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感謝
しおりを挟む「ど、どうした大和??
もしかして別れの挨拶の代わりとかじゃないよな??」
「ちげえよ、バカ」
耳元で小さく笑う大和の声が聞こえてきて、少しだけ安心する。
余計なことをしすぎて怒ってしまったかと思った。
とはいっても大和がこんなことで怒るほど心が小さいやつではないことは知っているが。
「健太…」
俺の名前を切なげに呟くと腕に力を込めてさらに強く抱きしめてくる。
「大和!苦しいっつうの!」
背中をバシバシと叩いても全く離す様子がない。BL映画を見に行っただけなのになぜこんなことになっているのか今更になって改めて考え出す。
大和の力が少し緩まり、今度は両肩を掴まれて向き合うような形になる。
大和は無言で俺の顔を見つめ続けたまま、顎の下に指の腹をおいて撫でてくる。
「な、なんだよ!いきなり
俺は猫ちゃんじゃねえぞ」
「確かにそうだな
健太は猫よりめんどくさくて可愛いもんな」
めんどくさくてという言葉は心外だし、可愛いという言葉の意味もよく理解ができない。
なぜ、俺に対して可愛いなんだ。
首を傾げると、大和が俺のこめかみあたりを指で撫でてくる。くすぐったくて肩をすくめると大和が鼻で笑って、俺の腰に腕を回した。
「なんだよ」
大和の身長が高いため、見上げながら睨みつけると、腰に回った腕に力が込められ体がふわっと浮き上がる。
「ふぁっ!?え?!」
「健太、お前は本当に可愛いよ」
先ほどまで地に足がついていたはずなのに、今はかなり高い位置にいる。俺の視界には大和の後ろ足と背中しか見えない。
肩に担ぎ上げられている状態になっていた。
「ちょっ、降ろせ!!」
「ふうん、おろしてもいいのか?
俺は別に構わねえけど
その代わりおれは"おろす"じゃなくて"落とす"からな」
大和はスタスタと廊下を歩きながら告げる。
地面を見つめた俺は体をキュッと縮こめる。
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