モブの俺には構わないでくれ。

相性

2人で話し込んでいると、体育委員の高木がグラウンドから俺たちの元に不機嫌そうな顔で駆け寄ってきた。


「樹、次の競技お前も出るだろ
早くこいよ」

「ええ、さっき出たばかりじゃん
俺はけんちゃんを充電中だからパスで」


樹は暑苦しい体をさらに俺に押し付けてくる。


「何言ってんだよ、次は2人3脚だぞ」

「え？高木…今なんて…」

「2人3脚です」


高木がまっすぐな声で答える。
2人3脚だと…？？？？あの足を拘束して、2人を引き合わせ息を乱しながら走る淫らな競技のことか？
俺はごくりと生唾を飲み込む。


「ちなみに高木は誰と組むんだ…？？」


お願いだから俺の隣で文句たらたらのコイツと組んでくれ。炎天下の中、頑張る俺にご褒美をくれ。



「俺ですか？俺は樹と組みます」

「わあああ」


俺は歓喜のあまり拳を天に突き上げそうになった。
神様ありがとう。俺に美男子の2人3脚という絶景を見せてくれて。贅沢を言うならハプニングが起こって2人がキスしてしまうくらいのハプニングを起こしてほしい。


「けんちゃん、どうしたの？？
何ニヤニヤしてんの？？」


樹が俺の顔を横から覗き込み、怪訝そうな顔を浮かべる。


「俺のことは気にするな
ほら、樹早く行けよ、俺に勇姿を見せてくれ」

「はあ、だる」


熱意を込めた応援をする俺をみて樹はため息をつきつつ立ち上がり、Tシャツの袖を捲った。すると、色白の腕からうっすらと血管の浮く固くしまった筋肉が顔を出す。

見た目が細いくせにしっかり筋肉がついているのは本当に羨ましい。
そして、顔立ちも身長も外国人モデルのようで、背景がゴミの山だったとしてもきっと絵になるような見た目だ。


「けんちゃん、俺頑張る
だから絶対見ててね」


爽やかにはにかんだ樹に頭の上に手を置いてぐしゃぐしゃにして撫でる。お前にそんなこと言われなくても俺は目に焼き付けるよ。殿堂入り幼馴染カップルの2人3脚だからな。一眼レフでも準備するべきだったかと今更後悔してしまう。