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しおりを挟む文化祭が近づいたある日、ホームルームで文化祭に関する決め事をすることになり、担任に「学級員、前に出てこい」なんて言われて、麦の緊張が一気高まる。
深呼吸をして震えそうな足を手で必死に押さえた後、教室の前へと歩き出す。
もう1人の学級委員は午前中まで騒いでたくせに、体調不良と適当な理由をつけて保健室へと逃げていった。
麦もこの仕事をやりたかったわけではない。
周りがあまりにも、学級委員という仕事に無関心で真面目そうという理由だけで数名から推薦が上がり、面倒くさく感じていた担任からも「鈴木、やってくれるか?」なんて胡散臭い笑みを浮かべながら言われれたため、了承せずには居られなかった。
とりあえず、空気を読んで学級委員になったということになる。
そのため、やりたいわけでもない仕事をやっているが、麦は人前に立つと異様な緊張を覚え体の一部が震え出すということが小さな頃からよくあった。
過保護な母親がその症状を心配し、精神病院に連れていくも子どものうちは良くあることの一言で片付けられてしまい、母親もそれで納得をしたが、成長をしても症状が収まることはない。
その反面、麦には素直に物事を言ってしまう性質がある。
昔から誰かだけが不当な扱いを受けていると、苛立ちを覚え言わずにはいられない。
自分の思ったことは言ってしまう。
しかし、正義感だけをぶつけて素直に認められるよう社会ではない。
正義をぶつけた者は偽善者だとか、いいこぶってるだけなどの反論の言葉を上げられ、結局は仲間外れにされるという仕打ちが待っていた。
そんなことを毎度されていては心の余裕も無くなってくると考えた麦は、出来るだけ自分の気持ちを抑えるように生活を送っていたのに先日のようについ歯向かってしまうことがある。
「えっと…皆さん文化祭では何がやりたいですか?」
震えだした手を教卓の後ろに隠して、もう片方の手で震えを押されるように強く握りしめたため、指の先は赤黒く染まっていた。
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