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居場所
しおりを挟むようやく菫の新たな家が決まった。
蒴には引っ越すことなどは伝えていない。
自分が引っ越しをしたところで、蒴にはどうでもいいことだと考えていたからだ。
菫は2日後に控えた引っ越しに向けて、ダンボールに使わない荷物を詰め込んでいく。
「あー!もう面倒くさい~」
服をダンボールに詰め込んでいる途中で、急な疲労感が襲ってきてその場で床に倒れ込んだ。
誰かに手伝ってもらいたいと思った時、一瞬、蒴の顔が浮かんだがこの場にはもちろん呼ばない。
ではなく、呼べない。
関係性が切れたというのにそんなことはお願いできない。
友達がいるわけでもない菫はどうしようかと頭を抱えた。
「あ、そうだ」
あることを思いつき、菫はテーブルの上に置いていたスマホを手に取り電話をかける。
そして、数時間後
「もう何この部屋!きったない!」
部屋に入ってきた母は散らかった部屋を見た途端、眉間に皺を寄せて小言を言い始める。
「引っ越しの準備してるから汚いだけだって!」
「本当に?普段から汚いんじゃない?
なのに、キッチンだけは異様に綺麗なんだから。料理とかしてないんでしょ??」
「もう後で全部聞くからとにかく手伝ってよ」
菫が助っ人によんだのは母だった。
呼ぶ相手を間違えたかもしれないと感じつつも、そもそも呼べる人が母くらいしかいなかったことに気づき悲しくなる。
菫の母は相変わらず小言を言いながらもテキパキと引っ越しまでに使わない小物や服などを詰めていった。
「それにしても本当にこっちに戻ってこなくていいの?」
母が言うこっちとは実家のことだ。引っ越しのことを話に出した際、実家に戻るという案も両親から出たが菫はそれを断った。
「大丈夫!」
「大丈夫ってあんたじゃなくて、友達のお家がよ」
「でも、部屋空いてるからいいよって…」
恭弥が家に住まわしてもらうことになったとは流石に言えない。
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