今年の夏も、きっと只の幼馴染み

夏蜜

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日曜日

後半

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「……へえ、海人って普段、そんなふうにするんだね」
 上下に擦る手に凌の視線が絡みつく。顔から火が出るほど恥ずかしいというのに、動きを止められないのだ。台所に充満した湯気の匂いと恥辱的な状況が、次第に脳内をくらくらとさせてくる。
 果てが見えそうなところで、不意に凌の視線と交わった。彼は鍋の火を消し、流し台の水道水を捻る。
「海人、残念だったね。静かにしないと、蕎麦あげないよ?」
 凌は水を流してあるザルへ鍋を空けた。湯気が一気に端麗な横顔を隠す。海人は己のものを抱いたまま、涙目でその光景を眺めていた。
「……すごい、昼時からこんなになって」
 突然、声が真下で響いた。海人が声のほうへ目を向けると、いつの間にか凌がそこに跪いていた。
「台所、暑くて汗が出るよね。ほら、ここからも沢山……」
「あ、……やめろよ」
 凌に指先で尖端をつつかれる。海人はその刺激に、つい腰を震わせた。
「なあ、もうトイレ……行くから。だから、……凌」
「どうして? 俺は別に構わないよ。それとも、期待してる、とか?」
 凌は口許を緩めて、海人の根元を喰んだ。舌は徐々に面積を拡大してゆく。
「凌、……凌、凌……」
 海人は、名前を呼ぶのが精一杯だった。噴水の如く飛び出た体内の熱は、凌の顔だけでなく、髪をも濡らした。最後の一滴が唇を掠める。凌はそれを舌先で拭って微笑んだ。
「顔が火傷しそう」
 火傷しそうなのはこっちだ、と海人は顔を背ける。流し台では、水がザアザアと勢いよく流れていた。
「俺シャワーを浴びてくるから、海人は蕎麦を盛りつけておいて」
 凌は台所を出て洗面台のほうに折れる。数秒後に、風呂場の扉の閉まる音が聞こえた。
 海人は冷蔵庫に背中を預けたまま、溜め息を漏らした。冷蔵庫に入れてある食品が駄目になるくらい、躰が熱を帯びている。
 凌、……凌、凌……。
 海人は思い出して、独り顔を赤らめた。何度も大輔の名前を口にした腹いせに、凌は自分の名前しか言わせないようにしたのだ。
 すいかがタライの中を、気持ちよさそうに泳いでいる。海人はすいかを食べるさい、うっかり失言しないように気をつけるべきか、わざと凌を挑発しようか、暫く悩んでいた。
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