今年の夏も、きっと只の幼馴染み

夏蜜

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日曜日

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「おい、やめろ。そのすいかをそっと降ろせ」
 凌に言われ、海人は冷蔵庫に収めようとしたすいかを、キッチンテーブルへ移動させた。タライには既に水が張ってある。凌が準備したものだ。
 氷の入ったタライは見目にも涼しげだ。すいかを浸すと、十キロはあるであろう自身の重みでくるんとひっくり返る。本ばかり読んでいる凌を半ば強引に散歩へ連れ出したとき、偶然通りかかった大輔に貰ったのだった。
 大輔ともまた、小中学校の同級生である。彼は家業のすいか農家を継ぎ、早くに結婚して娘二人の父親になっていた。そんな彼が、軽トラの荷台に積んでいた一玉を、気前よくくれたのである。
「大輔に会うとは意外だったよ。懐かしいな」
「俺も久しぶりだったな。狭い田舎でも、滅多に顔を合わせないもんだ」
「大輔、男前になってたな。中学では泣き虫だったのに」
 凌は鍋を沸騰させる傍ら、柚子を輪切りにしていた。蕎麦に添えるのだろう。凌は昨日のスウェットではなく甚平を着ており、包丁を握る姿だけでも妙に色っぽく映った。
「大輔、妻帯者なんて信じられないよ」
 凌はふと手を止め、視線を海人へ向けた。怒っているような雰囲気に、海人は思わずたじろぐ。次の瞬間には、流し台横の冷蔵庫に背中を押し付けられていた。明らかに憤った顔つきに、海人は唾を呑む。
「忠告。刃物を握っているときに、人を刺激しないこと」
「……あ、はい」
「大輔、大輔ってうるさい。昨日みたいに、お仕置きされたいの?」
 凌は包丁ではなく、海人の下半身をハーフパンツ越しに握ってきた。手の感触が異様に熱く、海人は意思に反してそこを屹立させる。
 凌の美麗な顔が間近に迫っていても、彼は唇には絶対に触れさせなかった。もどかしさが、海人を余計に昂らせる。鍋はとっくに煮立ち、グツグツと泡を吹いていた。
「鍋、……鍋が」
 海人の絞りだした声に凌は行為を中断し、乾麺蕎麦を鍋に投入しだした。海人は縛られてこそいないものの、昨日と同じくお預け状態となり、凌に懇願の眼差しを遣る。自分から、沸騰した鍋のほうに注意を促したにもかかわらずだ。
 凌は海人を一瞥しただけで、当然相手にしない。だが、僅かに微笑んで海人へ告げた。
「蕎麦が煮れるのと、どっちが早いかな」
「どっちて、何が……」
「苦しいんでしょ? なら、吐きだせばいいじゃない。どっちって、……つまり、そういう意味」
 凌の言葉の意味を理解した海人は、戸惑いながら台所の熱気に秘部を晒した。人前でこんなことをするのは初めてである。
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