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初めて
しおりを挟む見渡すと暗い室内には煌びやかな照明が光り、未知の世界に踏み込んでしまったのではないかと思ってしまうほど。
煌びやかな照明が目に飛び込み、甘くて妖しい雰囲気が漂う。
テーブルの周りを高級そうなソファで囲んだ席に案内され、俺が端っこの方に座ろうとすると、伊藤先生が眉を顰め、小声で何やってるんですか。奥に詰めてください。と俺の体を奥に押す。
何をやっているんですかは俺のセリフだ。だが、ここで反論したら怒られそうであるため、大人しく奥に進む。ど真ん中に座ることになり、何が起きるのかとそわそわしながら待つ。
そんなことをしていると突然軽快な音楽が鳴り響いた。なんだなんだとあたりを見渡すと、ある一つの大勢の男が囲んでいる。
「なんだあれ…」
「高額な酒を頼んだ人のみに行われるシャンパンコールというものですね。高額な酒を頼むことで自分の経済的な余裕、ホストへの貢献度を表すことができます。あとは自分の存在感をアピールして他の客へのマウントの意思を含む人もいます。私以外彼を支えられる人はいないという。」
「はあ…」
非日常的すぎて、間の抜けた返事が出た。
「どうも、こんばんは」
シャンパンコールに気を取られていると頭上から声がかかる。
そこには顔の整った男が2人いた。普通に道を歩いていたら芸能事務所にスカウトされそうだ。
1人の男は伊藤先生に向かってヒラヒラと手を振る。
「こうたくん、今日も来てくれてありがとう。
お隣はお友達?」
そういえば、伊藤先生の名前はこうたという。
今に何なって思い出した。
「そうだよ…
ヒナタ…今日もかっこいいね…」
伊藤先生はうっとりと目を細め、か細い声でつぶやいた。今すぐにでも伊藤先生の友達という言葉を否定したい。
2人は真ん中に座る俺たちを挟むようにして座る。ヒナタじゃない方の男が俺の隣に座る。じゃない方とか失礼な言い方はしたが、この男もだいぶいい男には変わりない。隣からはいい男から感じたことない香水の香りが漂ってきて妙に緊張してしまう。
「初めまして、ヒナタって言います。
お名前お伺いしてもいいですか?」
「あ、俺は健太って言います…」
「健太くんね!よろしくお願いします」
ヒナタは眩しいくらいの笑みを俺に向けてくる。眩しすぎて溶けてしまいそうだ。
「俺は奏(そう)っていいます。よろしくお願いします。」
奏は丁寧に俺に頭を下げる。2人に名刺渡され俺はそれを受け取った。それにしても特徴的な名刺だ。ヒナタに関しては名刺に顔写真まで載っている。それが珍しくて表と裏面を何度も見返していると奏が俺の顔を覗き込んできた。
「ホストクラブは初めてですか?」
突然、美しい顔が視界いっぱいに広がり思わず体を後ろに引く。
「あ、はいっ、初めてで緊張するっす」
「そんな緊張しなくて大丈夫ですよ
初めてっていう人もいっぱいいますから」
おそらく一回りほど年下だろう奏に対して、ほどほどとした態度をとってしまう。
源氏名だろうけど、奏という名前がピッタリ合う爽やかな笑みを浮かべる。
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