上 下
5 / 25
第1話 ゆらぎの芽 (グリーン スプラウト)

5 令和七年 六月二十日

しおりを挟む




 華菜の父親に芽が生えたのは二日前だった。

 今朝からは父親は会社へ行かなくなった。
 昨日夕方に帰って来てから、ほとんどを睡って過ごしている。

 学校も生徒の半数以上が欠席である。
 みなスプラウトにやられてしまったのだろう。

 授業もほとんどが自習で、今もなにをするでもなくぼーっと雨の校庭を眺めていた。
 今日も朝から雨だ。
 学校へなど来なくてもいいのだが、何かしらの日常に縋りたい思いで登校していた。


「倉田、お前はまだ芽が出てないみたいだな。安心したよ」
 急に後ろから声をかけられた。

 ふり向くと部活で陽に焼けた、爽やかな笑顔があった。
「先輩・・・」
 露城真吾だった。

「昼飯一緒に喰おうぜ。学食やってないだろうとおもって、アーケードの沢田の爺さんの所で買って来てたんだよ」
 そう言って薄い茶褐色の紙袋を机の上に置く。
 沢田の爺さんの所とは、アーケード商店街の沢田ベーカリーのことである。

「自販機は動いてるから大丈夫だ、牛乳でよかったよな?」
 紙パックの牛乳も二つ添えられている。

 袋の中にはチョココロネとあんとホイップクリームがたっぷり詰まったパンが二個ずつ入っていた。
 どちらも沢田の爺さんの手作りである。

「わあ、チョココロネ大好きなんです」
 華菜は思わず声を上げていた。

「知ってるよ、子どもの頃からいつも喰ってたもんな」
 近所に住む露城真吾とは幼馴染で、小さい頃はほとんど毎日一緒に遊んでいた。

 小学校の低学年を過ぎた頃から、急に接することがなくなった。

 そして、いつしか華菜は真吾に恋をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...