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第一章 楼桑からの使者
2-②
しおりを挟む「殿っ!」
言いかけたダリウスの言葉を遮るように、
「さて、そのようなことは後の話として、楼桑国のご使者に対する対応を話し合おうではないか」
宰相のガリフォンが話題を変える。
フリッツへ小言をいおうとした機先を制せられたダリウスは、ムッと口をへの字に結んだままそっぽを向く。
そんなダリウスの子どもじみた態度を見て、ブルースは必死になって笑いを堪えている。
「ブルース、なにがおかしい!」
ダリウスが視線を移さず、そっぽを向いたまま渋枯れた怒鳴り声を上げる。
「いえ、なにも」
姿勢を正してブルースが応える。
そんな二人のじゃれ合いにも似た遣り取りに少し呆れ気味な表情で、ガリフォンがユーディ伯に目配せをする。
「おいエメラルダ、お前はそんなところでなにをしておる。お前など呼んだ覚えはないぞ、女の分際で僭越な、さっさと退がれ」
ダリウスは相変わらずそっぽを向いたままの恰好で、フリッツの後ろに付き従っている自分の娘エメラルダに鋭い言葉を投げつける。
「余が同席を許したのだ、今日の話しエメラルダにも聞いておいて貰う。みなも良いな」
フリッツは気の置けない臣下である女騎士を、庇うようにきっぱりと言い切った。
主君の言葉に力を得たかのように、エメラルダは無言で頭を下げた。
「エメラルダのこと、心得置きました。――わかったなダリウス」
ガリフォンは、忌々しそうに不機嫌な顔をしているダリウスに同意を求める。
「殿がそう申されるのであれば、好きになさるがよろしかろうて。どうせここは正式な場ではないからな」
ダリウスはとうとう腕組みをして、目を瞑ってしまう。
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