好きな人の好きな人

ぽぽ

文字の大きさ
上 下
95 / 98

しおりを挟む

1人は菫のグラスを取り上げる。


「返して」


菫がいじけたようにいうと、グラスを取り上げた蒴が小さなため息をついて心配そうに菫を見る。
すると、その様子を見ていた美香が口元に綺麗な笑みを浮かべた。


「お酒美味しいからついつい飲んじゃうよね
蒴、好きに飲ませてあげていいんじゃない?恭弥さんもいるんだし
恭弥さんもお酒飲んじゃって車では帰れないだろうからこのまま家に泊まっていくのでもいいだろうし」


そう言いながら、美香は手元に持っていたワインのグラスを傾けて口に運ぶ。


「恭弥さんも車では帰れないだろうから、泊まっていっても全然いいよね、蒴?」

「俺は構わないけど」


あれほど、男の家に泊まるなと言っておきながら、自分の家はいいんだと言いたくなる気持ちを抑えて蒴の手からワイングラスを奪い取る。


「私は大丈夫だもん!
恭弥くんが面倒見てくれるから」

「んー?俺?
菫の面倒見させてくれるなら大歓迎だけど」


恭弥の凛々しさを伺わせる顔にほんのりと笑みを浮かべて菫を見る。その顔はそこら辺の女性なら頬を赤そうなほど破壊力がある。


「やった!」


菫が恭弥の腕に抱きつくと、蒴の眉根が寄る。
そんな顔をしていることにも気づかず、菫は落ち込んだ気分をあげるために、次々に酒を要求した。

いつもならすぐに酔ってしまうのに、今日は調子がいいというべきか中々酔うことはなく、だんだんと上機嫌になっていく。
そして、蒴と美香には絡みたくないという感情があったため、隣の恭弥にもことあるごとに絡んでいく。

恭弥が美香と楽しそうに話していると、妙な嫉妬心が湧いてきて服の袖を指先で掴んで甘えた。


「ねえ、恭弥くん
私とも話して…」

「ん?ちょっと待ってね
今話してる途中でしょ」


恭弥は菫の方をチラリと見て、すぐに美香の方へと視線を戻す。


「でも嫌なの、私も恭弥くんと話したい」

「すーちゃん、自分が話してる時に邪魔されたりしたら嫌でしょ?」

「嫌だけど…それは…」


その様子を見ていた美香がほんのり赤くなった頬に手のひらを当てがいながら、口元に笑みを浮かべる。


「いいなあ、菫ちゃんは末っ子気質で
素直に甘えられるの羨ましい。可愛いよね。私は中々甘えられない性分だから」


美香は潤んだ瞳で上目遣いをし、恭弥へ視線送った。

このままでは恭弥まで美香に取られてしまうのではないかという不安に駆られてしまう。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

無理やり婚約したはずの王子さまに、なぜかめちゃくちゃ溺愛されています!

夕立悠理
恋愛
──はやく、この手の中に堕ちてきてくれたらいいのに。  第二王子のノルツに一目惚れをした公爵令嬢のリンカは、父親に頼み込み、無理矢理婚約を結ばせる。  その数年後。  リンカは、ノルツが自分の悪口を言っているのを聞いてしまう。  そこで初めて自分の傲慢さに気づいたリンカは、ノルツと婚約解消を試みる。けれど、なぜかリンカを嫌っているはずのノルツは急に溺愛してきて──!? ※小説家になろう様にも投稿しています

【R18】スパダリ幼馴染みは溺愛ストーカー

湊未来
恋愛
大学生の安城美咲には忘れたい人がいる……… 年の離れた幼馴染みと三年ぶりに再会して回り出す恋心。 果たして美咲は過保護なスパダリ幼馴染みの魔の手から逃げる事が出来るのか? それとも囚われてしまうのか? 二人の切なくて甘いジレジレの恋…始まり始まり……… R18の話にはタグを付けます。 2020.7.9 話の内容から読者様の受け取り方によりハッピーエンドにならない可能性が出て参りましたのでタグを変更致します。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。

みゅー
恋愛
 王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。  いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。  聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。  王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。  ちょっと切ないお話です。

王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。 辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。 王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。 8月4日 完結しました。

処理中です...