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夏は休み

左胸と聞き比べ

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 ところで、悠梨はカー用品店で何を買うの?
 特に買う訳じゃないんだけど、ナビとかが、幾らくらいして、どうな機能があるのかを調べて、試してみたいって?
 あと、ここに併設された中古パーツ屋さんも覗いて、何か良い物があれば良いなぁ~くらいで見ておきたいんだって?

 「ホラ、折角こういう車に乗ってるクルマ好きなんだしさ、目的はなくとも、こういうところを見て回りたいって、いう欲求はあるじゃん?」

 そういうものかねぇ? それに、遂に悠梨の口から『クルマ好き』なんてフレーズが出てくるとは、世も末だねぇ~。
 だってさ、私と悠梨だけは、あとの3匹のクルマバカ共の中で、唯一の良識を持ち合わせていたインテリジェンスだった訳じゃん?

 悠梨だって、つい3ヶ月前まで、最初はお母さんのフォレスター乗ったら、次もフォレスターか、RAV4かって言ってたじゃん。
 一体何に毒されちゃったんだよぉ~。え? 私だって? 私は、別に好きであの車に乗ってる訳じゃないし、次は違う車にするんだからさ。

 じゃぁ、次はなんの車にするのかって?
 確かに、それは考えた事ないんだけど、前までは、お金かからなくて、広くて楽だから、タントか、N-BOXって思ってたけど、さすがに、スカイラインに乗っちゃったら、軽には乗れないなぁ……。
 やっぱりSUVかな? キックスか、RAV4かな。

 「うむむむむーー!!」

 うるさい、柚月! 黙ってろってのが分からない?
 ちなみに、そのガムテ剥がしたら、2枚貼るからな。今日1日剥がしたらダメだから~。
 そう言って、ニヤリと笑いながら柚月を見ると

 「んんんーー!」

 柚月は目を瞑って首を左右に振って唸っていた。
 コラ、柚月、大声出すと、マスクからガムテがはみ出るだろ、静かにしてろ!

 最初に、ナビのコーナーを見たんだけど、やっぱり高いよね。
 安いモデルだと、ディスクドライブが無いからDVD再生ができないし、CD録音もできないから、折角ナビ買ったのに、これだとナビしか使えないよね。
 その後も、あれこれ見回ってみたけど、悠梨的に満足がいくのは、結構お高めのモデルになるから、やっぱり今すぐは無理かなって、話になったんだよ。ただ、悠梨は、折角車買ったし、旅行とか行きたいから、貯金をしつつ、新しいモデルに切り替わる寸前を狙おうって話になったんだ。

 ねぇ、ポータブルとかって、どうなの?

 「アレだったら、スマホのアプリで良くね?」

 悠梨が言うには、ポータブルは、GPSだけしか取っていないから、長いトンネルの中で、速度感を見失いやすい上、高速の側道を走っていても、高速を走ってると勘違いされやすいし、その上で、バージョンアップも出来ない機種が多いから、スマホアプリで充分だ、というのだ。

 なるほどね、私には、ナビはまだ必要ないから検討してないけど、いざ、考えるとなると、色々調べるのかな?

 ここが、ホーンのコーナーだね。
 価格も1,000円からあるから、予算に応じて選べそうだよ。
 良かった、さすがに、3万円とか言われたりしたら手が出ないしね、
 具体的な違いとなると、よく分からないねぇ。ネットとかで検索していくしかないねぇ。
 ええ……っと、端から調べて行こうかな。

 「うううーー!」

 うるさいな、柚月、声を出すなって言ってるだろ。

 「うう~ううう~うう~!」

 えぇーい、柚月め、お前は消防車か!
 柚月、いいか? 訊かれたこと以外喋ったら、左のおっぱいは消えてなくなるぞ!
 左胸を掴みながら言ったら、柚月は高速でコクコクと頷いたので、喋れるようにした。

 「予算だけじゃなくて~、実際の音を聞き比べてから選ぶんだよ~」

 でもって、実際の音なんてどうやって聞くのさ。車に取り付けなければ、音なんて鳴らないじゃん。

 「ここだって~」

 ホーン売場の端っこの方に、ボタンがいくつかついた箱があった。
 その透明な箱の中には、いくつかのホーンがあって、それぞれの番号が書かれたシールが貼ってあった。

 そして、ボタンにも、同じ番号が書いてあった。
 但し、ボタンの付近には『周囲のお客様に配慮の上でご利用ください』って、書かれた札があるよ。

 よし、まずは1番から押してみよう。
 悠梨が、向こうには人がいないって合図してるよ、よし、今がチャンスだね。
 カチッ
 “パアアァァァーー”

 おぉっ、ビックリしたぁ!
 心臓が止まるかと思ったよぉ。
 車のホーンって、こんなにも大きい音が出るんだね。あ、一番端っこに『純正』てボタンもあるぞ。押してみよう。
 “ビイィィィィーー”

 結構、純正でも大きな音だねぇ、社外品だから大きいって訳でもないんだね。

 「車検の中に、基準があるんだよ~」

 そうなの?  一定以上の音量で、且つ一定以下の音量に収まらないと、違反になるって? そう言われてみると、部車のシルビアの車検の時に、クラクションを鳴らしてたね。

 なんか、色々鳴らしているうちに、耳が慣れてきたのかなぁ、似たような音の中でも、音の違いが分かるような感じがしてきたよ。
 値段が安いホーンの音は、なんか、似たような感じでも、音がキンキン響くような感じがするのに対して、価格がそこそこするやつは、音の角が取れていて、丸っこい音がするね。
 やっぱり、音の違いが、価格の違いって事になるのかな?

 「そればかりじゃ、ないけどね~」

 そうなの? 柚月の話だと、作りの違いや、素材の違いもあるから、その違いで音の響き方が違ってくるのかもね。
 どうなんだろう? もう、みんな同じ音のように聞こえるけど、こうなったら、いざ、価格重視で買っちゃおうかな?

 「ちょ~っと、待ったぁ~」

 うわっ、なんだよ! 

 「そんな適当に決めちゃ~、ダメだよぉ~。きっと、後悔するよぉ~」 

 なんで? 他にも色々な音色のホーンがあるから、それをじっくりと見極めてから選んでも遅くないって?
 でもって、どこで選ぶんだよぉ、ここにあるのは、こんなもんなんだぞぉ、まさか、東京とか言うのかぁ? これだけの物を買いに、そんなところまで行ってる余裕はないぞぉ。

 「いや、この近くでも、じっくり比べられる所が、あるじゃん~」

 そうなの柚月? この近くでもそんなに見比べられる所、あるの? それじゃぁ、この後、行ってみようか?

 「いや、今日いきなりは、アレだから~。明日にしようよ~」

 それじゃぁ、また明日にしようか。
 悠梨はどうする? え? 明日はバイトだって? じゃぁ、仕方ないなぁ、優子でも誘ってみようっと。

 「それじゃ~、もう帰ろうかぁ~!」
 
 そうだね。
 ところで、柚月、あれだけ約束したのに、訊かれた以外の事、喋ったよね。

 「えっ!?」

 あぁ~、残念だなぁ~。
 これで、柚月の左のおっぱいは、無くなっちゃうのかぁ~。
 手をワキワキさせながら、柚月にゆっくりと近づいて行くと、瞬間、柚月はダッシュで外へと飛び出して行った。

 待てぇ~、柚月!

 「イヤだぁ~!」

──────────────────────────────────────
 ■あとがき■

 ★、♥評価、多数のブックマーク頂き、大変感謝です。
 毎回、創作の励みになりますので、今後も、よろしくお願いします。

 次回は
 柚月に提案された聞き比べに舞華が向かったのは……。

 お楽しみに。
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