好きな人の好きな人

ぽぽ

文字の大きさ
上 下
92 / 98

しおりを挟む


「蒴、お前って出かける前、電気消しとくタイプじゃなかったっけ…」


恭弥は恐る恐るといった様子で煌々と光る蒴の部屋の窓を指す。
流石の蒴も驚いた様子でドアノブに手をかけたと同時に扉が開かれる。


「蒴、おかえり」


部屋の中からふわふわした白色の寝巻きを纏った美香が現れた。そして、目の前の蒴に笑顔を浮かべ腰に腕を回し抱きつく。


「えっと…美香、何やってるの?」

「蒴に会いたくなったから家に来ちゃった
この前、合鍵渡してくれていつでも来てもいいよって言ってくれたでしょ??」


美香が蒴を見上げながら可愛らしく首を横に傾げる。
だが、なかなか返事をしない蒴をみて、不安気な表情を浮かべる。


「あ、菫ちゃんと恭弥さんが遊びに来る予定だったんだね?」


美香は菫と恭弥の存在に気づき、少し照れた様子で蒴から離れる。美香は軽く頭を下げるも菫はそれを返せない。以前の美香の話を聞いて以来、警戒心が生まれてしまった。


「いや、そういうわけではないけど、菫が俺の家に忘れていったものを持っていってもらおうかなと思って」

「そうだったんだね
菫ちゃんのもの結構残ってるもんね
私まとめておこうか?」

「大丈夫、菫にいるものいらないもの決めてもらうから」

「そう?あ、お二人ともどうぞ」


美香はまるで自分の家かのように家の中に2人を案内しようとする。以前のことがあって美香がなぜここまで平然としているのか菫は不思議でたまらない。


「どうも~、じゃあ遠慮なく2人の愛の巣に入ろうかな、菫入ろ」


恭弥が菫の背中を押して、部屋の中に一緒に入ろうとするも菫がその場に立ち止まって拒む。


「私帰るっ!」

「帰るってどうやって帰るの?」


蒴の突然冷たくなった声に菫は肩を震わせる。


「歩いて帰る」

「歩くってどんだけ距離があると思ってるの
それに夜道は危ないってこと何度も伝えてるよね?」

「……」


菫が黙ってしまうとその様子を横で見ていた美香が両手をパンと音を立てて合わせる。


「そういえば私ワイン買ってきたんですよ
良かったら4人で飲みませんか?」


脈絡もなく空気の読めない発言をした美香に対して誰も返事を返せずにいると、美香が蒴の腕に抱きついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

無理やり婚約したはずの王子さまに、なぜかめちゃくちゃ溺愛されています!

夕立悠理
恋愛
──はやく、この手の中に堕ちてきてくれたらいいのに。  第二王子のノルツに一目惚れをした公爵令嬢のリンカは、父親に頼み込み、無理矢理婚約を結ばせる。  その数年後。  リンカは、ノルツが自分の悪口を言っているのを聞いてしまう。  そこで初めて自分の傲慢さに気づいたリンカは、ノルツと婚約解消を試みる。けれど、なぜかリンカを嫌っているはずのノルツは急に溺愛してきて──!? ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

【R18】スパダリ幼馴染みは溺愛ストーカー

湊未来
恋愛
大学生の安城美咲には忘れたい人がいる……… 年の離れた幼馴染みと三年ぶりに再会して回り出す恋心。 果たして美咲は過保護なスパダリ幼馴染みの魔の手から逃げる事が出来るのか? それとも囚われてしまうのか? 二人の切なくて甘いジレジレの恋…始まり始まり……… R18の話にはタグを付けます。 2020.7.9 話の内容から読者様の受け取り方によりハッピーエンドにならない可能性が出て参りましたのでタグを変更致します。

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...