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梅雨入り
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十秒ほどの互いの沈黙が、一分にもそれ以上にも感じた。高城は自分が言葉を発するよりも先に、帽子で隠れた男の口元が何かを発したがっていることに得体の知れない恐怖を感じた。
あ……あの…………。
鼠の鳴き声ともとれる小さくてか弱い一声がその場の空気を切り裂いた気がした。
勢いよくはずれた栓のごとく高城は男の胸ぐらを鷲掴みにすると、割らんばかりに稲妻の走るガラス窓へ相手の体を押しやる。一度溢れ出した液体は元には戻らず、本能のままに感情をぶつけていた。
「……お前ッ、いったい何が目的だ!」
身動きのとれない男の体はあからさまに強ばっていた。
だが、相変わらず口元は何か言いたげに動いていて、高城は恐怖心に煽られる。
「…………男の人が好きなんだ。」
突拍子もない一言だった。拍子抜けして男の胸ぐらを固く掴んでいた手元は緩み、無意識にその体を解放していた。
力を抜いた瞬間、相手の男は高城から逃れて廊下の向こうへ走り去る。その際、高城を遣る瀬無さそうに見上げた顔に彼は驚愕した。あの男とは間違いなく、過去に会ったことがあったからだ。
あ……あの…………。
鼠の鳴き声ともとれる小さくてか弱い一声がその場の空気を切り裂いた気がした。
勢いよくはずれた栓のごとく高城は男の胸ぐらを鷲掴みにすると、割らんばかりに稲妻の走るガラス窓へ相手の体を押しやる。一度溢れ出した液体は元には戻らず、本能のままに感情をぶつけていた。
「……お前ッ、いったい何が目的だ!」
身動きのとれない男の体はあからさまに強ばっていた。
だが、相変わらず口元は何か言いたげに動いていて、高城は恐怖心に煽られる。
「…………男の人が好きなんだ。」
突拍子もない一言だった。拍子抜けして男の胸ぐらを固く掴んでいた手元は緩み、無意識にその体を解放していた。
力を抜いた瞬間、相手の男は高城から逃れて廊下の向こうへ走り去る。その際、高城を遣る瀬無さそうに見上げた顔に彼は驚愕した。あの男とは間違いなく、過去に会ったことがあったからだ。
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