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しおりを挟む1人は菫のグラスを取り上げる。
「返して」
菫がいじけたようにいうと、グラスを取り上げた蒴が小さなため息をついて心配そうに菫を見る。
すると、その様子を見ていた美香が口元に綺麗な笑みを浮かべた。
「お酒美味しいからついつい飲んじゃうよね
蒴、好きに飲ませてあげていいんじゃない?恭弥さんもいるんだし
恭弥さんもお酒飲んじゃって車では帰れないだろうからこのまま家に泊まっていくのでもいいだろうし」
そう言いながら、美香は手元に持っていたワインのグラスを傾けて口に運ぶ。
「恭弥さんも車では帰れないだろうから、泊まっていっても全然いいよね、蒴?」
「俺は構わないけど」
あれほど、男の家に泊まるなと言っておきながら、自分の家はいいんだと言いたくなる気持ちを抑えて蒴の手からワイングラスを奪い取る。
「私は大丈夫だもん!
恭弥くんが面倒見てくれるから」
「んー?俺?
菫の面倒見させてくれるなら大歓迎だけど」
恭弥の凛々しさを伺わせる顔にほんのりと笑みを浮かべて菫を見る。その顔はそこら辺の女性なら頬を赤そうなほど破壊力がある。
「やった!」
菫が恭弥の腕に抱きつくと、蒴の眉根が寄る。
そんな顔をしていることにも気づかず、菫は落ち込んだ気分をあげるために、次々に酒を要求した。
いつもならすぐに酔ってしまうのに、今日は調子がいいというべきか中々酔うことはなく、だんだんと上機嫌になっていく。
そして、蒴と美香には絡みたくないという感情があったため、隣の恭弥にもことあるごとに絡んでいく。
恭弥が美香と楽しそうに話していると、妙な嫉妬心が湧いてきて服の袖を指先で掴んで甘えた。
「ねえ、恭弥くん
私とも話して…」
「ん?ちょっと待ってね
今話してる途中でしょ」
恭弥は菫の方をチラリと見て、すぐに美香の方へと視線を戻す。
「でも嫌なの、私も恭弥くんと話したい」
「すーちゃん、自分が話してる時に邪魔されたりしたら嫌でしょ?」
「嫌だけど…それは…」
その様子を見ていた美香がほんのり赤くなった頬に手のひらを当てがいながら、口元に笑みを浮かべる。
「いいなあ、菫ちゃんは末っ子気質で
素直に甘えられるの羨ましい。可愛いよね。私は中々甘えられない性分だから」
美香は潤んだ瞳で上目遣いをし、恭弥へ視線送った。
このままでは恭弥まで美香に取られてしまうのではないかという不安に駆られてしまう。
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