アンドローム ストーリーズ(聖大陸興亡志) 第一巻「運命の婚礼」前篇

泗水 眞刀(シスイ マコト)

文字の大きさ
上 下
28 / 82
第一章 楼桑からの使者

2-③

しおりを挟む


 まるで駄々をこねる童のような老武人に苦笑しつつ、ガリフォンが話しを元に戻す。

「して殿、ブルースからお聞き及びと存じますが、楼桑国のガンツ伯爵がお見えになっておられます。まだ直接顔を合わせてはおりませんが、なにやら事情があるようすとの報告でございます」
「如何にも、先触れもなくロルカ王の側近であるガンツ老伯がやって来たとなると、それなりにややこしい話しかと──」
 外務卿のユーディが、ガリフォンに同調するように恭しく言葉を続ける。

「一体如何なる要件か、会うてみなければ分からぬこと。早速に謁見の間へお通し致すように、礼を失するでないぞ」
 フリッツがユーディへ命じる。

「はっ、ではわたし自らお伝え致しましょう。半カルダン後に謁見の間へご案内致します。それでは」
 ユーディは一礼すると、楼桑国の使者へ主君の意を伝える為に部屋を出ていった。


「さてガンツ老の要件、一体なんだと思うガリフォン。忌憚なく申せ」
 フリッツは祖父と言っても良いほど年上の宰相に、鷹揚な口ぶりで問うた。

「まずもって一つは殿との縁談話かと。ロルカ王寵愛のロザリー姫がその相手と思われます」
 彼はズバリそのままの考えを返した。

「それならば、なぜ堂々と正式な国使として会いに来ぬのだ。殿に対して婚礼の申し込みならばそれ相応の手順があろう」
 ダリウスが面白くなさそうに口を挟む。

「うむ、ダリウスの申すことはもっとも。されどそれができぬ事情が先方にもあるのであろう。政治というのは一筋縄ではゆかぬものよ、兎にも角にも会うて話を聞いてみぬうちはなにも始まらぬではないか」
「おいガリフォン、お前ほかになにか知っておるのか。情報通のお前だ、楼桑国の内情をなにかつかんでおるな」
 ガリフォンの仔細ありげな言葉に、ダリウスが問うた。

 この二人幼少からの付き合いなだけに、言葉に出さずとも相手の肚の中が解かるらしい。

「そうなのかガリフォン。知っていることがあれば話してみよ」
 フリッツが宰相ガリフォンへと視線を向ける。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...