思えばすぐ見つかるし、来ようと思えばすぐ来られんぞ」
「ひえぇ……」
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