君に不幸あれ

ぽぽ

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「このデブのせいで黒板見えねえわ
お前、よく後ろに座れるね?臭くない?」

「それに名前と顔が一致しなさすぎだよな
こんな豚みたいなやつが静とか」 

  
ギャハハと響き渡る汚い笑い声。
男子生徒たちに吐かれる容赦ない暴言。それに釣られて周りの連中もクスクスと笑う。

立木静たちきしずかはこんな状況でさえ反論の1つもいえない自分に憤りを感じて体を震わせた。
だが、そこで抵抗することもできずに、ただ、机に向かって顔を俯けることしかできない。


「おい、デブ
お前の金で昼飯買ってこいよ、なあ」


男子生徒のリーダー格である川島が勢いよく静の椅子を蹴った。
もう一度蹴った時、その足は静の脇腹に当たる。


「うっ」

「豚が鳴いてんじゃねえよ
さっさと買いにいけよ
俺、クリームパンと焼きそばパン、あとはメロンパンも買ってこい」

「俺、いちごミルクとあんぱんね」


静は財布を持つと、席から立ち上がり教室を出ようとする。


「おい、豚
待て、最低限の金だけ持って自分の財布置いてけよ、金抜くなよ??
どうせ、お前の母親から小遣いで万札とかもらってんだろ?」

「いや、でも…」

「いいから置いてけつってんだよ!!」


静はその命令に従い、最低限の金を抜き取ると財布を机の上に置いて教室をでると、中から川島たちの声が聞こえる。


「マジであの豚ちょろ!!
それにいっつも金持ってんの
あいつの親金持ちだから」

「……消えろ」


静は誰にも聞こえないような声で呟いて、廊下を歩く。

静が廊下を歩くと周りは静を避けるようにして道を開けた。すると近くを通った女子生徒がコソコソと話し出す。


「豚が通るよ、臭そ」

「やめなって、聞こえるよ?
でも、本当に汚そうだけど」

「ねえ、フケとか浮いてるかも」  

「何それやば!でもこの前1ヶ月風呂入ってないとか噂流れてたよね??」


静は顔を俯けながら購買へと行く。
売店のおばさん店員に注文の内容を告げると、あなたよく食べるわねなんて言われて、それでさえ自分は嘲笑われていると静は感じた。
店員からパンを奪い取るかのように受け取り静はある場所に向かう。

自分の昼飯を買う金なんて余っていない。
そして、少しでも遅れると奴らは猿のように怒ることは承知の上だったがどうしても行きたかった。

屋上の扉を開けて、静は周囲を見渡す。

「…いない」

肩を落としてその場を後にしようとすると、背後から声がかかった。

「静」

豚やら汚物と呼ばれる中で唯一、名前で呼んでくれる人物。
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