好きな人の好きな人

ぽぽ

文字の大きさ
4 / 105

4

しおりを挟む


蒴の車に乗り込むと家から近いため、あっという間に大学付近へと到着する。

大学の入り口ではなく付近で車を止める理由は蒴があまりにも美青年であるため、女子生徒に目をつけられたら困るという理由だった。

顔も良く、性格も穏やかで優しい朔の競争率は高く、他の女性から目をつけられやすいためこれ以上敵を増やしたくなかった。


「蒴ちゃん!ありがとう!行ってくるね!」


ドアを開けて、車を降りていく菫は蒴の方を振り返り笑顔で手を振る。
車を降りた途端に勢いよく飛び出していく。


「菫!危ないからゆっくり!」


窓から顔を出して、心配そうな顔を浮かべる蒴に菫はグーサインを出して大丈夫だというジェスチャーを送る。

蒴はその様子にまた困ったように笑って車を走らせた。車が見えなくなるまで手を振り、大学の入り口へと足を進ませる。

校内に足を踏み入れた途端、周りにいた生徒たちの視線が菫へと集中する。


「きたきた」

「また男と遊んできたのかな」

「朝帰りってやつ?」


どこをどう見てそう判断しているのか。

菫はその声に周りにわかるほど大きなため息をついた。いつからだろうこんな噂が流れるようになったのは。

入学して半年ほどたった頃、たまたま英語の講義で隣に座った男子生徒とペアになることになり、話していくうちに趣味が合うなどの理由により仲良くなっていった。

元から人間関係を円滑に運ぶのに苦手意識があった菫は友達と呼べるような存在はいなかったため、そのことがうれしく感じてつい話しすぎてしまった。

講義が終わる頃には男子生徒から良かったら連絡先を交換しようと言われた。

その申し出を喜んで受け入れて、カバンの中はガサゴソと漁り、スマホの電源をつけると、頭上から圧を感じる。
顔を上げるとそこには数人の女子の数多くの鋭い目が菫を睨みつけていた。

隣の男はハッとして、手に持っていたスマホを慌ててポケットにしまった。

自分が何をしてしまったのか分からず話を聞いてみると、連絡先を交換しようと言った男の彼女が数人の友人を引き連れて抗議をしにきたらしい。

"友達として仲良くなりたかった""話しかけてきてくれて嬉しかった"と菫なりの必死の弁明をしたが、全ての言葉が悪意のあるものに捉えられてしまったようで、菫の悪い噂が細菌のように大学内へと広まっていった。

話しかけてきた男も一切フォローすることなく、必死に女の怒りを宥めていた。


"クソビッチ"
"男好き"


男と体を重ねたこともないし、付き合ったこともない。片思いの経験しかないのにそんなことをしているはずだという勝手な噂が山ほど作られた。

その噂で出来上がったストーリーで1冊の本でも出来上がってしまうのではないかと言いたくなるほど。

たった1日の出来事のせいで、華のキャンパスライフは終わりを告げて、枯れ草のような彩りのないキャンパスライフへと変貌した。

だが、初めのうちはありもしない噂で周りの視線が気になっていたが、今はそれにも慣れて特に気にすることなく1人で行動して、食堂も1人で利用することが当たり前になった。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」 親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。 婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。 2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。 心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。 そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います! でも本当は… これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

偽りの婚約者だった私を捨てたあなたへ——今さら何のご用ですか?

usako
恋愛
婚約者に捨てられ、すべてを失ったと思っていた——。 けれど、そこで終わりではなかった。裏切りの記憶を胸に、地道に努力を重ねた主人公は、数年後、仕事でも恋でも頂点に立つ。 そんな彼女の前に、かつて彼女を踏みにじった男たちが現れる。 「あの時とは違う」と縋る声に、彼女は穏やかに微笑んで言う——「今さら何のご用ですか?」 ざまぁ、そして溺愛。冷たく燃える“恋と復讐”のシンデレラ・ラブストーリー。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

処理中です...