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第2話 鬱陶しいほどの雨音を聞きながら
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しおりを挟むケンイチは精も根も尽き果たし、小屋の中に横たわった。
意識は朦朧としており、自分の命が長くないことを悟った。
眠りかけた彼の耳に、生まれた時から聞き馴れたトタン屋根を叩く雨音が聞こえた。
実際には砂粒が屋根に当たる音なのだが、彼にはもうそれさえ分からない。
「うるせえ雨音だな・・・」
砂の海の真ん中で鬱陶しいほどの雨音を聞きながら、彼の意識はこの世から離れて行った。
その日の夕方、救助隊は墜落したジェット機内の損傷した十人の遺体と、沙漠の中で砂に埋もれかけ倒れていた三人の亡骸を回収した。
最後に発見されたケンイチが冥った沙漠の砂除け小屋は、大きなオアシスの町へ砂丘一つ越えれば辿り着ける場所にあった。
ケンイチがいつも見上げていた交差点のメガモニターに、飛行機事故のニュースがほんの僅か報道された。
砂の海ナルディアから遠く離れた貧民街〝ガラガラ・タウン〟には、きょうも変わらずに鬱陶しいほどの雨音がトタン屋根に響いていた。
了
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