悪役令嬢(予想)に転生(みたいなもの)をした私のその後

ゆん

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22.初夜に至るまで

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ジルのくれた指輪は、これまたイエローダイヤモンドが全周に入ったエタニティタイプのリングだった。ずっと身につけておけるようにしてくれたみたい。

さらにさらに。

なんとジルは自分の魔法で作ったアイリスクォーツのブレスレットまでくれた。
これ実は私とジルとでお揃いのものなのだ。お揃いってなかったからすごくテンション上がった。おまけに魔法で作ったから、何かあった時守ってくれるらしい。
本当にジル様何者なぐらいスキルが高い。ま、今や王太子様だけど。

石と盟約を交わし無事王家の一員となった私は、そのまま2人でお披露目となる。ほとんどの貴族が出席している広間へ姿を現した私たちは2人は、たちどころに大勢の人間に囲まれ祝福された。

本当いえばまだ少し怖かったけど、ジルにこんだけ愛されているって思ったら前より恐怖は無くなった。ジルがずっと私の隣にいてくれたのが1番大きかったけど。
時々値踏みされるような目線でジロジロと見られるのが少し辛い時もあり、その時は必ずジルがぎゅっと腰を引き寄せてくれた。

……まだまだジルに頼らないとダメだなんて情けない。

お披露目の後ジルの立太子の宣誓の儀式が行われると、後は祝賀会へと変わっていった。ジルは早々に部屋に戻れるよう手配してくれた。
緊張の連続からかなりの疲れを感じていたので、情けないけど本当に有り難かった。



部屋に戻ると侍女たちにドレスを脱がされ、そのまま浴室にてゆったりとした後香油をつけながらマッサージされた。
本当に本当にありがとう~~。サイコーの癒しです。疲れが取れます……

「皆、本当にありがとう……」
「……っ! いいえフィーリアス様。こんなことで喜んでいただけるならっ!」

1番よく話してくれる侍女のセリカが何故か顔を赤くして元気に答えてくれた。わ~可愛いなぁ。うちの侍女たちは可愛いのだっ!
まだ一日しか経ってないけど、可愛い侍女たちに心はすっかり解され結構リラックスできる。

男爵令嬢のセリカは、若干赤みがかった髪色をした、目がくりくりしてコロコロ表情が変わる可愛い子だ。初めて会った時からいつも何かと話かけてくれて、すごく嬉しかったしホッとした気持ちになった。

侯爵令嬢のエステラは柔らかい金髪のすごく綺麗な子なんだけど、あまり社交会では見かけた事はなかった。センスも抜群だし歳下とは思えない包容力というか、大らかさがすでに備わっている感じで、ついつい頼りにしてしまいそう。

栗色の柔らかそうな髪の毛をしておっとりした顔付きの伯爵令嬢マノンは、あまり自分から進んで話しはしないけど、その顔のままおっとりした性格のようで癒される。


とにかく全員すごく素直ないい子たちで、とても気が楽だった。

……ふふふ。それに、何より全員可愛いしねっ!

その後、そんな可愛いセリカ達からは想像もつかない服を渡されるとは思いもよらず、呑気に浴槽でくつろいでいた私であったーーー



湯浴みが終わり、ガウンを纏って髪を乾かしてもらった後渡されたのは、スケスケの白のベビードールに、もはや隠す意味がほとんどないと思われる布面積の白い下着であった。
侍女たちは渡すや否やサッと部屋から出ていった。

「……」

……とりあえず着てみよう……

ベビードールはなんとか乳首が隠れているものの、後は全部スケスケでおまけに胸の下からパックリと割れていて、お臍が丸見えだ。長さもギリギリお尻を隠すか隠さないか。
下着なんて、なんと。なんとっ! 紐パンのTバックで、人体のお尻の部分を全然隠せもしない代物だっ!
半分涙目になりながら、自分の後ろ姿を振り向きつつ必死に確認する。どうやってもお尻が隠れない……

羞恥心で半泣き状態だったけど、とりあえずガウンを羽織ってベッドに座る。


ーーー布面積の大きさに安堵した。安心。安全。間違いない。


ガチャ


扉を開ける音に飛び跳ねるぐらいビックリした。
ガウンの下にこんな卑猥なものを着ているなんて、自分がとてつもない変態に思えて涙が滲む。

「あぁ……フィー。ドレス脱いじゃったんだね。勿体ない。あれ脱がせながらシタかったのになぁ……」

不穏な事をニコニコ笑って言いながらジルがベッドの隣に腰掛け、私の頭を撫で撫でしてくれる。

「どうしたの? 久々だから緊張する? それとも疲れたのかなやっぱり。ドレス姿のフィーはすごく綺麗だった。女神様かと思ったよ本当に。色々な男達がフィーをジロジロ見て本当に腹が立った。ま、そういった目線を向けてきたやつは、フィーは僕のものだってわかるようにしっかりとアピールしたけど。……あぁ。本当フィーを誰にも見せないように閉じ込めたい……」

そう言って私をぎゅっと抱きしめてくれて、口付けをしてくれる。
でも、私はガウンの下が気になって気になって、正直それどころではなかった。

「……フィー? 本当どうしたの? ……もしかして嫌だった?」

少し傷付いたような顔をしたジルを見て、私はハッとした。
せっかくジルとこうして2人きりになれたのに! やっと私たちは夫婦になったのに!
こんな下着くらいでウジウジしてたら王妃にだってなれっこない!!

「違うっ! 違うのジルっ! ごめんね。そうじゃないの……えっと……実は……」

なんて言ったらいいのかわからなかった私は、見せた方が早いと思ってそっとガウンを脱いだ。

「……」
「……ジル?……やっぱり変態だよね……こんなの……」

何も言わず固まってしまったジルを見て、自分の行為に恥ずかしくなって涙が溢れそうになる。

「……ご、ご、めん……ジル……わ、私、こ、こんな……」

あうあうと涙ながらに弁解しようと思ったら、衝撃とともにひっくり返った。
飛びつかれたジルに押し倒されたらしい、と少し経ってようやく気がついた。ジルは私の首元に顔を埋めてて、何故か震えていた。

「……ジル?」
「…………っフィー……これはダメ。反則。……あーーもうダメだっ! 我慢できないっ! 今日は久々だし優しくしようと思ったけど……確実に無理だから諦めてねフィー」

途中から顔を上げて叫んでいたジルは、最後ににっこり笑いながら言った。
何だか久々にジルの黒い笑顔を見て、涙目になりながらちょっぴり遠い目になった。



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