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そこに併設されているガチャガチャに向かって沙耶が走り出そうとしたため、麦が止めようとしたところ、玲が沙耶の手を握った。


「おにいちゃん、いっしょにガチャガチャしましょう。」

「ん、いいよ」


沙耶と玲はガチャガチャの前で2人並んで何かを相談し出す。その姿がなんだか可愛くて麦は口元が緩んでしまった。


「おにいちゃん、さーちゃんはこれがいい!」


沙耶が指差したのはスライムのおもちゃだった。
スライムは沙耶が遊んだ後、色んなところに飛び散るため、本当は別のものにしてとお願いしたいところだが、今日はデートということで許してあげようとガチャガチャ代である200円を財布から出すと、俊二が沙耶の元へと近づいた。


「さっき怖がらせちゃったお詫びにどーぞ
ちゃんと握ってないと落ちちゃうから気をつけて」


俊二は沙耶の手のひらの上に200円を置いて握らせた。


「いいの?」


沙耶は俊二ではなく、麦の方を見ながら尋ねる。
麦の友達とはいえ、よく知らない人物にお金をもらって戸惑っている。


「いーよ」

俊二が答えると、沙耶は固まった。


「………」

「さーちゃん、お礼の言葉をどうぞ」


麦は先ほどと同様、自分の手をマイクに見立てて沙耶の口元に近づける。


「ありがとうごじゃいます」

「どういたしまして~」


俊二が沙耶の頭を撫でようとすると、沙耶は逃げていって玲の背中に隠れた。


「ちょっと嫌われすぎじゃない?
流石に俺可哀想」

「お前にはそれくらいがちょうどいいって」

「玲くん、ひどーい」


それから俊二と玲は競うように沙耶を甘やかし、どんどん財布から小銭が排出されていく。


「2人とも、もう大丈夫だから」

「でも、まだほしいって言ってるよ
こんなもん安いじゃん」


俊二は沙耶の代わりに両腕いっぱいにガチャガチャのカプセルを抱えている。


「これコンプリートしたいんでしょ?」


玲は沙耶がやりたいと言っていたガチャガチャをトントンと指差し問いかける。


「はい、ぜんぶほしいです!!」


沙耶は気合いが入り、鼻をフンと鳴らす。


「さーちゃん、もう終わりにしよう
強欲になりすぎるとろくなことがない」

「むーちゃんって小さい子に対してもそんな感じの口調なんだね」

「4歳児に強欲とか言ってもわからないっしょ
じゃあ、姉ちゃんがもうダメだっていうから、アイスでも食べに行こ」

「うん!!」


結局、甘やかしていることには変わりないがデートらしくなってきているのだろうか。
沙耶が前を歩く玲の元に駆け寄り手を握る。
いつもなら納得がいかないと、その場で動かずごねているのに、あまりの俊敏な動きに驚きが隠せない。
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