52 / 101
4
しおりを挟む美香はポロポロと涙を流しながら、部屋へと戻っていく。しかし、美香が家に戻ろうとしたと同時に蒴の部屋の扉が開いた。
蒴らちょうど出かける用事があったらしく、片手には鞄が握られていた。そして、美香のないている姿を見て驚いている。
菫自身も蒴に振られて以来会うことを避けていたため、突然の登場に驚く。
2人して目を丸くした状態で目があった。
「え?何で泣きそうになってるの?」
蒴が美香の華奢な肩を抱くと、美香は両手で顔を覆いながら朔の胸へと顔を預けた。
蒴の攻め立てるような鋭い視線が菫へと向けられる。
「知らない」
事情も知らないのに美香の態度だけをみて、悪者扱いをされたことに苛立ちと悲しみが一気にのしかかり、居心地の悪くなった菫は扉をしめて家の中に入ろうとするも、蒴に扉を掴まれる。
「ドアから手放してよ」
「ちょっと待って、ちゃんと話しよう
美香、ごめん
部屋に戻っててもらっていい?」
美香は胸元から顔を上げると、静かに頷き蒴の部屋の中へと戻っていく。
「私は話すことない
全部、美香さんから聞けばいいじゃん!」
「それだと美香の意見に偏りが出るだろ」
美香の味方であるくせに、なにを今更中立の立場を保とうとしているのか。
さっきまでのことを朔に話したとしても、結局朔が菫の肩を持つことはないことはわかってる。
「いいよ、どうせ私が悪いんだし
蒴ちゃんは美香さんの味方なんだから」
こんなこと言うのは子供じみてるなんてことはわかっていたけど止められなかった。
投げ捨てるように言葉を放って、蒴の鋭い視線から目を逸らす。
「菫が悪いなんて誰も言ってない」
蒴は相変わらず落ち着いたトーンで話し続けるが、その中に多少のイラつきが混じっていることに菫は気づいていた。
5
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。
airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」
親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。
婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。
2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。
心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。
そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います!
でも本当は…
これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

さげわたし
凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。
今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。
だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。
実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。
そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。
※こちらも不定期更新です。
連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
29話で第一部完です!
第二部の更新は5月以降になるかもしれません…。
詳細は近況ボードに記載します。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

催眠術にかかったフリをしたら、私に無関心だった夫から「俺を愛していると言ってくれ」と命令されました
めぐめぐ
恋愛
子爵令嬢ソフィアは、とある出来事と謎すぎる言い伝えによって、アレクトラ侯爵家の若き当主であるオーバルと結婚することになった。
だがオーバルはソフィアに侯爵夫人以上の役目を求めてない様子。ソフィアも、本来であれば自分よりももっと素晴らしい女性と結婚するはずだったオーバルの人生やアレクトラ家の利益を損ねてしまったと罪悪感を抱き、彼を愛する気持ちを隠しながら、侯爵夫人の役割を果たすために奮闘していた。
そんなある日、義妹で友人のメーナに、催眠術の実験台になって欲しいと頼まれたソフィアは了承する。
催眠術は明らかに失敗だった。しかし失敗を伝え、メーナが落ち込む姿をみたくなかったソフィアは催眠術にかかったフリをする。
このまま催眠術が解ける時間までやり過ごそうとしたのだが、オーバルが突然帰ってきたことで、事態は一変する――
※1話を分割(2000字ぐらい)して公開しています。
※頭からっぽで
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる