アンドローム ストーリーズ(聖大陸興亡志) 第一巻「運命の婚礼」前篇

泗水 眞刀(シスイ マコト)

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第一章 楼桑からの使者

4-⑥

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 宰相たちがそんな相談をしている頃、フリッツは政務殿の中にある自分の居室で悶々とした時を過ごしていた。

 重臣たちの話し合いが終わると同時に始まる〝朝議〟『御前会議』に臨席する為に、大公宮ではなく政務殿で待っているのである。
 昨日同様、ブルースとエメラルダも一緒である。

「なあエメラルダ、なぜ義姉上は余に逢うてくだされぬ。なぜじゃ、なぜじゃ」
 朝からずっとこの調子である。

「お身体のお具合が優れぬ、そうおっしゃられているではありませんか」
 エメラルダがほとほと困り切った声で、今朝なん度目かの同じ言葉を返した。

「ああ、そうじゃな。あの、あの女官長のナニィージャがそう言ったのだよ。公太后さまはお身体のお具合が優れぬゆえ、どなたにもご面会なされませぬ、お引き取り下さいませ。澄ました顔で余にそういう言うのだよ。そして勝手に、勝手に扉を閉めたのだよ」

「・・・・・」
「・・・・・」

 二人ともそれにはなにも応えず、呆れた顔で目配せをするだけであった。
 朝から幾度となく繰り返された、会話とも呼べぬ会話である。
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