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しおりを挟む「早く行こう」
「待って、待って
そんな急がなくてもいいでしょ~」
早く蒴達から離れたい一心で早歩きになった。
母との食事を終えて、家に帰ると蒴から連絡が入っていた。
"朋子さんが帰った後、話があるから部屋に行く"
菫にはその話を聞くつもりなんてない。
また美香に関することを言われると思うと、その度に傷つくのが嫌になっていた。
メッセージに返信することなく、菫はスマホをカバンの中にしまった。
「じゃあママありがと
引っ越し終わったらまた連絡するね
家まで送らなくて大丈夫?」
「菫が1人で帰る時が危ないでしょ
今日はパパが出張で迎えに来れないから、タクシー呼んであるの、それに乗って帰るわ
それより引越しの日、寝坊しないようにね
業者さんにもお友達にも迷惑かけないこと」
「はーい」
「あ、蒴くん達にも挨拶しとかないと」
「さっき挨拶したんだからいらないって!」
「何言ってんの?ろくに挨拶してないんでしょ?これからもお世話になるんだから」
「お世話になんてもうならないから大丈夫
私は蒴ちゃんから卒業するんだもん」
「そうなの?
確かにあの2人が結婚して子供なんて生まれたらもう菫になんか構ってられないからね
菫ももう子供じゃないんだから、この際、彼氏でも作ったらいいじゃない
私のママ友の息子さんでも紹介してあげようか?この前あったけどなかなかの男前だったわよ」
「私のことはいいから
ママに心配されなくても彼氏くらい自分で探すもん」
「そう?いつまでも引きずっちゃダメよ
世の中には蒴くん以外にも素敵な男性はたーくさんいるんだから
そりゃ蒴くんがこんなだらしない子もらってくれるって言うんだったらママも安心だったけど…
あの人が恋人じゃちょっと勝ち目なさそうね…」
そこから母の熱のこもった話が始まりそうだったため、それを察した菫は母の背中を押して早く家に帰れと促す。
「はいはい、もう帰ります
引っ越すときにはちゃんと蒴くんたちにも挨拶してね
お世話になったんだから贈り物もちゃんとすること」
「わかったってば」
「もう本当にわかってるから心配だわ
じゃあ、ママ行くから
なんかあったらすぐに連絡すること
自炊も面倒くさがらずにしてね」
「はあい」
一人娘が心配な母は念入りに言葉を掛ける。
そして、母はタクシーに乗ったのを見とどけた。
菫も部屋に戻ろうとエレベーターに向かうと、白のTシャツに黒のスラックスを着た蒴の姿があった。
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