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第一章 楼桑からの使者
2-③
しおりを挟むまるで駄々をこねる童のような老武人に苦笑しつつ、ガリフォンが話しを元に戻す。
「して殿、ブルースからお聞き及びと存じますが、楼桑国のガンツ伯爵がお見えになっておられます。まだ直接顔を合わせてはおりませんが、なにやら事情があるようすとの報告でございます」
「如何にも、先触れもなくロルカ王の側近であるガンツ老伯がやって来たとなると、それなりにややこしい話しかと──」
外務卿のユーディが、ガリフォンに同調するように恭しく言葉を続ける。
「一体如何なる要件か、会うてみなければ分からぬこと。早速に謁見の間へお通し致すように、礼を失するでないぞ」
フリッツがユーディへ命じる。
「はっ、ではわたし自らお伝え致しましょう。半刻後に謁見の間へご案内致します。それでは」
ユーディは一礼すると、楼桑国の使者へ主君の意を伝える為に部屋を出ていった。
「さてガンツ老の要件、一体なんだと思うガリフォン。忌憚なく申せ」
フリッツは祖父と言っても良いほど年上の宰相に、鷹揚な口ぶりで問うた。
「まずもって一つは殿との縁談話かと。ロルカ王寵愛のロザリー姫がその相手と思われます」
彼はズバリそのままの考えを返した。
「それならば、なぜ堂々と正式な国使として会いに来ぬのだ。殿に対して婚礼の申し込みならばそれ相応の手順があろう」
ダリウスが面白くなさそうに口を挟む。
「うむ、ダリウスの申すことはもっとも。されどそれができぬ事情が先方にもあるのであろう。政治というのは一筋縄ではゆかぬものよ、兎にも角にも会うて話を聞いてみぬうちはなにも始まらぬではないか」
「おいガリフォン、お前ほかになにか知っておるのか。情報通のお前だ、楼桑国の内情をなにかつかんでおるな」
ガリフォンの仔細ありげな言葉に、ダリウスが問うた。
この二人幼少からの付き合いなだけに、言葉に出さずとも相手の肚の中が解かるらしい。
「そうなのかガリフォン。知っていることがあれば話してみよ」
フリッツが宰相ガリフォンへと視線を向ける。
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