女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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夏は休み

かき氷と山道

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 高速を降りたので、あとは山を上れば遂に街に到着するよ。
 楽しみにしていて、そこまでの道のりは長かったのに、いざ始まると、あっという間だったね、海。
 今回は、初日に悠梨がバッテリー上がりを起こした上に、そのバッテリーが特殊サイズでひと悶着、そして、昨日は悠梨の水着が流されて、これまたひと悶着あったけど、それ以外は大したアクシデントもなく過ごせたね。

 あ、そうだ。もうひと悶着あったね。
 だから、私の車に4人も乗ってるんだった。

 朝、チェックアウトを済ませて、海に行ってから帰ろうと思っていた私たちのところに、昨日の料理長が、ホテルの名前の書かれたキャラバンに乗って来て、悠梨に、ぜひ使って欲しいと、ホイールや、サブコン、タービンと、純正のエアロパーツ一式を持ってきたのだった。

 訊くと料理長のR33は昨年、遂に天に召されたそうだが、新車からずっと乗ってきたために思い入れがあり、部品類は、いつか誰かに役立てられるように……と、持っていたそうだ。
 そんな中で、悠梨のR33を見て、これからR33に乗る若い人の役に立てて欲しいと思って、持ってきたそうだ。

 そして、私らはずっと訊きそびれていた事があったので、料理長の今の車を訊いてみると、ちょっと照れくさそうに答えてくれたのは

 「R33はR33でも、BCNR33、つまりはGT-Rを買ったんだ」

 県内第1号で買ったGTS25tタイプMだったが、凄く気になる存在として、GT-Rがあったそうだ。
 そして、その年、東京モーターショーに出品されていたR33のGT-Rのプロトタイプを見て、あまりのカッコ悪さと、今一つの内容に安心したそうだ。これで、GTS25tを選んだ自分が正しいと、胸を張って言えると。

 しかし、その1年3ヶ月後にデビューしたR33のGT-Rを見て愕然としてしまったそうだ。デザインが直されて、カッコ良くなっていた事と、内容の進化ぶりに、自分のGTS25tが一瞬ながら霞んでかすんで見えてしまったそうだ。

 去年、60万キロを走破したのを機に遂に廃車した際に、もう1度チャンスがあるなら……と思って、GT-Rを探してみたところ、身近から手放す人が出たので、最後のチャンスだと思って買ったそうだ。

 「俺は、頑固だからよ、R33しか合わないんだよ」

 と、照れ笑いを浮かべる料理長を見て、何故かとてもほっこりすると同時に、これもスカイラインのなせる業かな? と思っちゃったよ。
 車が人と人を結び付けてくれるって、いうのかな? そういうの。

 エアロパーツは載りきらないので、送ってくれることになったんだけど、そのお陰で、悠梨の車がR33の部品で、人が乗るスペースが無くなっちゃってさ、結果、私の車が満員に近い状態になっちゃったって訳。

 それで、ホテルを出た後は、午前いっぱいまで、最後の海を堪能《たんのう》してきたって訳。最後って言っても、人生最後な訳じゃなくて、今回の旅での最後って事で、泳いだり、イルカボートに乗ったり、柚月を沈めたり、結衣を埋めたり……と、色々楽しんだんだよ。
 まぁ、悠梨はさ、昨日、あんなことがあったばかりだから、さすがに大人しくしてたけどね。

 そして、最後のお昼は、イカ焼き、カレーライスときたら、これしかないでしょって事で、焼きそばにしたんだ。
 やっぱり美味しかったよぉ。この3日間に食べたものは、ことごとく美味しく感じられたよ。
 柚月は、このレシピを調べるんだって、言ってたけど、真面目に調べるだけ損だし、調べたところで、家に帰ってから作っても、イマイチ美味しくないか、不味いとしか思わないから。
 大体、柚月は昨日、自分で言っただろうが、視覚は感覚の中でも影響が大きいから、見た目だけで美味しく感じることは、決して科学的根拠が無い訳じゃないって。

 それから、これもやってみたかった、海でのかき氷も試してみたよ。
 うん、海にいると、本当に何でも美味しく感じるね。
 思わず、おかわりしたくなっちゃうけど、帰り道でお腹壊しちゃったら、大変だからね。1杯でやめておいたけど。
 柚月と悠梨がさ、悪ノリして4杯も食べるからさ、途中でお腹壊して、何度もトイレに寄るハメになっちゃったんだよ。

 だから、言わんこっちゃないんだよ! 最終日は半日車なんだからね! そこで、お腹壊したらみんなの迷惑だって、なんで考えられないかね!

 「マイ~、うるさいよぉ~。お腹に響くよぉ~」

 なんだと柚月! 反省の色もなく、私にうるさいだとぉ! 大体、頭痛ならともかく、腹痛に対して大声が響くわけないだろ! この野郎~!

 「マイ、やめとこう。コイツに言っても無駄だから……」

 なに? 優子のその諦め顔は、大体優子が甘やかすからねぇ……。
 すると、優子は私を制して、柚月の方へと振り返ると

 「ユズ、そんな態度だと、次のトイレで置いて帰るからね。今回、海に来てから何回怒られてるのよ! 初日だって裸で縛られてたくせに、全然反省してないじゃん! 私はね、見知らぬ土地に来てまで怒られてるユズ見て、本気で恥ずかしかったんだからね!」

 と、一喝した。
 すると、柚月が

 「縛られたのは、マイとユイが、サディストだからだもん~! 変態縛りにされて、監禁されたんだもん~、私は被害者だもん~!」

 と喚き出したわめきだした
 すると、優子は冷たい目で柚月を見下ろすと

 「そうやって、ああ言えば、こう言うクズのユズだから、ロクな大人になれないんだよ!」

 と、静かに言うと、柚月はジタバタしながら

 「ちゃんと大人になってるもん~! なんだよ~! 優子のバカー!」

 と、喚き出した。

◇◆◇◆◇

 ようやく、車の中が収まったよ。
 あの後、柚月が喚くだけ喚いてから、泣いて謝りやがってさ、ホントに始末に負えないんだよ柚月はさ。
 だから、ロクな大人になれないんだっての!

 高速のパーキングでもさ、私らは、お土産も向こうで買っちゃったし、特に用もないから、車から降りないで、エアコンの風に当たってたらさ、柚月ったら、後ろの席でさ

 「置いてく気なんだー! いやだー! 降りないからー!」

 って、喚いて暴れて、降りようとしないんだよ。大体、柚月がトイレに行きたいから寄ってるのに、お前が降りなくてどうするんだよ!
 なんとか3人で引きずり降ろしたら、アイツさ、 夏休みで、家族連れがごった返すパーキングで、おもちゃ売り場で駄々こねてる子供みたいに、地面に寝転がって暴れやがってさ。
 みんなから指差されて笑われて、恥ずかしいったら、ありゃしないよ!

 挙句、優子を連れて行って、個室にまで一緒に連れて入ろうとするしさ、もう、なんなのアイツは。
 今度からさ、柚月は強制で車出させて、柚月は1人で1台でカウントしようよ。そうすればさ、アイツがアホな事しても、他の車に分乗して、私らは帰れるじゃん。

 よし、高速降りるよ。
 ここからは山道だからね、柚月は……。

 と言うと、後席の優子から

 「しーーっ!」

 と声がしたので、ミラーを見ると、柚月が寝ていた。
 よしっ! 起きてられるとまた腹が痛いとか、喚き出しそうだからな。急いで山道を上っちまおう。

 帰りの山道でも、このR32は結構なペースで上っていくんだけど、操舵感はしっかりしていて、とてもよくできているんだなぁって、思ったよ。
 実は、その時は、そこまで思ってなくて、この数ヶ月後に、このメンバーで、同じルートをアクアで走った時に思ったんだよ。同じ車なのに、全然違うなって……。

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