アンドローム ストーリーズ(聖大陸興亡志) 第一巻「運命の婚礼」前篇

泗水 眞刀(シスイ マコト)

文字の大きさ
上 下
78 / 82
第一章 楼桑からの使者

1-⑲

しおりを挟む

 

 場内は二人の激しいやり取りに、水を打ったかのように静まり返っている。

「ふたりとも落ち着くのだ、ここで昔のことを蒸し返しても仕方があるまい。もしコルデスがここに居れば、馬鹿な喧嘩は止めろとふたりとも怒鳴り飛ばされているところだぞ」
 普段は控えめなユーディ伯が言葉を挟んだ。

「どうだろうガリフォン、ペラン。始まったばかりではあるが、今日はここで閉会と言うことにしては」
 横合いから皮肉屋であるはずのブラーディンが、珍しく助け船を出す。

 その声にはふたりに対する好意と、心からの温かな感情が込もっていた。
〝こんな口論は見るに忍びない〟
 とでも言いたげに彼の顔が、いまにも泣き出してしまいそうなほどに歪んでいる。

 どんなときも冷徹なこの男の性格からすれば、信じられぬほどの異例な言動であった。

「それがいい、お開きだ。殿、それでよろしいな」
 ダリウスが傍らのフリッツに確認するように言った。
「うむ」
 なにがなにやら状況を把握できずに、促されるままにフリッツが小さく頷く。

「聞いたか、殿もご承知なされた。今日の御前会議はこれでお開きだ」
 ダリウスが大声で叫んだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...