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しおりを挟む「あーあ、痛そう」
恭弥は感情のこもってない言葉を投げかけて、酒を片手にテレビを見続ける。
菫は蒴の椅子に倒れた状態のまま。
「恭弥君、慰めて」
「めんどくさいでーす」
「痛かったね、大丈夫?って言って頭撫でて」
「もっとめんどくさいでーす」
「じゃあ、私から行く」
「やだ、こないで」
菫は立ち上がり、恭弥がテレビを見れないように目の前に立つ。
「なに?酔っ払い
絡んでくんな」
恭弥は菫の腰に手を置いてどかそうとするも、恭弥があまり力を込めていないため、菫でも簡単に抵抗ができる。
「いいじゃん、恭弥君くらい慰めてくれても~」
「じゃあ、これでも食べて元気だしな」
恭弥は菫への土産で持ってきていた小分けになったチョコレートの封を開けて、指で摘んで菫の口元に持っていく。なんだか恥ずかしい気持ちもあり、口を開けようかどうか迷っていると、恭弥は急かすように菫の唇にチョコレートを押し当てた。
「ほら、あーんは?」
静かに口を開けると、その中に恭弥の指と共にチョコレートが放り込まれる。
「美味しい?」
「おいひぃ」
チョコレートの粒が大きかったため、片方の頬をパンパンにしながら話すと恭弥が笑った。
「痛いの飛んで行った?」
菫は首を横に振る。
話ずらいのをいいことに恭弥に有無を言わせることなく、膝の上に座り、背後にいる恭弥に寄りかかる。
「ちょっとやめてもらえます?」
そうは言いつつもいつもと口調の変わらない恭弥に安心感を覚えて、菫は恭弥の方を向いて笑顔を向ける。
「はあ…お前、ほんと顔だけはいいね」
恭弥はため息をついて、菫の頭を撫でる。
菫は撫でられていた腕を掴むと、自分のお腹へと巻きつけて、もう片方の腕も自分の腹へと巻きつける。
「菫髪染めたの?」
「え!気づいてくれたの嬉しい!!
最近、染めたんだ」
「あんな綺麗な髪だったのに、染めるとかもったいないな。」
恭弥は菫の髪を指に巻き付けてじっと見つける。
「蒴ちゃんと同じ色」
「うわ、まじかよ
こっわ」
「こわってなに?
怖くないよ」
「いや、お前怖いよ、流石に。蒴に黙ってやったの?」
「うん」
恭弥はもう一度小さく"こわ…"と呟いて、指に巻き付けていた菫の髪を解いて、指先で髪を整える。
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