上 下
15 / 36

四章(5)

しおりを挟む
【リアside】

 次の日。昼頃、俺は父に呼ばれていたので、てとてと、と仕事部屋へと移動していた。後ろからハーデスとミナが付いてきてくれている。ハーデスは若干暗い表情をしているので、俺も何を言われるか不安だ。
 ハーデスが扉をノックする。

「アルドア様。リア様をお連れしました」

「どうぞ」

 聞いていて心地よい、アルドアの声が中から聞こえ、入室を許可される。怒った声色や、焦った声色では無かったので、想像していたよりも深刻な事態では無さそうだ。

「おとうさま!しつれいします!」

「リア!どうぞ、席に座っておくれ」

 父の専属執事が、淹れたての紅茶を父と、席についた俺の前に置く。

「リア。大切な話があるんだ」

「なぁに?」

 俺が聞き返すと同時に首をこてん、と傾けると、「ゔっ!かわっ……!」と呻き声が聞こえた。父の専属執事だ。ハーデスに小突かれている。

「……気を取り直して。リアは人を助けるのは好きかい?」

「うん!」

 笑顔で俺がそう言うと、父も「そうかい」と笑顔になった。

「そこでリアに提案なんだ。……今から、教会で修行する気はあるかい?」

「……え?」

 5歳からじゃなかったの?と思い父に聞くとリアは才能があるからその才能を早く伸ばした方が良いと思ってね、と父は言った。実際、聖魔法が感知できれば、その子は教会で修行することができるらしい。

「いく!ぼく、いくよ!」

 俺はすぐにそう言うと、父はなんだか悲しそうな顔をした。

「教会には使用人は連れていけないんだ。ハーデスとミナとお別れすることになるけど、大丈夫かい?」

 家から中央教会に行く距離はそんなに遠くない。休みの日にでも会いに来よう。

「ぼく、いろんなひとのやくにたつ!」

「……分かった。明日には行けるように準備しよう。私も王宮に用があるから途中まで一緒に行くよ」


 ……こうして、俺は明日から教会で修行する事になったのだった。


♢♢♢

 ガイア

「リアアァァァ!寂しいよっ!俺の側からずっと離れないでくれ!」

 まずはガイアに挨拶しに来たのだが、ガイアってこんな性格だっけ……。いや、ずっとこんな感じか。俺が1歳の頃、俺が初めて話した言葉が『がいあ、ううあい(ガイア、うるさい)』だったのだが、自分が1番に呼ばれた!とそれはもう嬉しそうだった。歩き始めた時も、『もっと歩けるようになったらデートしようね』と言ったくらいだ。それにしても『離れないでくれ』なんてブラコン具合がさらに加速した感じがする。もうガイアも9歳なんだから弟離れしてくれ。

「俺も学校頑張るね!休みの日には会いにくるからね!セクハラされないように気をつけるんだよ!!!」

 教会は多分シスター(女の人)多いから大丈夫だろう。それに俺男だし。心配しすぎだ。
 俺に抱きつきながら大泣きする安心させるように頭を撫でると、ガイアがさらに抱きついてきた。ちょ、ギブギブギブ。

♢♢♢

 ファーニア&ネーニア

「寂しいね、リア」
「元気でね、リア」

 双子の兄に別れを告げに行くと、似たような返事だった。さすが双子。

「リアは初等学校に行かないの?」
「初等学校、貴族はみんな行くって聞いてる」

「ぼくはいかない。それに、おとうさまのおとうとも、5さいからきょうかいでしゅぎょうしてて、がっこうにいってないってきいたから、だいじょうぶ!」

 俺は転生者だから前世である程度の教養は身につけているし、教会でもきっと勉強を教えてくれるだろう。だから大丈夫だ。

「そっか。気をつけてね、リア」
「お休みの日は遊ぼうね、リア」

 双子と握手をして、部屋を出た。

♢♢♢

 リイナ

「……アルドアからは聞いているわ。中央教会に行くのよね?」

 母の仕事が終わったと専属のメイドから聞いて、挨拶に来た。

「リアの才能は素晴らしいものよ。でも、だからと言って威張ったり、他の人を下に見てはいけないわ。頑張ってたくさん人を助けてね」

 「はい!」と元気よく返事をし、俺は母に抱きついて、別れを告げた。


♢♢♢

「リア様、この洋服も持っていきましょう!」

「こら、ミナ。そんなに入りきりませんよ。それと、服はあちらに制服があるでしょう。必要な分と下着を持っていくのが最適かと思います」

 ハーデスとミナが荷物整理の手伝いをしてくれている。ああでもない、こうでもないと慌てているミナをハーデスが落ち着きなさいと嗜めている。いつもの光景だ。

「……う~っ、リア様、私寂しいです……!ずっと一緒に居させてください~!」

 ミナがガイアのような事を言うので思わず俺は苦笑いした。

「お休みの日は絶対絶対ぜ~ったい会いに来てくださいよ!?」

「わかってるよ!それと、ミナはもうさみしくないとおもうよ!」

 俺はそう言うと同時に、ハーデスに目線を合わせた。告白のチャンスだぞ、と目で訴えると、ハーデスも理解したようで、ミナに向きなおった。

「? ……リア様、寂しくないって、どういう……?」

「ハーデスからおはなしがあるって!」

 ミナは屈んでいた体制から、立っているハーデスに合わせて、立ちあがる。

「……リア様からいただいた折角の機会、ありがたく使わせていただきます。……ミナ、貴方が好きです。……気のいい事を言えれば良かったのですが、生憎口下手なので……自分なりに、伝えました。……いきなりだったので、返事は後でも…「好きです、私もハーデスさんが!」……え」

 驚いたまま表情が固まってしまったハーデス。でも、その後ミナがハーデスに抱きつくと、顔を真っ赤にさせた。

「……う、嬉しいです、ミナ。一生大切に、幸せにしてみせます!」

「ちょ、な、何プロポーズみたいな事言ってるんですか!?」

 幸せそうな2人を暖かく見守りながら、俺は明日の準備をして、荷物の整頓と、みんなへの挨拶を無事済ませたのだった。


♢♢♢♢♢♢

「リア、そろそろ出発だよ。みんなに挨拶は済ませたかい?」

「きのう、ぜんいんにいいました!」

 翌日。ついに俺は教会へ行くのだ。ここから俺の、超絶☆チート癒しライフ(ハーレムかな!?うひょひょ)が始まるかもしれないのだ。気を引き締めて行かなければ。

「おとうさまは、おうきゅうになにをしにいくのですか?」

「……ちょっとだけお話しするんだよー(棒)」

 何やら怪しかったが、まあいいや。
 俺と父が馬車に乗り込むと、すぐに馬車は走り出した。

「「「いってらっしゃい、リア(様)!!!」」」

 みんなにそう言ってもらい、嬉しかった。

「ありがとう!いってきます!」

 と、俺は元気よく返したのだった。








♢♢♢

「……私、いってらっしゃいって言われなかった……当主なのに……私、ユークリウッド家の当主なのに……」

 馬車の中でしょぼくれる父を励ました事は、みんなには言わないであげよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた

キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。 人外✕人間 ♡喘ぎな分、いつもより過激です。 以下注意 ♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり 2024/01/31追記  本作品はキルキのオリジナル小説です。

魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。

柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。 頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。 誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。 さくっと読める短編です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

【R18】奴隷に堕ちた騎士

蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。 ※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。 誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。 ※無事に完結しました!

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う

R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす 結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇 2度目の人生、異世界転生。 そこは生前自分が読んでいた物語の世界。 しかし自分の配役は悪役令息で? それでもめげずに真面目に生きて35歳。 せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。 気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に! このままじゃ物語通りになってしまう! 早くこいつを家に帰さないと! しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。 「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」 帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。 エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。 逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。 このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。 これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。 「アルフィ、ずっとここに居てくれ」 「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」 媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。 徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。 全8章128話、11月27日に完結します。 なおエロ描写がある話には♡を付けています。 ※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。 感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ

処理中です...