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しおりを挟むあれから数日が経ち、菫と恭弥は相変わらず2人で暮らしているが、恭弥がいつもの様子と全く変わりないことに違和感を覚える。
(恭弥くんって私のこと好きなんだよね…??)
告白してきたことが疑心暗鬼になる程、いつもと変わらない様子だ。
ぼーとしながら洗面台で歯磨きをしていると、突然、背後から手が伸びてきた。
自分の顔の真横に長い腕が通る。それだけで息が止まりそうになり危うく歯ブラシが喉の奥に刺さりそうになった。
「ごめんね、ちょっと邪魔するよ」
恭弥はそういうと、自分専用の歯ブラシを手に取って何事もなかったかのように部屋に戻ってしまった。
菫は歯ブラシを咥えたまま、恭弥の姿を視線で追った。歯を磨き終わり、再び恭弥の告白後の態度について考え込んでいると呼び止められた。
「菫」
「っはい!」
いつもならこんな反応をしないのに、過剰に反応してしまい恥ずかしくなる。
「そんなにびっくりしてどうしたの?」
「いや、特に何もないんだけど…」
「今日帰り遅くなる」
「えっ?仕事が溜まってるの?」
「いーや、プライベートの用事よ」
「プライベートの用事って…」
その続きを言いかけて言い淀む。
頭に浮かんだのは女性とのデートではないのかという疑惑。
恭弥の顔面はかなり整っているのだ。元スポーツマンであり、スタイルもよく高身長だ。そして、性格も優しく包容力がありモテないわけがない。そんなことを今更になって思い知る。
「帰り遅くなるから戸締り頼んだ」
「…うん」
恭弥は菫の頭をポンポンと撫でると、そのまま家を出てしまう。
なんだかモヤモヤとした気持ちを抱えつつ、大学へ向かう用意を再開した。
学校が終わり、家に帰るももちろん恭弥はいないためしんとしている。夜は恭弥は用事があるため、菫1人だけだ。そのため、夕飯を用意しなければならない。過保護になりつつある恭弥は菫が火や包丁を使うことをできるだけ避けて欲しいと言っているため、普段から料理はあまりしない。
何を食べようか。いっそのこと食事を抜いてしまおうかなんて考えている時に携帯の受信音が鳴った。なんだろうと通知を確認してみると母からの連絡だった。
料理好きの母が得意なミートパイの画像が添えられており、今日家に食べにこないかという誘いだった。最近家に帰っていなかったことに気づき、晩御飯にもありつけるという絶好のチャンスのため菫はすぐに身支度を整えた。
実家に顔を出すと、愛犬ロディが尻尾が千切れんばかりにふって菫の元に駆け寄る。
「ロディ、ただいまあ!」
菫がしゃがむとロディはこれでもかとばかりに菫の顔をぺろぺろと舐めて歓迎した。
玄関で菫の声を聞きつけた母がリビングから顔を出す。
「菫~、おかえり~」
いつもとは違う母の弾んだような声に違和感を覚えつつ、娘が久々に帰ってきて気分がいいだけなのかもと思うようにした。
リビングに顔を見せると、母はキッチンで気分よく鼻歌を歌いながら料理をしている。
「ママ、なんかいいことあったの?」
「んー?いいこと??
そうねえ、これから起こるかも」
「ん?なんか占いとかの話?
ママの星座占いが今日は1位だったとか?」
「そんなことじゃないわよ」
そう言いながら相変わらず気分良さそうに夕食を作っていく。テーブルに並んだのは菫の好きな料理ばかりだ。
「それにしてもなんか量多いね?
明日の分に回すの?」
「ん?どうかしらね?
あ、お父さん帰ってきた」
スリッパのパタパタという足音を立てて、玄関で出迎えた。菫もその後をついていくと、父と共に立っていた人に衝撃を受ける。
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