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第一章 楼桑からの使者
4-⑳
しおりを挟むこの提案が受け入れられ、取りあえず今日の朝議は中止となった。
当事者の二人も不承不承ながら納得する。
しかしその視線には互いに相譲ることのない、燃えるような感情が秘められたままだ。
一体この両者の間にいかなる出来事があったのだろうか、なんにせよ生半可な因縁ではなさそうだった。
「みな明朝またここに集まるように、ペランそれまでにお前の心が翻意することを期待する。殿下、ご無礼ながら先にお暇させて頂きます」
そう言って主君であるフリッツがまだ着座しているにも拘わらず、ガリフォンが議場を退出してゆく。
ペランは無言でガリフォンを見送ると、丁寧に上座のフリッツへ最上の礼の姿勢をとった。
「大公殿下、せっかくの朝議をこのような結果にしてしまい申し訳ございませんでした。けれど先ほどの御決意、このペランは嬉しゅうございましたぞ。若いうちはそのくらいの意気を持たねばなりません、あの頃のブルガ様のように。――では、わたしも退がらせて頂きとうございます」
誰もが心を許してしまいそうなほどの笑顔を見せ、ペランが退出の許可を請うた。
「おい髭のペランよ、あとで俺の邸に来い。積もる話しがある、場所は変わっておらん。きっと来いよ」
これもまたガリフォンに続き、玄武の間から出ていこうとする旧友に対してダリウスが声を掛けた。
「ああ、きっと行く。それにしても歳を取ったなダリウス」
「それはお互いさまだ、髭親父」
憎まれ口を返すダリウスを一瞥してさも懐かしそうに、ペランが髭面をくしゃくしゃにした。
「相変わらず良い笑顔だ、あの頃のままにな」
出口へと踵を返したペランは振り返りもせず、その言葉に右手を軽く振りながら広間から去って行った。
「ったく、その仕草まで昔のままだ――」
彼と初めて遭遇したサリサリ市場での別れ際を思いだし、ダリウスは苦笑した。
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