4 / 6
日曜日
後半
しおりを挟む
「……へえ、海人って普段、そんなふうにするんだね」
上下に擦る手に凌の視線が絡みつく。顔から火が出るほど恥ずかしいというのに、動きを止められないのだ。台所に充満した湯気の匂いと恥辱的な状況が、次第に脳内をくらくらとさせてくる。
果てが見えそうなところで、不意に凌の視線と交わった。彼は鍋の火を消し、流し台の水道水を捻る。
「海人、残念だったね。静かにしないと、蕎麦あげないよ?」
凌は水を流してあるザルへ鍋を空けた。湯気が一気に端麗な横顔を隠す。海人は己のものを抱いたまま、涙目でその光景を眺めていた。
「……すごい、昼時からこんなになって」
突然、声が真下で響いた。海人が声のほうへ目を向けると、いつの間にか凌がそこに跪いていた。
「台所、暑くて汗が出るよね。ほら、ここからも沢山……」
「あ、……やめろよ」
凌に指先で尖端をつつかれる。海人はその刺激に、つい腰を震わせた。
「なあ、もうトイレ……行くから。だから、……凌」
「どうして? 俺は別に構わないよ。それとも、期待してる、とか?」
凌は口許を緩めて、海人の根元を喰んだ。舌は徐々に面積を拡大してゆく。
「凌、……凌、凌……」
海人は、名前を呼ぶのが精一杯だった。噴水の如く飛び出た体内の熱は、凌の顔だけでなく、髪をも濡らした。最後の一滴が唇を掠める。凌はそれを舌先で拭って微笑んだ。
「顔が火傷しそう」
火傷しそうなのはこっちだ、と海人は顔を背ける。流し台では、水がザアザアと勢いよく流れていた。
「俺シャワーを浴びてくるから、海人は蕎麦を盛りつけておいて」
凌は台所を出て洗面台のほうに折れる。数秒後に、風呂場の扉の閉まる音が聞こえた。
海人は冷蔵庫に背中を預けたまま、溜め息を漏らした。冷蔵庫に入れてある食品が駄目になるくらい、躰が熱を帯びている。
凌、……凌、凌……。
海人は思い出して、独り顔を赤らめた。何度も大輔の名前を口にした腹いせに、凌は自分の名前しか言わせないようにしたのだ。
すいかがタライの中を、気持ちよさそうに泳いでいる。海人はすいかを食べるさい、うっかり失言しないように気をつけるべきか、わざと凌を挑発しようか、暫く悩んでいた。
上下に擦る手に凌の視線が絡みつく。顔から火が出るほど恥ずかしいというのに、動きを止められないのだ。台所に充満した湯気の匂いと恥辱的な状況が、次第に脳内をくらくらとさせてくる。
果てが見えそうなところで、不意に凌の視線と交わった。彼は鍋の火を消し、流し台の水道水を捻る。
「海人、残念だったね。静かにしないと、蕎麦あげないよ?」
凌は水を流してあるザルへ鍋を空けた。湯気が一気に端麗な横顔を隠す。海人は己のものを抱いたまま、涙目でその光景を眺めていた。
「……すごい、昼時からこんなになって」
突然、声が真下で響いた。海人が声のほうへ目を向けると、いつの間にか凌がそこに跪いていた。
「台所、暑くて汗が出るよね。ほら、ここからも沢山……」
「あ、……やめろよ」
凌に指先で尖端をつつかれる。海人はその刺激に、つい腰を震わせた。
「なあ、もうトイレ……行くから。だから、……凌」
「どうして? 俺は別に構わないよ。それとも、期待してる、とか?」
凌は口許を緩めて、海人の根元を喰んだ。舌は徐々に面積を拡大してゆく。
「凌、……凌、凌……」
海人は、名前を呼ぶのが精一杯だった。噴水の如く飛び出た体内の熱は、凌の顔だけでなく、髪をも濡らした。最後の一滴が唇を掠める。凌はそれを舌先で拭って微笑んだ。
「顔が火傷しそう」
火傷しそうなのはこっちだ、と海人は顔を背ける。流し台では、水がザアザアと勢いよく流れていた。
「俺シャワーを浴びてくるから、海人は蕎麦を盛りつけておいて」
凌は台所を出て洗面台のほうに折れる。数秒後に、風呂場の扉の閉まる音が聞こえた。
海人は冷蔵庫に背中を預けたまま、溜め息を漏らした。冷蔵庫に入れてある食品が駄目になるくらい、躰が熱を帯びている。
凌、……凌、凌……。
海人は思い出して、独り顔を赤らめた。何度も大輔の名前を口にした腹いせに、凌は自分の名前しか言わせないようにしたのだ。
すいかがタライの中を、気持ちよさそうに泳いでいる。海人はすいかを食べるさい、うっかり失言しないように気をつけるべきか、わざと凌を挑発しようか、暫く悩んでいた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。


愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる