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しおりを挟む居た堪れず、蒴の顔を見ることなく扉を閉じる。
蒴に名前を呼ばれた気がしたが反応することはなかった。
優しくしてもらった相手にもう関わらない方がいいなんて、きっとショックを受けただろうと思うと罪悪感が募った。
扉に背を向けて寄りかかると、そのままずるずると下へと体が落ちていき玄関に座り込んだ。
大学の講義が終わり、家に帰ろうと校門に向かおうとすると女子生徒たちが校門付近に集まってざわついてた。
「ねえ、あの人誰かの彼氏かな?」
「明らかに社会人だよね
スーツ着てたし、大学まで迎えにきたのかな?」
「てか、すごいイケメンだった」
イケメン…??
蒴以外の男には興味がない菫は気にすること無く校門を抜ける。
「菫」
自分の名前を呼ばれた気がしたが、気のせいだろう。
なんて言ったって大学内には菫の名前を呼ぶ人物はいないのだから。
振り返ることなく先を進んでいく。
「菫!」
同じ名前の人物でもいるのだろうか。煩わしいと思い菫はカバンの中からイヤホンを取り出して耳に取り付ける。
「菫!!」
腕を引かれ目の前に現れた人物に菫は目を丸くした。
「全然気づかないし、イヤホンし始めるからびっくりした。もしかして無視してた?」
顰められた眉にうっすらと浮かんだ汗
その汗でさえもその男は爽やかさを演出してしまう。
「蒴ちゃん…どうしたの…?」
「ちょっと菫に話があったんだ」
「でも、わざわざここに来なくても…
家に帰ればいつでも話せることなんだから
それに今まだ16時だよ、会社は?」
「今日は取引先から直帰だから
それに2人で話せる時間はほとんどないでしょ」
美香といる時間が増えたため、菫のためにあげる時間はないと言うことだろう。
そう理解した菫は小さく首を縦にふる。
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