今年の夏も、きっと只の幼馴染み

夏蜜

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海の日

後半

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「なあ、俺たち幼馴染みだよな」
「……そうだけど、何?」
「これからも、ずっとか?」
 凌は暫し口を閉ざして頷いた。
「……だから、その、固いもの、押しつけないで」
 海人は凌を力任せに押し倒した。風鈴の影が、彼の額で揺れ動く。凌の髪の毛を指で梳いた海人は、彼の微かな拒絶を拒んで唇を重ねた。実際に触れたのは、これが初めてだった。夕べ食べたすいかよりも瑞々しく、途中で窒息しそうになる。
 唇を離した海人は、明らかな狼狽を見せる凌のティーシャツを、胸許まで捲り上げた。夏だというのに、日焼けを知らない白い素肌が雪を思わせた。だが、手を滑らせると確かに熱い。
「おれが、こんなふうになるのはお前だけなんだよ。世界で、凌、一人だけ」
 海人は自身のジーンズと下着を一斉に降ろした。尖端が凌のほうへ伸び、彼の答えを待ち侘びている。凌は頬を赤らめて外方を向いたが、片手では海人の欲望を触っていた。
「海人は大事な幼馴染みだから、……関係を、壊したくないんだ」
 海人は我慢できなくなって、欲を凌の鳩尾に吐き出した。凌は指先を舐めながら、「濡れちゃった」と一言漏らす。海人は昂りをさらに覚え、凌のスウェットに手を掛けた。
「壊れるわけ、ねえだろ」
 膨張しきったそれに舌を這わすと、生々しい声が頻りに溢れる。いつもされるばかりで、口に含んだのも中学生以来だった。思えば、始まりは海人からだったかもしれない。
 海人はいいところで行為を止め、凌に意味ありげな視線を送った。物足りないような表情が愛おしい。そういえば、今日は海の日だった。海になど行ってはいないのに、すっかり水遊びに夢中になっている。
「なあ、続きは今度……俺たちが逢うとき。壊れる、なんて言った罰」
「……ひどい、海人の馬鹿。待ち遠しくなるじゃん」
「さんざん焦らしておいて、お互い様だろう。楽しみは、とっておくに限るんだよ」
 二人の体温が周辺の温度を高めてゆく。縁側に落ちた葉陰がそれを冷ますように、いつまでもさわさわと風に揺れていた。


 

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