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疑惑
しおりを挟む「うぜえっつうの
子供扱いすんな」
「この反抗期」
俺が笑みを浮かべながら言うと、大和は髪に触れていた俺の手を握り、指と指を絡ませくる。指についた数個の指輪の冷たい感触が俺の手に伝わる。そして、俺の方へとぐいと顔を近づけた。
「健太はいつも通り平凡な顔してんな」
「あえていうことでもないだろ」
俺がそういうと、大和もふっと笑みを浮かべた。
そして、俺の両頬を片手で挟んでフニフニと潰してくる。
「んだよ~」
「なんでもねえ」
大和は俺の後頭部に手を回し引き寄せ、俺の首筋あたりに鼻を寄せる。
なんだよ、加齢臭チェックでもされてるのか…?アラサーとはまだそんなお年頃じゃないと思いたい…。
「もしかして俺臭い…?」
「何で?」
大和はより強く鼻を首筋に押し当てて、すんすんと音を立てて匂いを嗅いでくる。
「だって匂い嗅いでくるから、臭いんじゃないかって気になるじゃんか…」
「そんなこと気にしてのかよ」
大和は喉でククッと笑うと、俺の首元に腕を回し、0距離で匂いを嗅いでくる。大和の髪の毛が首筋に当たってくすぐったいし、なんか変な気分にもなってくる。
俺は大和の胸を押してそれに抵抗する。今はじゃれついている場合じゃない。
「俺は仕事が溜まってるから、保健室で過ごしてもいいけど静かにな」
「静かにすれば問題ねえんだろ?」
大和は俺が仕事していた椅子の隣に近くにあった椅子を引っ張ってきた。
「何でそこ座るんだよー
集中できないだろうが」
大和は俺の言葉を無視してリラックスし始める。
「たくっ、しょうがねえな
なんか飲み物とかいる?」
「なんだかんだ甘いよな
何もいらね、健太が横にいればいい」
突然吐かれた大和の甘い言葉に俺の顔は何故か熱を上げる。
「おまっ!!よくそんな言葉をこんな地味なやつに向かって言えるな!」
「健太だから言ってんだっつうの」
大和は何事もなく答える。
俺は仕方なく大和が隣にいる状態で仕事を始める。
てっきり何か仕掛けてくるのではないかと思ったが、大和はちょっかいをかけてくることなく静かに目を閉じていた。
寝るならベットで眠れば良いのにと思いつつ、近くにあった膝掛けを持ってきてそっとかけた。仕事に集中し始めてふと時計をみるともう直ぐ1時間が経とうとしていた。大きく背伸びをして大和の方を見ると、背もたれに背を預けたまま胸の前で腕を組み目を閉じている。まだ眠っているようだった。
よっぽど疲れてんだななんて思いながら、再度仕事を始めようとキーボードに手を置いた時、そばに置いていたスマホが鳴った。音を切り忘れていたことに気づき、音を切ろうと携帯を開くとメッセージアプリの通知が奏からのメッセージを知らせていた。
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ご指摘いただきありがとうございます。
8頁以外も誤表記の可能性があるので気づき次第修正させていただきます。
何年でも待ち続けます 本当に面白いです( ☆∀☆)
感想いただけてとても嬉しいです!
更新は遅くなりがちですが、楽しんで読んでいただけたら嬉しいです😭
作中に出ており読み逃していたらすみません。疑問なのですが主人公の苗字は山科でしょうか?それとも篠原でしょうか?登場人物には山科と書いてありましたが大和のお父さんの時には篠原とあったので…。間違えていたら本当にすみません。
コメント頂きありがとうございます!
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