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星空チケット
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季節は十二月を迎え入れようとしていて、嫌でも目前に迫る高校受験が頭を過ぎる。それなのに、常に脳裏を離れていかないのは、日に日に存在を疎ましく感じる前野のことであった。
そればかりか、たった二ヶ月あまりの間に、周りは彼との仲を一番睦まじいものであるからだと解釈しきっている。平凡だとばかり感じていた日常は、いつの間にか予期しない新参者にすっかり振り乱されていた。
翌日、引田は紙片に書かれた地図を頼りに、前野が住むであろう住所へ足を運ばせていた。別に、行く理由などあるわけではない。ただ、一方的に交わされた決まり事を破りでもしたら、週末明け前野にどんな態度をとられるか分かったものではないからだ。
「……遅い」
公民館前に建つアパートの一室を2、3度叩くと、数秒ほどの間を置いて、いかにも不機嫌そうな顔つきをした前野が扉の隙間から現れた。彼は無言で扉を開け放すと、顎をつかって引田を部屋の中へ促す。
そればかりか、たった二ヶ月あまりの間に、周りは彼との仲を一番睦まじいものであるからだと解釈しきっている。平凡だとばかり感じていた日常は、いつの間にか予期しない新参者にすっかり振り乱されていた。
翌日、引田は紙片に書かれた地図を頼りに、前野が住むであろう住所へ足を運ばせていた。別に、行く理由などあるわけではない。ただ、一方的に交わされた決まり事を破りでもしたら、週末明け前野にどんな態度をとられるか分かったものではないからだ。
「……遅い」
公民館前に建つアパートの一室を2、3度叩くと、数秒ほどの間を置いて、いかにも不機嫌そうな顔つきをした前野が扉の隙間から現れた。彼は無言で扉を開け放すと、顎をつかって引田を部屋の中へ促す。
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