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病院
しおりを挟む病院に到着し、診察を受けたところ鼻が少し腫れていたため精密な検査を受けることになった。
もし鼻骨骨折をしていた場合、治療費が増えるため、静はしんだんけっかに緊張を覚えていたが特に以上はなく、一過性のものだという診断が出た。検査結果を聞き終えると待合室で待っていた宗介が静に駆け寄る。
「…大丈夫だった?」
「うん、大丈夫
なんの異常もないって」
「本当に?よかった…」
宗介は胸元を手で押さえて、椅子の背もたれに背を預けぐったりと座る。
「そんな心配することじゃないのに」
「心配になるよ
恋人だもん」
宗介は静の頬をそっと撫でる。今は恋人という言葉が静の胸をひどく痛めつけた。
その後、バイクで家の前まで送ってもらい家の中に入ろうとすると宗介が静を呼び止める。
「あのさ、言いたくないと思って聞かなかったけど、本当は何かあったんじゃないの?」
母親に行きたくもない海外で強制労働をする誘いを受けて、恋人だと思っていた人の気持ちは実は嘘だったと気づいた。
心体ともにとても疲れて、恋人が原因で心がえぐられるような感覚も味わった。
「なんにもない
まあ、鼻血がでてびっくりした1日ではあったけど
あと、そうくんに恥ずかしいところ見られてちょっと嫌だったかも」
静は無理に口元に笑みを浮かべる。
病院に着いた時からこのタイミングで別れの言葉を言おうと決めていたのに、中々言葉が出てこない。
気持ちがないとわかった時点で別れるべきなのに、宗介と別れることを決めてしまったら明日から生きていく希望がなくなってしまうような気がする。静の宗介に対する気持ちは不思議なほど冷めていなかった。
嘘でもいいから誰かに愛情を向けられたかった。
(俺がいなくなるその時まで偽の愛をくれればいいから)
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