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冬は総括
ドア枚数と抱き癖
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さてと、これで最後の難関である車への取り付けだよ。
水野が前もって、こっちに運んでくれていたチェイサーをガレージに入れて、作業開始だね。
チェイサーみたいな4ドアの場合は、2ドア車よりちょっと面倒なんだよね。
「なんでですか?」
紗綾ちゃんからは疑問が出たが、燈梨は分かってるみたいだね。
さすが燈梨は、車に乗ってるから、この辺の事は分かるよね。
くそぅ、燈梨を抱きしめちゃおうと思ったら、すぐ後ろにななみんがいるじゃないか。まったく、ななみんめ邪魔だなぁ……この間掘って貰った穴に埋めちゃおうかなぁ。
その理由を……取り敢えずななみんに答えて貰おう!
「え!? 自分っスか? 分からないっス」
なんだよ、ななみん、分からないくせに、燈梨の後ろなんかに隠れてるんじゃないよ。
分からない事は率先して前に出てきて聞く! 命に係わる作業では、常識だよぉ。
って、ななみんにしっかり復讐できたぞ。
フフフ、ななみんめ、みんなの前でお説教されて、すっかりヘコんでるぞ。よしよし、あとでじっくり燈梨を抱きしめに行こうっと。
紗綾ちゃん。正解はドアの開口部の大きさと、ピラーの位置によって、作業スペースが狭くなる事なんだよ。
試しに、そこにあるタイプMなんかを見てみてね。あれって、ドアの開口部が、シートの後端よりも後ろまで開いてるでしょ。
「そう言われてみれば……」
ガレージ外にあるタイプMのドアを開けて中を見た沙耶ちゃんが感心したように言ったよ。
だから、シートのボルトを外したりする時のアクセスもしやすいし、外した後のシートを運び出したり、シートを入れるのも楽なんだよね。
「マイ先輩の言う事は、勉強になります」
いやぁ~、それほどの事でもないんだよ。
でもって、もっと褒めてくれてもいいんだよぉ~。
「マイ名誉部長、最高です!」
「名誉部長に抱かれたいです!」
若菜ちゃんと七菜葉ちゃんったら、ホントに嬉しい事、言うねぇ~。
じゃぁ、七菜葉ちゃん、あとでね。
「ナナっち~、ダメだ~、マイの毒牙にかかっちゃ~!」
すっかり存在感の無い柚月じゃないか、私が後輩にモテるからって、僻むんじゃないよ。
さて、作業に入ろうね。
まずはシートを外そうね。
シートの下4ヶ所のボルトを外すんだけど、その位置は、さっきレールの取り付けをやったから、なんとなく分かるでしょ。
「ハイ!」
いい返事だね。
なので、前側か後ろ側か、どちらを先に外すかを決めたら、逆の方へとシートのスライドを全開にしてスペースを稼ぐんだ……って、チェイサーはパワーシートで動きが遅いなぁ。
2人がかりで後ろから外してるんだけど、ただでもピラーがすぐ脇にあって狭いスペースなのに、ロールバーまで入ってるから、作業性極悪なんだよね。
ラチェットレンチを使ってはいるけど、回すスペースが狭いからね。
そして、今度は前側の作業に入るけど、4ドアの場合は、このアクセス性の悪さも、交換作業の足を引っ張るんだよね。
今回は、みんなで作業してるから良いんだけど、例えばこれが自分の車で、1人で作業してると考えてみてよ。
後ろの作業が終わって、前に移動する時に、2ドア車だと全開になってるドアから、さっと前に移動するだけで良いんだけど、4ドア車だと、後ろのドアから出て、後ろのドアを避けてから、狭い開口部の前へと入って行く……って、言ってる以上に、凄く大変なんだから。
「確かに」
若菜ちゃん達も、分かったみたいだね。
1人で作業してると、この4ドア車のシート交換時のアクセスの悪さが、身に染みて分かるんだよ。
ボルトやナットが、あっち側に転がっちゃったとか、配線のカプラーがあっち側だったとか、なった場合に、いちいち車から降りて大回りして移動しなきゃならないんだからさ。
それじゃぁ、ボルトを外したら次は……って、まだ外に持ち出そうとしちゃダメだよ……って、あぁ、やっちゃったよ。
シートには、シートベルトの警告灯の配線がついてるから、ボルトを外しただけだと、まだシートは取れないからね。しかも、そのシートはパワーシートなんだから、その配線もあるんだよ。
構造を理解しないで作業すると、とっても危ないからね。
もうちょっと勢いよく引っ張ってたら、恐らくシート持ち上げた娘が転んでシートの下敷きになっちゃったところだよ。
よし、配線は外したね。
じゃぁ、重たいけど慎重に持ち出してね。
ここでも4ドアのデメリットが発揮されちゃうんだよ。
ほら、開口部が狭いから、外したシートを抱えて出るのに、物凄く難儀してるでしょ……って、レールを開口部の下にぶつけて傷つけちゃったよ。
初心者のシート交換あるあるなんだけどね。
傷のタッチアップは、手の空いてる娘達でやって貰うとして、遂に入れ替え作業に入れるよ。
まずは、シートベルトのバックルをシートから外すんだけど、このボルトに挟まってるワッシャーの位置関係をしっかり覚えておくんだよ。
この順番通りに、シートレールに付け替えていくからね。
ななみん、賢いねぇ。
画像に撮っておくのが良いと思うよ。
そして、位置関係を覚えたら、レールに付属してる、頭が平らな特殊なネジで、バックルをレールに固定するよ。
「そうか、ここでワッシャーの位置関係が関わってくるんですね」
紗綾ちゃん、正解。
元のボルトはこのレールには使えないんだよ。
だからワッシャーを外して、シートに戻しておこうね。
よし、バックルをナットでしっかり留めたら、ちゃんとバックルが節度持って動くかを試すんだよ。
ぎちぎちで全く動かないと、体格の違う人が乗った時に調整が効かないし、ゆるゆるだと、いざって時に動いてしまって危険だからね。そのための特殊ワッシャーだったんだよ。
「なるほど、そういう事だったんだぁ」
そうなんだよ、燈梨。
これで、分かって貰えたかな?
よし、そうしたらあとは取り付けだけだよ。
みんなで今度は取り付けてみよう。
「取り付け完了しましたー」
それじゃぁ、みんなで早速テスト走行を兼ねて、どう変わったのかを体感してみてね。
え? 最初の走行は、今回のアドバイザーであり、名誉部長の私にして欲しいって?
良いの? じゃぁ、燈梨と一緒にちょっと行ってきちゃうね。
走った感じは、凄く変わったよ。
やっぱりお尻が地面に近づいたっていうのと、レール自体がしっかりしてるってのもあってなのか、凄く車の動きがダイレクトに伝わって来て、車自体の重心が下がったのかって錯覚するくらい、車の動きが読めるようになったんだよね。
しかも、短時間だけでも、今までの座布団を何枚も重ね敷きしてたみたいな、ぶよぶよのシートからだと、凄く座りやすくなったんだ。
座った感じは硬めだけど、適度な硬さで弾力性もあるから、疲れないし、なにより、不快な振りかえしや、横揺れが無くなって、より運転に集中できるよね。
1、2年生の走行も見てみたけど、自分の車の時にも思っていた事を改めて実感したよ。本なんか読むと、シートの交換はサスペンションチューニングだ……なんて事が書いてあるんだよ。
私はああいう本の書くことの大半を、誇張とフェイクの塊だと思って信じてなかったけど、こと、このことに関しては、間違ってないんだなぁって思ったんだ。
走行の終わったみんなが、凄く変わったって喜んでる姿を見て、改めて、この部のある意義を感じちゃったよ。
きっと、私も最初にタント乗ってたら、こうはならなかったんだろうなぁ……そう思うと、なんか、あのスカイラインに乗ってみて、良かったのかなぁ……って、思えるようになってきちゃったよ。
でもって、それがベストだとは思ってないんだからね。
次の車検が来たら、絶対にSUVあたりにするんだからね。
あ、思い出した。
作業終わったから、燈梨と七菜葉ちゃんを抱きしめに行かなくっちゃぁ。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『シート交換の意味が分かった気がするっ!』など、少しでも!と思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
今回をもって、部活動編は一応、終了となります。
部活動に関しては、新部長となった鷹宮燈梨を主人公とした新連載を準備中です。
今後のこの話は、基本5人を中心としたR32との話になる予定です。
お楽しみに。
水野が前もって、こっちに運んでくれていたチェイサーをガレージに入れて、作業開始だね。
チェイサーみたいな4ドアの場合は、2ドア車よりちょっと面倒なんだよね。
「なんでですか?」
紗綾ちゃんからは疑問が出たが、燈梨は分かってるみたいだね。
さすが燈梨は、車に乗ってるから、この辺の事は分かるよね。
くそぅ、燈梨を抱きしめちゃおうと思ったら、すぐ後ろにななみんがいるじゃないか。まったく、ななみんめ邪魔だなぁ……この間掘って貰った穴に埋めちゃおうかなぁ。
その理由を……取り敢えずななみんに答えて貰おう!
「え!? 自分っスか? 分からないっス」
なんだよ、ななみん、分からないくせに、燈梨の後ろなんかに隠れてるんじゃないよ。
分からない事は率先して前に出てきて聞く! 命に係わる作業では、常識だよぉ。
って、ななみんにしっかり復讐できたぞ。
フフフ、ななみんめ、みんなの前でお説教されて、すっかりヘコんでるぞ。よしよし、あとでじっくり燈梨を抱きしめに行こうっと。
紗綾ちゃん。正解はドアの開口部の大きさと、ピラーの位置によって、作業スペースが狭くなる事なんだよ。
試しに、そこにあるタイプMなんかを見てみてね。あれって、ドアの開口部が、シートの後端よりも後ろまで開いてるでしょ。
「そう言われてみれば……」
ガレージ外にあるタイプMのドアを開けて中を見た沙耶ちゃんが感心したように言ったよ。
だから、シートのボルトを外したりする時のアクセスもしやすいし、外した後のシートを運び出したり、シートを入れるのも楽なんだよね。
「マイ先輩の言う事は、勉強になります」
いやぁ~、それほどの事でもないんだよ。
でもって、もっと褒めてくれてもいいんだよぉ~。
「マイ名誉部長、最高です!」
「名誉部長に抱かれたいです!」
若菜ちゃんと七菜葉ちゃんったら、ホントに嬉しい事、言うねぇ~。
じゃぁ、七菜葉ちゃん、あとでね。
「ナナっち~、ダメだ~、マイの毒牙にかかっちゃ~!」
すっかり存在感の無い柚月じゃないか、私が後輩にモテるからって、僻むんじゃないよ。
さて、作業に入ろうね。
まずはシートを外そうね。
シートの下4ヶ所のボルトを外すんだけど、その位置は、さっきレールの取り付けをやったから、なんとなく分かるでしょ。
「ハイ!」
いい返事だね。
なので、前側か後ろ側か、どちらを先に外すかを決めたら、逆の方へとシートのスライドを全開にしてスペースを稼ぐんだ……って、チェイサーはパワーシートで動きが遅いなぁ。
2人がかりで後ろから外してるんだけど、ただでもピラーがすぐ脇にあって狭いスペースなのに、ロールバーまで入ってるから、作業性極悪なんだよね。
ラチェットレンチを使ってはいるけど、回すスペースが狭いからね。
そして、今度は前側の作業に入るけど、4ドアの場合は、このアクセス性の悪さも、交換作業の足を引っ張るんだよね。
今回は、みんなで作業してるから良いんだけど、例えばこれが自分の車で、1人で作業してると考えてみてよ。
後ろの作業が終わって、前に移動する時に、2ドア車だと全開になってるドアから、さっと前に移動するだけで良いんだけど、4ドア車だと、後ろのドアから出て、後ろのドアを避けてから、狭い開口部の前へと入って行く……って、言ってる以上に、凄く大変なんだから。
「確かに」
若菜ちゃん達も、分かったみたいだね。
1人で作業してると、この4ドア車のシート交換時のアクセスの悪さが、身に染みて分かるんだよ。
ボルトやナットが、あっち側に転がっちゃったとか、配線のカプラーがあっち側だったとか、なった場合に、いちいち車から降りて大回りして移動しなきゃならないんだからさ。
それじゃぁ、ボルトを外したら次は……って、まだ外に持ち出そうとしちゃダメだよ……って、あぁ、やっちゃったよ。
シートには、シートベルトの警告灯の配線がついてるから、ボルトを外しただけだと、まだシートは取れないからね。しかも、そのシートはパワーシートなんだから、その配線もあるんだよ。
構造を理解しないで作業すると、とっても危ないからね。
もうちょっと勢いよく引っ張ってたら、恐らくシート持ち上げた娘が転んでシートの下敷きになっちゃったところだよ。
よし、配線は外したね。
じゃぁ、重たいけど慎重に持ち出してね。
ここでも4ドアのデメリットが発揮されちゃうんだよ。
ほら、開口部が狭いから、外したシートを抱えて出るのに、物凄く難儀してるでしょ……って、レールを開口部の下にぶつけて傷つけちゃったよ。
初心者のシート交換あるあるなんだけどね。
傷のタッチアップは、手の空いてる娘達でやって貰うとして、遂に入れ替え作業に入れるよ。
まずは、シートベルトのバックルをシートから外すんだけど、このボルトに挟まってるワッシャーの位置関係をしっかり覚えておくんだよ。
この順番通りに、シートレールに付け替えていくからね。
ななみん、賢いねぇ。
画像に撮っておくのが良いと思うよ。
そして、位置関係を覚えたら、レールに付属してる、頭が平らな特殊なネジで、バックルをレールに固定するよ。
「そうか、ここでワッシャーの位置関係が関わってくるんですね」
紗綾ちゃん、正解。
元のボルトはこのレールには使えないんだよ。
だからワッシャーを外して、シートに戻しておこうね。
よし、バックルをナットでしっかり留めたら、ちゃんとバックルが節度持って動くかを試すんだよ。
ぎちぎちで全く動かないと、体格の違う人が乗った時に調整が効かないし、ゆるゆるだと、いざって時に動いてしまって危険だからね。そのための特殊ワッシャーだったんだよ。
「なるほど、そういう事だったんだぁ」
そうなんだよ、燈梨。
これで、分かって貰えたかな?
よし、そうしたらあとは取り付けだけだよ。
みんなで今度は取り付けてみよう。
「取り付け完了しましたー」
それじゃぁ、みんなで早速テスト走行を兼ねて、どう変わったのかを体感してみてね。
え? 最初の走行は、今回のアドバイザーであり、名誉部長の私にして欲しいって?
良いの? じゃぁ、燈梨と一緒にちょっと行ってきちゃうね。
走った感じは、凄く変わったよ。
やっぱりお尻が地面に近づいたっていうのと、レール自体がしっかりしてるってのもあってなのか、凄く車の動きがダイレクトに伝わって来て、車自体の重心が下がったのかって錯覚するくらい、車の動きが読めるようになったんだよね。
しかも、短時間だけでも、今までの座布団を何枚も重ね敷きしてたみたいな、ぶよぶよのシートからだと、凄く座りやすくなったんだ。
座った感じは硬めだけど、適度な硬さで弾力性もあるから、疲れないし、なにより、不快な振りかえしや、横揺れが無くなって、より運転に集中できるよね。
1、2年生の走行も見てみたけど、自分の車の時にも思っていた事を改めて実感したよ。本なんか読むと、シートの交換はサスペンションチューニングだ……なんて事が書いてあるんだよ。
私はああいう本の書くことの大半を、誇張とフェイクの塊だと思って信じてなかったけど、こと、このことに関しては、間違ってないんだなぁって思ったんだ。
走行の終わったみんなが、凄く変わったって喜んでる姿を見て、改めて、この部のある意義を感じちゃったよ。
きっと、私も最初にタント乗ってたら、こうはならなかったんだろうなぁ……そう思うと、なんか、あのスカイラインに乗ってみて、良かったのかなぁ……って、思えるようになってきちゃったよ。
でもって、それがベストだとは思ってないんだからね。
次の車検が来たら、絶対にSUVあたりにするんだからね。
あ、思い出した。
作業終わったから、燈梨と七菜葉ちゃんを抱きしめに行かなくっちゃぁ。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『シート交換の意味が分かった気がするっ!』など、少しでも!と思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
今回をもって、部活動編は一応、終了となります。
部活動に関しては、新部長となった鷹宮燈梨を主人公とした新連載を準備中です。
今後のこの話は、基本5人を中心としたR32との話になる予定です。
お楽しみに。
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