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extra セリカ ー王太子夫妻観察日記ー ④
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幸せな結婚を夢見つつ、羨ましくて堪らない花の年頃のセリカ16歳です。
フィーリアス様がジルヴェール様とイグニス国を訪問される事になりました。随行者としてエステラ様が選ばれ、ご一緒にイグニス国へ行かれる事になりました。
侯爵令嬢として、1番付き合いのあるイグニス国へエステラ様が随行されるのは当然だと思われます。
私とマノン様は、皆様の出立をお見送りしてお留守番係になりました。
ただ、フィーリアス様とジルヴェール様の間が何だかギクシャクとしているのが気になりました……
ちょうど良いこの期間に、私は久しぶりに実家に帰省することにしました。マノン様はあまり実家に帰りたく無いようで王城へ残られるそうです。
余計な詮索はいくら仲が良いと言ってもしてはいけません。マノン様が自分からお話してくださるまで私からは何も言うつもりはありません。
マノン様にお土産を持ち帰る約束をして、実家に帰省しました。
実家の方が仕事が多くて、あっという間に帰省が終わりました。
……王城での侍女の仕事の方が数倍楽って……
マノン様にリクエストの本のお土産をお渡しして、楽しくお喋りしながらフィーリアス様達が帰国される日を迎えました。
フィーリアス様は帰国されたのですが、私たちの挨拶もそこそこに何故かそのままジルヴェール様へ寝室に連れて行かれました。
「今日の夕食から明後日の朝食まで、部屋の前に配膳しておいてね。それまで誰も邪魔しないように」
ジルヴェール様はにっこり笑いながら私達にそう宣言されると、フィーリアス様と共に寝室へと消えていきました。
……一瞬の出来事で私とマノン様はポカンとしておりました。
「あらあらまぁ。フィーリアス様も安易にお約束してしまうから……うふふ」
「……エステラ様。これは一体どういうことでしょうか?」
私とマノン様は事情がさっぱり分からず、随行者であるエステラ様へ縋るような眼差しを送ります。
「うふふ。お二人は明後日の朝まで出てこないようですから、私たちは別室で今回の報告を兼ねたお茶会をしましょうね」
神ですっ! エステラ様の優しいお誘いに、私とマノン様は一も二もなく侍女部屋へ直行しました。
侍女の仕事? 配膳をして頃合いを見計らってシーツを交換するだけですからっ!
時間は十分にあります。
「うふふ。そうねぇ、どこから話そうかしら……」
今日は私が皆様の分のお茶を準備し、席について皆でお茶を飲んで一息ついていた後、エステラ様がおもむろに話し始めました。
「あ、あ、あ、あの……始めから、く、詳しくお聞かせ下さいませ……」
大人しいマノン様が自ら話するなんてっ! マノン様も随分と話が聞きたいに違いありません。
「そうですわね。皆様、イグニス国へ出立する前にフィーリアス様とジルヴェール様のご様子がおかしかったのは、気が付いていましたでしょう?」
私とマノン様はコクコクと頷きます。
「行きの馬車の中でもあのような感じで、お二人ともよそよそしくて、フィーリアス様もずっと私とお話ししておりましたのよ。……ですが、お互いがお互いを意識し合っているのは目に見えて分かりますし、フィーリアス様のジルヴェール様を恋しそうに見る眼差し……ジルヴェール様も必死にフィーリアス様に触れるのを我慢なさっておいでで……うふふふ。たまのすれ違いも非常に燃えていいものですわね」
なんとっ! いつもいつも甘々なお二人がそのような事になっているとはっ!!
確かに、いつもイチャコラ…ではなく、仲睦まじいお二人がよそよそしくも互いを意識しているのは、何だか甘酸っぱい初恋を連想させますねっ!
「ま、ま、まるで……付き合う前の恋人のようですね……」
うっとりしながらマノン様もそう仰られるので、私と同じ思いのようで嬉しくなりました。
「イグニス国までフィーリアス様と私が同室のお部屋だったのですが……ジルヴェール様とラクス様が同室でしたのよ……うふふふ」
「……っ! そ、そうなんですかっ!? エ、エステラ様ご様子はっ! お二人のご様子は分かりますかっ!?」
マノン様がめちゃくちゃ食い気味に質問をします。尊い好きなマノン様にとって、これは非常に大切な質問でしょう。私も同室と聞き、心がきゅんきゅんしました。
「それが、流石に私も中に入るわけにはいかなくて……ですが、相変わらずきっとラクス様と仲良くされていたのではないでしょうか。ジルヴェール様の葛藤を、ラクス様も始終気にされておりましたもの」
こちらは相変わらず安定の仲の尊さで、私もマノン様も大満足です。
「イグニス国へ着くと、夕食会に同席させていただいたのですが……何と彼方のフラム陛下がフィーリアス様に興味を持たれて……」
何とっ! やはりフィーリアス様の美しさは、国外であってもその威力を遺憾なく発揮されるのですね。
「うふふふ。焦るジルヴェール様のお顔といったら……そんな主人の様子を見て、ラクス様もフラム陛下相手に牽制されておられて……うふふ。素晴らしい状況でしたわ」
何とっ! 主人のために一国の国王へ牽制するなんてっ! お二人の絆が尊すぎます。
マノン様は突っ伏して悶えております。
……分かります。分かりますよ。尊すぎますよね……
「……ですが、フラム陛下もそうしたジルヴェール様の様子を見て楽しんでいらっしゃるようで……フラム陛下は……正直何を考えていらっしゃるのか分からない、怖い方でしたわ……」
エステラ様の様子を見て、フラム陛下という方は怖い方なのだとよく分かりました。
……これは、随行しなくてよかったのかもしれません……
「フィーリアス様とジルヴェール様は同室だったのですが、朝のお二人のご様子を見て……うふふ。寂しがるフィーリアス様は非常にお可愛かったのです。その後私はイグニス国の令嬢達とお茶会をしたのですが、やはり始終フィーリアス様とジルヴェール様お二人の話題ばかりでしたわ。お二人とも大変お美しいお似合いの夫婦として、皆様一目お会いしたいと仰っていましたのよ」
何だかお仕えする主人が外国でも人気だと聞くと、非常に嬉しい気持ちになります。
……皆の憧憬の的であるお二人を、毎日眺めることができる役得っ!
「そして、翌日の歓迎会を兼ねた懇親会は……もうサイコーでしたのよ……」
うっとりするエステラ様の顔を見て、何があったのかワクワクと胸が高鳴ります。
マノン様も顔を上げて、次のエステラ様の言葉を今か今かと待っております。
「イグニス国はここよりも温暖な気候でしょう? 慣れない暑さでお辛いフィーリアス様を案じて、イグニス国の民族衣装を王太子妃シュテアネ殿下がご準備してくださったのです。その民族衣装が……」
……民族衣装が?……
私とマノン様が固唾を呑みます。
「その民族衣装が、物凄く素晴らしい程に、適度に露出のある非常に素敵なものでしたの……フィーリアス様のお身体のラインがはっきりと分かりつつも、透ける羽織でその肌の白さを強調しつつ適度に露出を抑える。そして、スカートの裾から時折覗く白い御御足……なんて素晴らしいっ! まるで地上に舞い降りた女神様のようでしたわ……」
何と何とっ! そんなお姿を拝見できたなんて、エステラ様が羨ましい過ぎます…っ!!
「また、その民族衣装が殿方も素晴らしいのです……ジルヴェール様とラクス様の引き締まった二の腕と時折覗く脇腹……そんな衣装で会話をされるお二人……もう、もう尊過ぎて……まさに眼福でしたわ……」
ーーーっ!!!
あまりにも衝撃で時が止まりました。
暫く経って見ると、マノン様は手を合わせながら涙を流しておられました。
何て羨ましいのでしょうかエステラ様っ!!
「その後はフィーリアス様もジルヴェール様もまた元通り仲良くなられて……無事にイグニス国を辞すことができたのですが、最後までフィーリアス様に興味を持たれたフラム陛下に、とうとう独占欲を隠しもしなくなったジルヴェール様が、いつも以上にフィーリアス様をお構いになって。私たちの前でもフィーリアス様に迫るものですから、フィーリアス様ってば、その場凌ぎで帰国したら何でもジルヴェール様の言う事を聞くって約束されたのですわ」
成る程……そして先程の流れに行き着いた訳なのですね。
ここでやっと、少し落ち着いてお茶を飲むことが出来ました。
「にしても、エステラ様がお羨ましいです……その衣装をぜひ拝見したかったです」
「わ、わ、私もです……そんな、夢のような……」
「……そうですわね……少しお待ちになってくださいませね」
にっこり笑って言うエステラ様のお顔が、非常に頼もしく感じました。
その後、部屋に籠られていたフィーリアス様が無事?解放されました。
……解放された朝は動けなかったので、厳密に言うと無事ではなかったかもしれません。
暫くは私たちも日常を過ごしていたのですが、ある日の私たちとのお茶会の時です。
「フィーリアス様。イグニス国の衣装大変素晴らしかったですわね。……実は、マノン様とセリカ様にお話しした所、ぜひともその衣装を纏ったフィーリアス様を見てみたいと仰って。なかなかない機会ですもの。随行出来なかった侍女達も、ぜひ外国のドレスを見てセンスを磨く勉強をしたいとの事ですの」
エステラ様がフィーリアス様にこう提案されました。
「あの衣装可愛かったよね。シュエアネ様がわざわざ贈ってくださった衣装、着てみないともったいないもんね。でも、ドレスを見て勉強だなんて、皆熱心で向上心高くて偉いね~。うんいいよ。エステラ着付け手伝ってくれる?」
フィーリアス様は、にこにこしながら快諾してくださりました。
……相変わらず素直で可愛らしいフィーリアス様に感謝ですっ!
エステラ様に着付けされて出てこられたフィーリアス様を見て、びっくりしました。
これは非常にエロエロ…じゃなくて、煽情的…じゃなくて、お美しすぎますっ!!
特に豊かなお胸の柔らかさが、いつも以上に強調されている気がします。
その胸に吸い寄せられそうになります……
「……フィーリアス様……ありがとうございます」
「は、はわ、はわ……フィーリアス様……す、す、素敵過ぎます……」
「2人とも褒めてくれてありうがとう~。この衣装すごく可愛いよね。エステラ流石だね。完璧な再現だよ」
衣装もいいのですが、その衣装を着ているフィーリアス様が素晴らしいのに、やはりフィーリアス様はお気付きになられていないようです。
……これは、ジルヴェール様がヤキモキする気も分からなくはありません。
「うふふ。喜んでいただいて何よりですわ……そうそう、ぜひ今日お戻りになるジルヴェール様に見せて差し上げたらどうでしょう? きっと驚かれますわ」
「そうだねっ! ジルをビックリさせようか~」
にこにこしながらフィーリアス様は仰いますが、自身の身の危険に気がついてはいないようです。
私は頭の中で、本日の夕食は寝室でお召し上がりになるであろう事を予期し、その準備に頭を巡らせます。
そのままきっとジルヴェール様と入浴されるから、もう私達侍女の出番は終わりですね。
……はぁ。また侍女の仕事が……
予想通り、国務から戻られたジルヴェール様は、フィーリアス様のそのお姿を見るなり寝室へと直行されました。フィーリアス様はキョトンとしたままお部屋に入られていきました。
……いってらっしゃいませ、そしてお休みなさいませ、フィーリアス様。
ですが、ジルヴェール様とラクス様のイグニス国民族衣装ツーショットは、今後見ることは絶対ないでしょう……
着て欲しいなんて、あのお二人にお願いする事は出来ませんからね。
……あぁぁっ! エステラ様がなんて羨ましいっ!!
そんな貴重で希少で尊いお姿を拝見できるなんてっ!!!
羨ましくて羨ましくて堪りません……
ーーー今度外国へ行く機会があれば、絶対の絶対の絶対にっ!! 随行したいと思いました。
フィーリアス様がジルヴェール様とイグニス国を訪問される事になりました。随行者としてエステラ様が選ばれ、ご一緒にイグニス国へ行かれる事になりました。
侯爵令嬢として、1番付き合いのあるイグニス国へエステラ様が随行されるのは当然だと思われます。
私とマノン様は、皆様の出立をお見送りしてお留守番係になりました。
ただ、フィーリアス様とジルヴェール様の間が何だかギクシャクとしているのが気になりました……
ちょうど良いこの期間に、私は久しぶりに実家に帰省することにしました。マノン様はあまり実家に帰りたく無いようで王城へ残られるそうです。
余計な詮索はいくら仲が良いと言ってもしてはいけません。マノン様が自分からお話してくださるまで私からは何も言うつもりはありません。
マノン様にお土産を持ち帰る約束をして、実家に帰省しました。
実家の方が仕事が多くて、あっという間に帰省が終わりました。
……王城での侍女の仕事の方が数倍楽って……
マノン様にリクエストの本のお土産をお渡しして、楽しくお喋りしながらフィーリアス様達が帰国される日を迎えました。
フィーリアス様は帰国されたのですが、私たちの挨拶もそこそこに何故かそのままジルヴェール様へ寝室に連れて行かれました。
「今日の夕食から明後日の朝食まで、部屋の前に配膳しておいてね。それまで誰も邪魔しないように」
ジルヴェール様はにっこり笑いながら私達にそう宣言されると、フィーリアス様と共に寝室へと消えていきました。
……一瞬の出来事で私とマノン様はポカンとしておりました。
「あらあらまぁ。フィーリアス様も安易にお約束してしまうから……うふふ」
「……エステラ様。これは一体どういうことでしょうか?」
私とマノン様は事情がさっぱり分からず、随行者であるエステラ様へ縋るような眼差しを送ります。
「うふふ。お二人は明後日の朝まで出てこないようですから、私たちは別室で今回の報告を兼ねたお茶会をしましょうね」
神ですっ! エステラ様の優しいお誘いに、私とマノン様は一も二もなく侍女部屋へ直行しました。
侍女の仕事? 配膳をして頃合いを見計らってシーツを交換するだけですからっ!
時間は十分にあります。
「うふふ。そうねぇ、どこから話そうかしら……」
今日は私が皆様の分のお茶を準備し、席について皆でお茶を飲んで一息ついていた後、エステラ様がおもむろに話し始めました。
「あ、あ、あ、あの……始めから、く、詳しくお聞かせ下さいませ……」
大人しいマノン様が自ら話するなんてっ! マノン様も随分と話が聞きたいに違いありません。
「そうですわね。皆様、イグニス国へ出立する前にフィーリアス様とジルヴェール様のご様子がおかしかったのは、気が付いていましたでしょう?」
私とマノン様はコクコクと頷きます。
「行きの馬車の中でもあのような感じで、お二人ともよそよそしくて、フィーリアス様もずっと私とお話ししておりましたのよ。……ですが、お互いがお互いを意識し合っているのは目に見えて分かりますし、フィーリアス様のジルヴェール様を恋しそうに見る眼差し……ジルヴェール様も必死にフィーリアス様に触れるのを我慢なさっておいでで……うふふふ。たまのすれ違いも非常に燃えていいものですわね」
なんとっ! いつもいつも甘々なお二人がそのような事になっているとはっ!!
確かに、いつもイチャコラ…ではなく、仲睦まじいお二人がよそよそしくも互いを意識しているのは、何だか甘酸っぱい初恋を連想させますねっ!
「ま、ま、まるで……付き合う前の恋人のようですね……」
うっとりしながらマノン様もそう仰られるので、私と同じ思いのようで嬉しくなりました。
「イグニス国までフィーリアス様と私が同室のお部屋だったのですが……ジルヴェール様とラクス様が同室でしたのよ……うふふふ」
「……っ! そ、そうなんですかっ!? エ、エステラ様ご様子はっ! お二人のご様子は分かりますかっ!?」
マノン様がめちゃくちゃ食い気味に質問をします。尊い好きなマノン様にとって、これは非常に大切な質問でしょう。私も同室と聞き、心がきゅんきゅんしました。
「それが、流石に私も中に入るわけにはいかなくて……ですが、相変わらずきっとラクス様と仲良くされていたのではないでしょうか。ジルヴェール様の葛藤を、ラクス様も始終気にされておりましたもの」
こちらは相変わらず安定の仲の尊さで、私もマノン様も大満足です。
「イグニス国へ着くと、夕食会に同席させていただいたのですが……何と彼方のフラム陛下がフィーリアス様に興味を持たれて……」
何とっ! やはりフィーリアス様の美しさは、国外であってもその威力を遺憾なく発揮されるのですね。
「うふふふ。焦るジルヴェール様のお顔といったら……そんな主人の様子を見て、ラクス様もフラム陛下相手に牽制されておられて……うふふ。素晴らしい状況でしたわ」
何とっ! 主人のために一国の国王へ牽制するなんてっ! お二人の絆が尊すぎます。
マノン様は突っ伏して悶えております。
……分かります。分かりますよ。尊すぎますよね……
「……ですが、フラム陛下もそうしたジルヴェール様の様子を見て楽しんでいらっしゃるようで……フラム陛下は……正直何を考えていらっしゃるのか分からない、怖い方でしたわ……」
エステラ様の様子を見て、フラム陛下という方は怖い方なのだとよく分かりました。
……これは、随行しなくてよかったのかもしれません……
「フィーリアス様とジルヴェール様は同室だったのですが、朝のお二人のご様子を見て……うふふ。寂しがるフィーリアス様は非常にお可愛かったのです。その後私はイグニス国の令嬢達とお茶会をしたのですが、やはり始終フィーリアス様とジルヴェール様お二人の話題ばかりでしたわ。お二人とも大変お美しいお似合いの夫婦として、皆様一目お会いしたいと仰っていましたのよ」
何だかお仕えする主人が外国でも人気だと聞くと、非常に嬉しい気持ちになります。
……皆の憧憬の的であるお二人を、毎日眺めることができる役得っ!
「そして、翌日の歓迎会を兼ねた懇親会は……もうサイコーでしたのよ……」
うっとりするエステラ様の顔を見て、何があったのかワクワクと胸が高鳴ります。
マノン様も顔を上げて、次のエステラ様の言葉を今か今かと待っております。
「イグニス国はここよりも温暖な気候でしょう? 慣れない暑さでお辛いフィーリアス様を案じて、イグニス国の民族衣装を王太子妃シュテアネ殿下がご準備してくださったのです。その民族衣装が……」
……民族衣装が?……
私とマノン様が固唾を呑みます。
「その民族衣装が、物凄く素晴らしい程に、適度に露出のある非常に素敵なものでしたの……フィーリアス様のお身体のラインがはっきりと分かりつつも、透ける羽織でその肌の白さを強調しつつ適度に露出を抑える。そして、スカートの裾から時折覗く白い御御足……なんて素晴らしいっ! まるで地上に舞い降りた女神様のようでしたわ……」
何と何とっ! そんなお姿を拝見できたなんて、エステラ様が羨ましい過ぎます…っ!!
「また、その民族衣装が殿方も素晴らしいのです……ジルヴェール様とラクス様の引き締まった二の腕と時折覗く脇腹……そんな衣装で会話をされるお二人……もう、もう尊過ぎて……まさに眼福でしたわ……」
ーーーっ!!!
あまりにも衝撃で時が止まりました。
暫く経って見ると、マノン様は手を合わせながら涙を流しておられました。
何て羨ましいのでしょうかエステラ様っ!!
「その後はフィーリアス様もジルヴェール様もまた元通り仲良くなられて……無事にイグニス国を辞すことができたのですが、最後までフィーリアス様に興味を持たれたフラム陛下に、とうとう独占欲を隠しもしなくなったジルヴェール様が、いつも以上にフィーリアス様をお構いになって。私たちの前でもフィーリアス様に迫るものですから、フィーリアス様ってば、その場凌ぎで帰国したら何でもジルヴェール様の言う事を聞くって約束されたのですわ」
成る程……そして先程の流れに行き着いた訳なのですね。
ここでやっと、少し落ち着いてお茶を飲むことが出来ました。
「にしても、エステラ様がお羨ましいです……その衣装をぜひ拝見したかったです」
「わ、わ、私もです……そんな、夢のような……」
「……そうですわね……少しお待ちになってくださいませね」
にっこり笑って言うエステラ様のお顔が、非常に頼もしく感じました。
その後、部屋に籠られていたフィーリアス様が無事?解放されました。
……解放された朝は動けなかったので、厳密に言うと無事ではなかったかもしれません。
暫くは私たちも日常を過ごしていたのですが、ある日の私たちとのお茶会の時です。
「フィーリアス様。イグニス国の衣装大変素晴らしかったですわね。……実は、マノン様とセリカ様にお話しした所、ぜひともその衣装を纏ったフィーリアス様を見てみたいと仰って。なかなかない機会ですもの。随行出来なかった侍女達も、ぜひ外国のドレスを見てセンスを磨く勉強をしたいとの事ですの」
エステラ様がフィーリアス様にこう提案されました。
「あの衣装可愛かったよね。シュエアネ様がわざわざ贈ってくださった衣装、着てみないともったいないもんね。でも、ドレスを見て勉強だなんて、皆熱心で向上心高くて偉いね~。うんいいよ。エステラ着付け手伝ってくれる?」
フィーリアス様は、にこにこしながら快諾してくださりました。
……相変わらず素直で可愛らしいフィーリアス様に感謝ですっ!
エステラ様に着付けされて出てこられたフィーリアス様を見て、びっくりしました。
これは非常にエロエロ…じゃなくて、煽情的…じゃなくて、お美しすぎますっ!!
特に豊かなお胸の柔らかさが、いつも以上に強調されている気がします。
その胸に吸い寄せられそうになります……
「……フィーリアス様……ありがとうございます」
「は、はわ、はわ……フィーリアス様……す、す、素敵過ぎます……」
「2人とも褒めてくれてありうがとう~。この衣装すごく可愛いよね。エステラ流石だね。完璧な再現だよ」
衣装もいいのですが、その衣装を着ているフィーリアス様が素晴らしいのに、やはりフィーリアス様はお気付きになられていないようです。
……これは、ジルヴェール様がヤキモキする気も分からなくはありません。
「うふふ。喜んでいただいて何よりですわ……そうそう、ぜひ今日お戻りになるジルヴェール様に見せて差し上げたらどうでしょう? きっと驚かれますわ」
「そうだねっ! ジルをビックリさせようか~」
にこにこしながらフィーリアス様は仰いますが、自身の身の危険に気がついてはいないようです。
私は頭の中で、本日の夕食は寝室でお召し上がりになるであろう事を予期し、その準備に頭を巡らせます。
そのままきっとジルヴェール様と入浴されるから、もう私達侍女の出番は終わりですね。
……はぁ。また侍女の仕事が……
予想通り、国務から戻られたジルヴェール様は、フィーリアス様のそのお姿を見るなり寝室へと直行されました。フィーリアス様はキョトンとしたままお部屋に入られていきました。
……いってらっしゃいませ、そしてお休みなさいませ、フィーリアス様。
ですが、ジルヴェール様とラクス様のイグニス国民族衣装ツーショットは、今後見ることは絶対ないでしょう……
着て欲しいなんて、あのお二人にお願いする事は出来ませんからね。
……あぁぁっ! エステラ様がなんて羨ましいっ!!
そんな貴重で希少で尊いお姿を拝見できるなんてっ!!!
羨ましくて羨ましくて堪りません……
ーーー今度外国へ行く機会があれば、絶対の絶対の絶対にっ!! 随行したいと思いました。
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