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冬は総括
明太フランスと光の恵み
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家に帰って、暗くなるのを待ってから、私はお父さんの車と自分のR32を並べてみた。
HIDと、R32のハロゲンとではどう違うのかを確かめたかったんだ。
今って、夜出歩かないから、バイト帰りくらいしか暗い時間帯に乗る事は無いんだけど、どこまで違うのかは知っておきたいと思ったんだ。
昼間の柚月の話なんかを聞くと、明るさと雪が解ける以外のメリットはなさそうで、LEDライトの普及で、これからの時代には淘汰されていってしまう、まるでMDのような位置づけにしか感じられなかったんだ。
そうなると、苦労してつける価値があるのかと思って、まずはそのメリットの明るさがどの程度なのかを見て、つけるか、柚月にあげちゃうかを考えようと思ったんだよ。
ちなみに、バルブ形状がH3用だから、結衣や優子の後期型は、バルブ形状が変わっていてつけられないんだって。
ぶっちゃけ、バルブを交換した時に、かなり明るくなって感動した記憶が今もハッキリ残ってるから、正直、あまり変わらないんじゃね? と思うんだよ。
だったらHIDをわざわざつけるより、そこを飛ばしてLEDにステップアップしちゃった方が、無駄な動きが無いよね……。
これから寒くなるし、もし作業面倒だったら嫌だし……。
まずは自分のR32に乗って暗がりに向かってライトをつけてみる。
ぱぁっと、明るい黄色の光が目の前に広がって、最初の純正バルブを知ってる身にとっては、充分に明るかった。
ほら、充分だよ。
これだけ明るければ、HIDキットなんて必要ないでしょ、これは柚月にあげるので決定~。
だけど、タダであげるのは癪だから、いくらにしようかな~なんて思いながらエルグランドの運転席に乗り込んだ。
お父さんのエルグランドも、仮免取ったばかりの頃の練習と、燈梨の引っ越しの手伝いに行った時くらいしか乗ったことが無く、その両方共が明るい時間帯だったから、ライトの明るさなんて分からないんだよね。
それまではいつも2列目のシートに乗って寝てたりしてたからさ、小学生の頃から乗ってるけどさ、分からないんだよね。
この車はキーを挿すんじゃなくて、R32ならキーシリンダーがある位置にあるレバーみたいのを掴んで、キーと同じようにひねるとエンジンがかかるんだ。
しかも、ライトがオートになってるから、それと同時にライトが蛍光灯みたいにパチッと起動してから、じんわりと明るさを増していく感じで点灯した。
お……おおぉ……ナニコレ?
真っ白な鋭い光が、周り中を包みこんでメチャクチャに明るいんだけど……。
R32のライトが、スマホのライトで暗闇を照らしてる感じだとしたら、エルグランドのライトは、投光器で周辺を照らしてる感じなんだよ。
うわっ、なんかレベルが違うよ。
ためしにライトをオフにしてから、R32に戻ってライトを点けるんだけど、なんで? さっきまであんなに明るく感じてたR32のライトが、まるで消えてるみたいなんだけど。
あまりの違いに、ライトスイッチをもう1回確認して、スモールの位置じゃないよねって確認しちゃったよ。
う~ん……ここまで違うなら、つけておいた方が良いんじゃないかなぁ……。だってLEDのライト買う余裕なんてないし、兄貴の返信にも当時5万円くらいしたものだってあったしね。
じゃぁ、取り付けるとして、どういうところが問題になるのか、軽くネットで調べておこう。
ふむふむ、取り付け自体は純正のコネクターの所にキットのコネクターを繋いで、純正のライト配線の先端の所にHIDが割り込んでくるようなイメージでいれば良いんだね。
だから、難しい配線の引き直しだとか、コネクターの変換だとかも無くて、ポン付けできる訳だね。
よし、これならちょちょっとできるね。
◇◆◇◆◇
という事で、翌日みんなでHIDの取り付けをやってみる事にしたよ。
なんか思うんだけどさ、車に乗るようになって半年強の間で、私ってホントに車に毒された気がするんだよね。
「まぁまぁ~、いいじゃない~」
良くないよ柚月。大体そうなった大半の理由はアンタにあるんだからね。
私はね、放課後に軍手しながら車に向き合う学生生活なんてありえないと思ってるんだからね。
「でも~今日はマイの作業だからね~、文句あるなら私帰るし~」
正論ぶりやがって、お前はどこぞの動画投稿者かっての?
そもそも、今日の作業に関しては、柚月は後学のためにとか言って勝手についてきたんじゃなかったか?
「そ・そうだっけ~?」
誤魔化そうってのか? そうはいかないんだぞ。
じゃぁ、柚月さんのみ、不快指数が上がったそうなので、お帰りください~。さて、柚月以外のみんな、頑張ろうね。
「待てよ~!」
なんだよ柚月。
私の方針に文句があるんだろ? だから無理にこの場にいる必要なんてないよ。じゃぁ、みんな、4人で役割分担を決めようね。まずメインの作業は私がやるから……
「私もやる~」
え~、別にいいよ。
柚月がいなくても地球は回ってるし、作業も効率よくできるからさ。
「私もやるんだ~!」
え~、だって柚月、さっき帰るって言ったじゃん。
早く家に帰って、あきれた刑事でも見てればいいじゃん。でもって、Vシネマで出た『あ・キレた刑事』見ちゃダメだよ。内容も設定も違うからね。
「やるんだ、やるんだ、やるんだもん~!」
柚月、みんなが見てる前で、3年生が地団太踏んでる姿はみっともないよ。
さぁ、柚月さっさと帰った帰った。
「ゴメンなさい~、参りました~!」
またそれかよ~。
じゃぁ、仕方が無いからいても良いけど、柚月は目隠しして立っててね。
「それじゃ、意味ないだろ~!」
まったくいちいち我儘だなぁ……。
「じゃぁ、柚月はパシリでよくね? って事で焼きそばパン買って来て」
悠梨が言うと
「私はガーリックフランス」
「私はあんドーナツね」
と結衣と優子が続いた。
じゃぁ、私は、明太フランスね。
「覚えてろー!」
と柚月は言って去っていったが、直後にみんなのリクエストを小声で復唱していた。
「どうするー?」
悠梨が柚月の姿が見えなくなってから言った。
まぁ、戻って来るのを待ってから始めるとしますか、柚月が戻って来た時に作業が佳境に差し掛かってたり、終わっちゃったりしてたら、柚月の事だから泣くかもしれないし。
「まったく、高3にもなって、平気で人前で泣くんじゃないよなー」
結衣、それだと足らないよ。
あいつは人前で泣く上に、それもくだらない内容で泣くから始末に負えないんだよ。
去年の夏休みだってさ、クレープ屋さんに行って限定メニュー頼んだ時も、私、優子、悠梨、結衣、柚月の順番で並んだら、結衣の所で限定数売り切れちゃって、そしたらアイツ、その場で泣き出しちゃって、最悪だったじゃん。
「あー、そんな事あったなー」
でしょ、悠梨。
柚月もそろそろそういうところ、大人にならないといけないんだけどなぁ……。
まぁいいや、取り敢えずアイツが戻って来るまで軽くおさらいしておくね。
私は説明書を広げると、みんなに大体の流れを説明した。
「まぁ、そんなに難しくなさそうだね」
「山場は2ヶ所かな?」
優子と結衣が、説明書と現物を見てつぶやいた。
そうなんだ。その2ヶ所なんだよね。
HIDと、R32のハロゲンとではどう違うのかを確かめたかったんだ。
今って、夜出歩かないから、バイト帰りくらいしか暗い時間帯に乗る事は無いんだけど、どこまで違うのかは知っておきたいと思ったんだ。
昼間の柚月の話なんかを聞くと、明るさと雪が解ける以外のメリットはなさそうで、LEDライトの普及で、これからの時代には淘汰されていってしまう、まるでMDのような位置づけにしか感じられなかったんだ。
そうなると、苦労してつける価値があるのかと思って、まずはそのメリットの明るさがどの程度なのかを見て、つけるか、柚月にあげちゃうかを考えようと思ったんだよ。
ちなみに、バルブ形状がH3用だから、結衣や優子の後期型は、バルブ形状が変わっていてつけられないんだって。
ぶっちゃけ、バルブを交換した時に、かなり明るくなって感動した記憶が今もハッキリ残ってるから、正直、あまり変わらないんじゃね? と思うんだよ。
だったらHIDをわざわざつけるより、そこを飛ばしてLEDにステップアップしちゃった方が、無駄な動きが無いよね……。
これから寒くなるし、もし作業面倒だったら嫌だし……。
まずは自分のR32に乗って暗がりに向かってライトをつけてみる。
ぱぁっと、明るい黄色の光が目の前に広がって、最初の純正バルブを知ってる身にとっては、充分に明るかった。
ほら、充分だよ。
これだけ明るければ、HIDキットなんて必要ないでしょ、これは柚月にあげるので決定~。
だけど、タダであげるのは癪だから、いくらにしようかな~なんて思いながらエルグランドの運転席に乗り込んだ。
お父さんのエルグランドも、仮免取ったばかりの頃の練習と、燈梨の引っ越しの手伝いに行った時くらいしか乗ったことが無く、その両方共が明るい時間帯だったから、ライトの明るさなんて分からないんだよね。
それまではいつも2列目のシートに乗って寝てたりしてたからさ、小学生の頃から乗ってるけどさ、分からないんだよね。
この車はキーを挿すんじゃなくて、R32ならキーシリンダーがある位置にあるレバーみたいのを掴んで、キーと同じようにひねるとエンジンがかかるんだ。
しかも、ライトがオートになってるから、それと同時にライトが蛍光灯みたいにパチッと起動してから、じんわりと明るさを増していく感じで点灯した。
お……おおぉ……ナニコレ?
真っ白な鋭い光が、周り中を包みこんでメチャクチャに明るいんだけど……。
R32のライトが、スマホのライトで暗闇を照らしてる感じだとしたら、エルグランドのライトは、投光器で周辺を照らしてる感じなんだよ。
うわっ、なんかレベルが違うよ。
ためしにライトをオフにしてから、R32に戻ってライトを点けるんだけど、なんで? さっきまであんなに明るく感じてたR32のライトが、まるで消えてるみたいなんだけど。
あまりの違いに、ライトスイッチをもう1回確認して、スモールの位置じゃないよねって確認しちゃったよ。
う~ん……ここまで違うなら、つけておいた方が良いんじゃないかなぁ……。だってLEDのライト買う余裕なんてないし、兄貴の返信にも当時5万円くらいしたものだってあったしね。
じゃぁ、取り付けるとして、どういうところが問題になるのか、軽くネットで調べておこう。
ふむふむ、取り付け自体は純正のコネクターの所にキットのコネクターを繋いで、純正のライト配線の先端の所にHIDが割り込んでくるようなイメージでいれば良いんだね。
だから、難しい配線の引き直しだとか、コネクターの変換だとかも無くて、ポン付けできる訳だね。
よし、これならちょちょっとできるね。
◇◆◇◆◇
という事で、翌日みんなでHIDの取り付けをやってみる事にしたよ。
なんか思うんだけどさ、車に乗るようになって半年強の間で、私ってホントに車に毒された気がするんだよね。
「まぁまぁ~、いいじゃない~」
良くないよ柚月。大体そうなった大半の理由はアンタにあるんだからね。
私はね、放課後に軍手しながら車に向き合う学生生活なんてありえないと思ってるんだからね。
「でも~今日はマイの作業だからね~、文句あるなら私帰るし~」
正論ぶりやがって、お前はどこぞの動画投稿者かっての?
そもそも、今日の作業に関しては、柚月は後学のためにとか言って勝手についてきたんじゃなかったか?
「そ・そうだっけ~?」
誤魔化そうってのか? そうはいかないんだぞ。
じゃぁ、柚月さんのみ、不快指数が上がったそうなので、お帰りください~。さて、柚月以外のみんな、頑張ろうね。
「待てよ~!」
なんだよ柚月。
私の方針に文句があるんだろ? だから無理にこの場にいる必要なんてないよ。じゃぁ、みんな、4人で役割分担を決めようね。まずメインの作業は私がやるから……
「私もやる~」
え~、別にいいよ。
柚月がいなくても地球は回ってるし、作業も効率よくできるからさ。
「私もやるんだ~!」
え~、だって柚月、さっき帰るって言ったじゃん。
早く家に帰って、あきれた刑事でも見てればいいじゃん。でもって、Vシネマで出た『あ・キレた刑事』見ちゃダメだよ。内容も設定も違うからね。
「やるんだ、やるんだ、やるんだもん~!」
柚月、みんなが見てる前で、3年生が地団太踏んでる姿はみっともないよ。
さぁ、柚月さっさと帰った帰った。
「ゴメンなさい~、参りました~!」
またそれかよ~。
じゃぁ、仕方が無いからいても良いけど、柚月は目隠しして立っててね。
「それじゃ、意味ないだろ~!」
まったくいちいち我儘だなぁ……。
「じゃぁ、柚月はパシリでよくね? って事で焼きそばパン買って来て」
悠梨が言うと
「私はガーリックフランス」
「私はあんドーナツね」
と結衣と優子が続いた。
じゃぁ、私は、明太フランスね。
「覚えてろー!」
と柚月は言って去っていったが、直後にみんなのリクエストを小声で復唱していた。
「どうするー?」
悠梨が柚月の姿が見えなくなってから言った。
まぁ、戻って来るのを待ってから始めるとしますか、柚月が戻って来た時に作業が佳境に差し掛かってたり、終わっちゃったりしてたら、柚月の事だから泣くかもしれないし。
「まったく、高3にもなって、平気で人前で泣くんじゃないよなー」
結衣、それだと足らないよ。
あいつは人前で泣く上に、それもくだらない内容で泣くから始末に負えないんだよ。
去年の夏休みだってさ、クレープ屋さんに行って限定メニュー頼んだ時も、私、優子、悠梨、結衣、柚月の順番で並んだら、結衣の所で限定数売り切れちゃって、そしたらアイツ、その場で泣き出しちゃって、最悪だったじゃん。
「あー、そんな事あったなー」
でしょ、悠梨。
柚月もそろそろそういうところ、大人にならないといけないんだけどなぁ……。
まぁいいや、取り敢えずアイツが戻って来るまで軽くおさらいしておくね。
私は説明書を広げると、みんなに大体の流れを説明した。
「まぁ、そんなに難しくなさそうだね」
「山場は2ヶ所かな?」
優子と結衣が、説明書と現物を見てつぶやいた。
そうなんだ。その2ヶ所なんだよね。
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