今年の夏も、きっと只の幼馴染み

夏蜜

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土曜日

後半

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「アイス、とけてきてるよ」
「……ああ、ごめん」
 僅かな沈黙をヒグラシの鳴き声が繋ぐ。アイスバーは、また雫を滴り落とそうとしていた。底知れぬ空腹を覚えた海人は、凌の腕を捉えたまま瞳を見据えた。凌の喉仏がゆっくりと上下に動く。
「……食べていいか?」
「いい、けど、夕飯、どうする?」
「アイスも夕飯も、……お前も、全部いただく」
 海人はアイスバーに食らいつくと、棒をコンビニ袋に仕舞い、すかさず凌の手を舐め回した。バニラの匂いが鼻を刺激し、我慢できずに彼を押し倒す。
 凌は束の間呆然としていたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。彼は膝で海人の股座を擦りながら、反応を確かめてくる。
「すごいじゃん、海人。随分飢えてるんだね」
 凌との縁が切れなかったのは、この関係があったからだと言ってもよい。海人が刺激を堪えている間に、今度は凌に押し倒され、体勢が逆になってしまった。凌はジーンズの鈕をはずし、下着にも手をかける。
「声が大きくでないように、アイスの棒でも噛んでなよ」
 凌はそう言い、袋からアイスの棒を取り出して海人の口に挟ませた。休日のラフなスウェットという出で立ちでも、役場職員の指図には海人も逆らえない。秘部を露にされても、羞恥心と闘うしかなかった。
「海人って、大都会ど真ん中のオフィスにいるとき、こんな厭らしいものを放置してるんだ。淫乱だね」
 凌の手が敏感な部分を巧みに刺激する。下から上へ、さきほど海人が舐めたほうの手で、幾度となく繰り返される。本当に久しぶりだった。そろそろ限界が近い。だが、その矢先で動きは止まる。
「あ……んえ……」
「すっかりベトベトになっちゃった。……これから、夕飯作るつもりだったのに。罰として、暫くそうしてなよ」
 文机の引き出しから綴り紐を取り出した凌は、海人の両手頸を机の脚に拘束して洗面台に消えた。初日から、こんなみっともない格好で放置されるとは。
 廊下を挟んだ台所から、まな板を叩く音が小気味良く聞こえてくる。凌は独り暮らしなので、料理が上手い。何を食べさせてくれるのだろう。期待が膨らむ。
 海人は下半身に抱いたままの熱を、ようやく三十分後に解放された。凌の口の端から雫が垂れる。彼はアイスではなく、別のデザートが欲しかったようだ。 
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