50 / 82
第一章 楼桑からの使者
3-⑧
しおりを挟む「私もブラーディン殿と同意見でござる。なにごとにも備えあれば患いなしと言うではございませぬか」
外務卿のユーディがそれに続く。
〝どんっ!〟
それまで静かに話しが進んでいた空間に、卓を拳で叩く音が響き渡った。
「相手が来るというのならば受けて立つまで。ヴァビロン帝国と干戈を交えるなど、これは武人冥利に尽きる大戦。いまから武者震いがしてくるわい。きゃつらめは仔兎を狩る獅子のような心地でいるのであろうが、なんの武のサイレンの恐ろしさを、とくとご覧に入れて進ぜよう」
青い瞳をぎらつかせた老武人、サイレン軍の総帥・ダリウス侯爵が興奮したように大声を放った。
「・・・!」
いらとした表情でダリウスを睨み付けたブラーディンに、さっと目配せをしてそれを制したガリフォンが、間髪入れずに怒鳴った。
「馬鹿なことを吠えるな、ダリウス。われらは戦などが起きぬように、こうして知恵を出し合っておるのだ。楼桑のロルカ王もそれゆえに難しい決断をして、アルバート殿をお遣わしになっておられる。戦をすればサイレンは地上から跡形もなく消し去られるは確実ぞ。貴様は仔兎を狩る獅子と比喩したが、わが国は象に踏み潰される蟻じゃ。象の方は踏んだことさえ気づかぬ。いい年をして少しは分別をわきまえよ」
「な、なんじゃとガリフォン!」
「元帥閣下、宰相殿の申される通りです。多少お口を慎まれたほうがよろしいかと」
ダリウスの横に座っている、三十前半と思しき落ち着いた雰囲気を持つ男が口を挟んだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる