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第一章 楼桑からの使者
4-⑱
しおりを挟む「見くびられたものだな、儂をその程度の男と思うておったのか。確かに儂はお前に嫉妬しておった、悔しくてたまらなかった。お前がこの世から消えてくれればと願ったことも確かだ。それは儂だけではなかったはずだ、あの時のわれらサイレンの家臣はみなお前の才を羨んでおった。ダリウスとコルデスの二人だけは例外であったかも知れんがな」
語るにつれ、その言葉には熱が込もってゆく。
「しかし、それ以上にだれもがお前を認めていた、みながお前を好きであったのだ。お前はその友情を信じられなかったのか・・・。あの時死んでしまったマルコはどうなる、あいつはお前を実の兄のように慕っておった。いつもお前の後にくっついておった、お前のために斃れたあの可愛いマルコは無駄死にとなってしまったのだぞ。いまさらそのようなものを持ち出すくらいならば、なぜあの時に闘わなかった。われらは・・・少なくとも儂はお前とともに闘うつもりでいたのだ。たとえ勝ち目がなかろうが、たとえ親兄弟に叛いてすべてを失ったとしてもそのつもりだったのだ。儂はお前と共に実現したかったのだ、ブルガさまが夢見られた理想の国造りをな。あの熱い日々を儂はこの年になるまで一度として忘れたことはなかったぞ。生きておればマルコもそう言ったはずだ。お前はフローリアの最期の時に誓ったであろう、マルコのことは任せておけと」
フローリアという名前を聞き、一瞬ペランの髭だらけの顔に哀しみとも後悔とも取れる微妙な色が浮かんだ。
「そのマルコを死なせてまで為そうとしていたことを、お前は裏切り自ら手放し姿を消したのだ。いまさら偉そうに儂の前に現れおって、お前を信じて死んでいった者たちに恥ずかしくはないのか」
熾烈な言葉で、ガリフォンが追い込んでゆく。
「マルコか・・・」
ペランが静かに目を瞑った。
その脳裏に、はかなげな笑顔の少年の顔が浮かんだ。
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